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国から逃げて、次の街へ。

『神器『ターヘル・アナトミア』があれば、異世界なんて楽勝です〜杉田玄白、異世界に転生する〜は.毎週月曜日と木曜日の更新です。定期更新です。

 玄白が領主の元に陳情に向かった翌日。

 玄白の診療所に、再び騎士たちがやってきた。


「スギタ先生はいらっしゃいますか!!」

「なんじゃ?」


 玄関の外からの声。

 診察も一段落したので、玄白は扉を開いて外を見る。

 そこには全身鎧に身を包んだ騎士が10名、並んだ待機している。

 そして扉の前には、指揮官である騎士がフルフェイスのヘルメットを小脇に抱え、扉の向こうにいる玄白を見て一言。


「ドラゴン討伐任務に参加してもらうべく、お迎えにあがりました。これは国王陛下からの勅命です。断ると投獄されますが、どうしますか?」


 あまりにも一方的な物言いに、玄白は頭をポリポリと掻く。

 その玄白の背後では、警備任務として待機しているスタークたちが立っている。


「ちょっと待った。国王の勅命は、その国の民にのみ適用される。スギタ先生は国民ではなく冒険者登録されているので、王の勅命は聞く必要がないはずだが」

「ランガクイーノ・ゲンパク・スギタの冒険者登録は失効された。この国で商売を行なっている限りは、スギタは国民に等しく、国王の命令に従う義務がある!!」

「なっ!! なんだと?」


──バッ

 騎士団長が蒼叫ぶと同時に、一枚の書面を開いて退治する。

 そこには、冒険者ギルドが玄白のギルド登録を失効したことが克明に書かれており、しっかりと領主のサインと印章が押されていた。


「ドラゴン討伐に従わない場合、速やかに不敬罪として投獄することになり、犯罪奴隷としての烙印が押される。さあ、どうする!」


 この一方的な物言いに、玄白は怒りを覚えるどころか、哀れみを感じ始めていた。

 己の利己的要求が撥ねつけられると、権力をかさにきて無理難題を押し付ける。

 あまつさえ、犯罪奴隷として隷属の首輪を嵌めることにより、玄白にエリクシールを作り続けさせることが目に見えている。


「……ふぅ。世界が変わっても、権力者というのはこういうものなのか。これが、この国の姿なのか」


 ため息をつきつつ、玄白が呟く。

 その言葉が聞こえたのか、騎士団長が玄白に向かって剣を引き抜き、突きつける。


「いま、なんといった!! その返答次第によっては、この場で切り捨てる!」


 鋭い剣幕で脅しかける騎士団長。

 だが、玄白は臆することなく、騎士団長の目を見て一言。


「こんな国、滅んでしまえ!」


──ガギィィィン

 玄白の言葉に激昂し、剣を振り上げて斬り掛かる。

 だが、それを交差法を交えた白羽取りで受け、そのまま剣をへし折る。


「はぁぁぁぁぁ。やめじゃ、こんな国、出ていってやるわ。スタークさんや、契約は今日でおしまいじゃ、差額分は迷惑料として持っていってくれて構わん」


 玄白は全身に闘気を流し込み、身体能力を強化する。

 

「では。残りの期間は、スギタ先生が隣国に向かうまでの護衛代金ということで」


──ザッ!!!!

 素早く扉からサフトとミハルが飛び出し、背後で控えていた騎士の二人を力一杯蹴り飛ばす!!

 さらにマクシミリアンが出てくると、玄白に向かってくる騎士たちの攻撃を盾で受け止め、そのまま弾き飛ばす。


「まったく。お主らの実力なら、この国でのんびりとできたじゃろうが」

「そうもいきませんわ。恩人の危機を見捨てるなんて、【深淵をかるもの】の生き方に反します!」

「そういうことですよ。それじゃあ、手配が回る前に城門を越えるとしましょうか!」


 マチルダとスタークも飛び出し、残りの騎士たちをあっさりとかたづける。

 頭が利く相手ではないので、全力で頭に向かって一撃を叩き込み脳震盪を引き起こさせる。

 マチルダも杖から炎の矢を放ち、鎧に纏わり付かせて火傷を併発させるなど、なかなかにエグい攻撃を仕掛けている。


「今のうちに!!」


 騎士たちが身動き取れなくなるのを見計らい、スタークの合図で全員が走る。

 そして停車場に預けてあった馬車に飛び乗ると、そのまま正門を強行突破し、北の街道をひたすらに走り出した……。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



