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襲撃? いや、自発的な患者ですね?

『神器『ターヘル・アナトミア』があれば、異世界なんて楽勝です〜杉田玄白、異世界に転生する〜』は不定期更新です。 基本的に週一連載・月曜日と木曜日の更新を目指しています。

 深夜。

 草木も眠る丑三つ時。


 玄白も、体の疲れを癒すために眠りについている。

 神から授かった御神体でも、疲れを癒したり消費した魔力を回復するためには、眠りが必要。

 特に、今日はかなり疲れた。

 自称・勇者とのやりとりのあとは、いつものように治療院で患者を診ていたのだが。


 今日は患者の数が多く、特に外傷のひどい冒険者が後を絶たなかった。

 話によると、普段は見られない魔物の姿が、街の近くにまで近寄っていたらしい。

 これが、勇者の話していたドラゴンが住み着いたことによる影響なのかと考えはしたものの、一介の治癒師である玄白の仕事ではないと頭の中から叩き出す。

 そして夜遅くまで治療を続け、クタクタに疲れ切って眠りについたのである。


──ZZZZZ

 豪快ないびきを掻きながら爆睡する玄白。


──コトッ

 すると、静かに窓が開き、二人の黒尽くめの人物が室内に侵入した。

 音もなく腰のホルダーからナイフを抜くと、二人同時にベッドで眠っている玄白に目掛けて素早く突き刺す。

 一人は腹部、もう一人は首筋。 

 声が出ないように喉を狙い、突き刺した後も暴れられないように腹部目掛けて突き落とし、そのまま体を抑え込む。


 だが、突き刺した感触に違和感がある。

 体に当たった感覚はあるが、刃が刺さる様子がない。

 そして


──ドゴォォォォォッ

 毛布がはだけ、玄白の掌底がひとりの顎にぶち当たる。

 脳が物理的に大きく揺らされると同時に、掌に纏っていた闘気が頭の中を揺らぐ。

 これだけで酩酊状態になり、一人はその場に崩れ落ちて嘔吐。


「こ、このフバシュ!!」


──ドゴォォォォォッ

 続いて一撃。

 今度は右足に闘気を纏い、頭めがけて力一杯ぶちかます。

 当然ながら闘気全開、頭に叩き込まれた闘気が全身を巡り、神経を麻痺させる。


「全く。スタークが夜は気をつけろと言っていた意味が、よくわかったわ」


 ベッドから起きてパンパンと埃を落とす仕草をする。

 その玄白の体からは、幾つもの【魔法障壁】が浮かび上がっている。


「これはマチルダが付与してくれた、【対刃術式】じゃよ。これがなかったら、本当に危なかったわ」

 

 そう呟いたものの、目の前の暗殺者は今にも死にそうな表情である。


「さて。ここで死なれると困ったことになりそうじゃからな。まあ、しばらくは眠ってもらおうか?」


──ブゥン

 解体新書ターヘル・アナトミアを取り出し、麻酔薬を精製する。

 それを倒れている奴らに嗅がせると、侵入者たちはやがて意識を失った。


「ふぅ。それで、この吐瀉物は誰が片付けるのじゃ……患者のものならいざ知らず、こんなら見ず知らずの暴漢のものなど触りたくもないわ」


 そうはいうのだが、やむを得ず消毒液を生成して吐瀉物にぶちまけると、古布を被せて解体新書ターヘル・アナトミアの中に収める。

 そしてゴミ箱まで持っていくと、その中に全て投げ捨てた。


………

……


 翌朝。

 玄白は冒険者ギルドに向かう。

 そして昨晩何があったのかを、朝食を取っていたスタークたちに告げると、すぐさま【深淵をかるもの】のメンバーが治療院にやってきた。

 そして床に縛り上げられている二人の侵入者を見て、なるほどなぁと納得している。


「はぁ。ランガさん、こいつらは指名手配されていた奴らですよ」

「ほう? 指名手配とな?」

「ええ。詳細までは詳しくないのですが、確か暗殺者ギルドに所属している奴らですね。しかしまあ、よくご無事で」

「マチルダ殿に魔法を付与していなかったら、危ないところであったかもな」

「そうでしたか。今日からは、警備を雇ったほうが良いかもしれませんね」


 スタークの言葉に、玄白は頷くのだが。


「警備を雇うとなると、やはり冒険者じゃなぁ。どの程度の金額で、どれだけの腕のやつが雇えるのかさっぱり分からんわ」

「それならよ、俺が戦闘技術を教えてやろうか?」


 困り果てた玄白に、サフトが話しかける。

 ちなみにサフトの冒険者ジョブは盾戦士シールダー

 守りに特化した戦士である。


「戦闘技術か。すまぬが、頼みたい。昨日のように襲われた時のために、自衛手段は身に付けぬといかんようじゃからなぁ」

「そうと決まれば、早速始めるか?」

「待て待て、戦闘技術を乞うのなら、然るべき代価は必要じゃろ?」


 そう告げてから、懐から金貨を取り出してサフトに渡そうとするが。


「待った、それは後にしてくれ。それよりもこいつらの処遇だ」

「指名手配されているので、自警団か騎士団詰所に連れて行けば報奨金が支払われる。先に手続きをしたほうがいいだろう」

「それもそうか。では一走り、騎士団詰所まで向かうことにしよう。すまぬが留守番を任せて良いか?」

「ええ、構いませんが。私たちが代わりに呼んできましょうか?」


 マクシミリアンが玄白に問いかけるが、玄白は頭を左右に振る。


「ワシの命を狙って、失敗して捉えられている。この次の手としては、こやつらの口封じじゃろ? だから、ここは任せるぞ」

「なるほど。では、しっかりと警護することにしましょう」


 スタークが話しつつサムズアップ。

 その意味は知らないが、とりあえず玄白も同じ素振りをしてから、騎士団詰所まで走っていった。


 やがて半刻もすると、玄白は数名の騎士を連れて治療院に戻っていく。

 一通りの手続きを経て侵入者たちを騎士団に引き渡すと、受け取った褒賞から【深淵をかるもの】たちに金貨を数枚手渡す。


「いや、こんなに貰うわけには」

「よいよい。それよりも、ワシに戦闘技術を教えてくれるのじゃろ? 治療院が終わってからで良いか?」

「そうですね。俺たちの依頼がない日なら、夕方の鐘の後でなら構いませんよ。近接戦闘についてはマクシミリアンとサフトが、魔術ならマチルダが教えることができますから」

「という事ですので、今日からよろしくお願いしますね」


 スタークとマチルダの説明を受けて、玄白も静かに頷く。

 そして外で待ち始めた患者の治療を始めると、スタークたちも仕事として治療院の警備を始めることにした。

 

 

いつもお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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