無題
自分がいなくなったから
変わるわけじゃない
残ったからって良くなるわけじゃない
でも、自分のせいに思える
どうしようもないのに
僕がいたって、悪いものは改善されない
誰かが死ぬこともなく
誰かが病気にならないなんてことはない
もちろん誰もがいい気分になるなんてこともない
あの場所は僕が勝ち取った唯一の場所だ
家族の様で
家族じゃない不思議な場所
僕はそこで多くを学び、
多くをもらった
誰もが得られるものじゃない
だからといって僕が特別なわけじゃない
みんな僕が特別だというけど
僕は平凡な変人だ
もう僕はあの場所へ戻れないし
戻らない
あんな醜い泣き方をしたから
僕は泣き方を忘れていた
思い出すことはできなかった
たぶん、僕はいつまでも後悔すると思う
でも、あそこから去ったのは正解なんだ
ぬるま湯に浸り続けたらふやけてしまう
僕はみんなと違う
と誰かがいう
自分の才能を活かせ
誰かと違うことをしろと
今の僕を否定する
本当の僕を知らないくせに
僕が何を考えているか知らないくせに
僕がどれだけ矮小か知らないくせに
自分ができなかったことを
僕に押しつけているのかもしれない
それか
社会に適合できない僕を
慰めているのかもしれない
いつだって人は身勝手だ
理想を押しつけ
勝手に期待する
僕は押しつぶされそうだ
押しつけられたイメージで
帰りたい
その言葉はどこにいても
なにをしていても
漏れ出てくる
ぼくはどこに帰りたいんだろう
ぼくの居場所はここじゃないのか?
誰も知らない
ぼくも知らない
本当の居場所
誰もが持っている
帰る場所を
ぼくは持ち合わせていない
ぼくは見つけることができるだろうか
帰る場所を
誰もが自由を否定した
世間に縛られることを肯定した
ぼくは仕方なしに世間に迎合した
それがぼくの憂鬱を払う
唯一の手段だと思って……
結果はみんなの予想した通り――
ぼくは世間の期待通り動けない
自由に憧れ
霞の中を歩み続ける
自分の過ちを正すまでどれくらいの時間があるのだろう
もしかしたら
もう引き返せないのかもしれない
だけど、ぼくは決断した
大空を求めて、
かごから逃げ出した
陽が昇り
誰もが目を覚まし、
ぼくの頭は締め付けられ
胸が抉られる
絶望が押し寄せて
ぼくを痛めつける
身近に潜みながらも、
誰も存在に気づかない言葉が
ぼくに忍び寄る……
いや、あの言葉はぼくを以前から蝕んでいた
だからこうやって苦しんでいるんだ
ぼくは逃げられない
心に言葉を刻みつけられたせいで
頭の中を
一つの観念がうずめきまわり
疾風かける騒音の中に飛び込むしかなかった--