──一刻後

 北の森を走り抜ける馬車。

 その中では、スタークたちが爽快な顔でメンバーを見ている。


「さて、このまま一週間も走ればマフトミン公国だが。どう思う?」

「ランガクイーノ先生の治癒術を見たら、恐らくは王宮に取り込もうとする輩も出るでしょうね」

「途中からヘスティア王国に抜ける道を走れば、あの国は意外といけるんじゃないか?」

「その先にある魔族の帝国領を越えたいですわね。その先はバーバリオス王国、かつて勇者が降臨した国です」

「勇者ねぇ……あっちの国の勇者召喚も、うちのヴェルディーナ王国みたいに利権絡みって噂ですよ」


 話を聞いていると、どの国も勇者という存在を利権程度にしか考えていないように、玄白ほ感じていた。


「勇者召喚とやらは、本来ならどのような理由で行われるのじゃ?」

「まあ、世界征服を企む魔王の野望を打ち砕き、世界を平和にするために異世界から召喚されるのが勇者なんですけど」

「最初の勇者召喚は、今から確か500年前ですわ。その時はバーバリオス王国の勇者が魔王を討伐し、世界が平和になったと歴史書には記されています」

「その勇者の血筋が今もなお残っているのが、バーバリオス王国。ちなみにヴェルディーナ王国は勇者は召喚できなかった。確か、聖女が召喚されたんだよな?」


 つまり、各国において勇者召喚のようなものが行われ、それぞれの国が勇者、聖女、賢者、魔法使い、聖戦士という五人がどの集った勇者パーティが結成されたらしい。

 そして世界が平和になってからは、それぞれが血を残し、勇者の血脈として各国に受け継がれている。


 ヴェルディーナ以外は。

 玄白が最初に訪れた土地、すなわちヴェルディーナ王国は聖女の召喚を行なった。

 そして魔王討伐後は、教会の繁栄のため、国の民のために全力を尽くし、未婚のままこの世を去ったらしい。

 それが現在、どのようにして勇者召喚を成功させたのか、それは全て謎のまま。


「ふぅ。それなら、行き着く先は一箇所しかあるまいなぁ」


 玄白はため息を吐きつつ、目の前に広がっている地図を指差す。


「……はぁ?」

「い、いや、流石にそこは……」


 玄白の指差した場所。

 そこは、魔族が住む魔族領。

 バルバロッサ王国である。


 国土の殆どの国境が、山脈や大森林を挟んで勇者召喚を行った国に面している、まさに魔王の住む国である。

 今でこそ他国との国交は行われているものの、魔族の力は常人てわさえも人間の十倍に近く、そんな危険な場所を選んで訪れる商人などほとんど居ない。

 ましてや冒険者となると、実力的に三段以上の階位がなければ、まともに生きるのも厳しいと言われている。

 それほどまでに、周辺の森林や山脈は危険が伴っている。


「……よし、バルバロッサ王国に向かう」

「スターク!本気か?」

「本気も何も。スギタ先生が行きたいと言っているんだ。それに、少しばかり興味がある。冒険者はほとんど近寄らない国だ、逆に考えるなら、俺たちの知らない魔物や素材があるかもしれない」


 そうスタークが告げると、全員が半ば呆れ返るように、そして納得するように頷く。


「なんやら、巻き込んだようで申し訳ないが」

「いやいや、これも縁ですよ。まあ、その前に、いくつか国を越えないとなりませんけれど。バルバロッサに向かう最短ルートとは逆の方角ですからね」


 そのまま玄白一行は、まずは隣国のマフトミン公国を目指す。

 そこから先、どのような冒険が待っているのか、まだ、玄白たちは知らなかった。


── Part1. complete

 

いつもお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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