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間一髪、ワシに不可能はない!

『神器『ターヘル・アナトミア』があれば、異世界なんて楽勝です〜杉田玄白、異世界に転生する〜は.毎週月曜日の定期更新です。

 大空洞で発生した大暴走。

 それを横目で眺めつつ、どうもどうもと横穴までやってきた玄白たち。

 結界のラインに沿って魔物忌避剤を撒いた結果、結界から離れるように魔物たちも移動していく。

 それを見て、第一回廊で戦っている冒険者たちも優勢に出ることができるだろうと胸を撫で下ろすと、1時間ほどの休憩を挟んで先に進むことにした。


 やがて横穴奥の螺旋回廊に辿り着き、ゆっくりと天井目掛けて歩き出す。


 1時間、

 2時間、

 3時間。

 

 そして4時間後、ようやく竪穴が横穴に変化した先。

 巨大な両開き扉を開いた先には、鬱蒼と茂った森が広がっていた。


「ほほう。ようやく外に出られたか……うむ、空気がうまいのう」


 大きく深呼吸をして、玄白も安堵の表情を見せている。

 マクシミリアンやミハル、そして案内人のセッセリも先ほどまでの緊張した空気から解放され、ようやく落ち着いて体を休めることができる。


「セッセリさん、ここから集落まではどれぐらいの時間が掛かりますか?」

「森を抜けて、山岳部まで向かいますので、あと三日ほどでしょうか?」

「まだ三日もあるのか……よくもまあ、こんな距離を旅してくるものだな」


 セッセリの言葉を聞いて、マクシミリアンがそう呟くのだが。

 このあとのセッセリの言葉に、その場の全員が呆然としてしまう。


「あ、すいません。飛んで三日ですので、徒歩だと一週間は必要かと思います。馬も馬車もありませんよね」

「「一週間!!」」


 のんびりと水筒からお茶を飲んでいる玄白以外の二人が叫ぶ。

 ちなみに玄白、そんなものじゃろうと予想していたので驚くことはない。


「まあ、それぐらいなら大したことはない。東海道をのんびりと旅していた時など、もっと長い時間を歩いたことがあるぞ」

「は、はぁ……その東海道とやらの旅では、乗合馬車はなかったのですか?」

「そもそも、乗合馬車などわしも初めて乗ったからなぁ。まあ、のんびりと旅をしようではないか」


 玄白がそういうのならと、一行は徒歩でセッセリの集落へと向かう。

 不思議なことに、この深い森に入ってからというもの、魔物に襲われたことは皆無。鹿や狼といった動物には出会うことがあったものの、玄白たちを攻撃してくるそぶりもなく、遠巻きに観察して離れていっただけである。

 魔物よけの鈴の効果にしては、そもそもの気配すら感じない。

 これは何かあるのかと尋ねてみても、セッセリもこの辺りではゴブリンやコボルトなどの魔物を見たことはないという。


 そんなこんなで一週間後、ようやく玄白たちは天翔族の集落にたどり着くことができた。


「おお、セッセリ!! 無事に帰ってこれたか」

「やはり流行病だったのか? 薬は手に入ったか?」


 集落の入り口で、セッセリは門番たちにそう問いかけられる。

 チラリと玄白たちを見たものの、訝しげそうに見ることもなく、軽く会釈をする程度。

 

「いえ、薬は手に入らなかったのですが、こちらのスギタ先生は流行り病を癒してくれます。今は、患者はどこに居ますか?」

「集会所に集められているが。一日に一度だけ、食事を運んだ時に容態を聞いているのだけど、あまり芳しくは無い」

「ふむ、では、わしの出番じゃな」


 腕捲りをしてセッセリに告げる玄白。

 その様子を見て、門番たちもようやく玄白に話しかけた。


「貴方が、セッセリの話していたスギタ先生ですか?」

「お願いです、集落の皆を助けてください!」

「うむ。では、急ぎ案内してもらおうか」

「はい!!」


 急ぎ玄白を案内する門番。

 その後ろをマクシミリアンとミハルも駆け足で追いかけてくると、集会所に入っていく玄白の手伝いを志願する。


「俺たちも手伝います」

「指示をお願いします」

「うむ、ちょいとまっておれ」


 ベッドに横たわり、息も絶え絶えな患者たち。

 喉の奥から喘鳴を出している人たちが、マクシミリアンたちが即興で作った簡易診察室に案内されると、すぐに玄白は診察を開始。


「うむ。やはりセッセリどのと同じ流行り病じゃな。ということなので、これを飲むが良い」


 すぐさま解体新書ターヘル・アナトミアから薬を取り出すと、それをら患者に手渡す。

 すぐその場で飲めるものには飲み干してもらいら飲むのが困難な人には水差しに薬を移して、少しずつ飲んでもらうように促す。

 この治療は翌日の夕方まで続いたが、翌日の日が落ちる前には、全ての患者が流行病から解放された。

 調合した霊薬エリクシールは二十本以上。

 これで『サーコウィルスによる脱羽』は完治し、罹患していた幼い天翔族も一命を取り留めることができた。


「先生。どうもありがとうございます!」


 最後の患者が元気よく診療室から出ていくのを見送ってから、セッセリは力強く頭を下げる。


「いや、しっかりとお代は貰うから安心せい。それよりも、あの病気がどういう経路で広まったのか、それを調べなくてはならんのじゃが。何か心当たりはあるのか?」

「心当たり……う〜ん」


 サーコウィルという呼び方など、セッセリだけでなくその場の誰も知らない。

 玄白にも最初は理解できなかったのだが、解体新書ターヘル・アナトミアを通じてそれを知ることができたので、今度は原因究明を始めようと考えた。


「ちょっと私では、心当たりがないのですよ。明日にでも改めて、長老に問いかけてみます。では、宿に案内しますので、こちらへどうぞ」

 

 そうセッセリに促され、玄白たちは宿にやってくる。

 外からやってきた商人ぐらいしか使わないため、宿の女将も玄白たちをみて大慌てであったのだが、それなりのおもてなしをしてもらうことができて玄白としても満足であった。

 

いつもお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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