貧乳スキルで異世界無双 ~胸のサイズと同じステータスになるので、全てのステータスがAAになりました。今まな板って言ったやつ、謝ってももう遅い、絶対に許さない~
この世界には冒険者という職業がある。
私――アリスティア・レヴァンティンは、冒険者として最前線で活躍していた。
依頼を受けて、様々な仕事をこなしていくのだが、私はわずか一年にして、冒険者としては上位に位置するAランクへと昇格する。
それが才能だった、と言われたら、その通りなのだろう。
冒険者にとって大事だと言われるのは、『スキル』と『ステータス』だ。
特にスキルは、『ユニークスキル』と呼ばれる特異でレアなものほど強いとされている。
私は、そのスキルの恩恵を強く受けていた。
「あれが、アリスティア・レヴァンティンか」
「『貧乳スキル』持ちの……」
「確かに小さい」
「小さくて、何かいけないことがありますか?」
その瞬間、周囲がざわついた。
「俺は言ってない」だの、「貧乳はむしろステータスだろ」だの、勝手なことを言う人間ばかりだ。
『貧乳スキル』――それは、私に与えられたスキルであり、その能力は極めて異質だ。
なんと、胸のサイズとステータスが同じになる、という内容なのだ。
その結果、私のステータスはなんと全てが『AA』になった。
これは、ギルドに登録されている冒険者の中でも最も高いステータスであり、最高値は『S』となるが、平均で言えば一番高くなるらしい。
このスキルが発現してから、私の身体の動きは驚くほど軽くなったし、魔力も尋常ではないほどに上がった。
そう、このスキルは確かに強い――のだが、『貧乳スキル』という名前のネタ感が相まって、悪い意味でも知られている。
「あの胸のない冒険者に気を付けろ」とか、「あの女は『貧乳のムネナシ』」と呼ばれている……とか。
なんなの、貧乳のムネナシって誰なの? 私の胸のサイズが『AA』なだけであって、悪いことは全くしてないんだけど。
けれど、怒りに身を任せて行動してはいけない。
冒険者は、常日頃からの行動も評価されるのだ。
だから、私はいつだって冷静に、周囲の言葉を聞き流す――
「でも、AAってもはやまな板だろ」
ピタリ、と私は足を止めた。
私は笑顔のまま、声のした方向に視線を向ける。
「今、まな板って言った奴、処刑するので前に出てきてもらえますか?」
「え、いや、あの……」
「あなたですよね? 声の質が同じだから分かりますよ」
「な、何で聞こえて……! めちゃくちゃ小さい声で言ったのに」
「あはは、分かるに決まっているじゃないですか。私のスキルって、全ての能力がAAクラスになるんですよ。聴力だって、普通の人と全然違うんです」
「そんな……す、すみません!」
私のことを『まな板』呼ばわりした男は、すぐにその場で頭を下げる。
広い心で許してあげる――なんて、甘いことを私はしない。
何故なら、そういう奴らはつけあがるからだ。
「絶対に許さない。今すぐ決闘しましょう。二度とそんな口利けないようにしてやります」
「ひ、ひぃ……!」
こうして、また私の『噂』が広まっていく。
――『まな板』という言葉は、大陸中で禁句となった。
サクッと読める貧乳ファンタジーです。