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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

性悪人間が出てくる恋愛要素の無い悲話を創作してみた。

練習で書き上げたものに二段オチを追加して短編にしました。

隣の家の子供が虐待を受けていたのを知り通報し、その両親が逮捕されたのが半年前。


この辺りは田舎なので子供の保護施設は無く、都心にその子が送られることになったのだが…。


「おじちゃんと一緒がいい!離れたくない!」


そう言って虐待を受けていた子が俺になついてしまったので、手続きを踏んだうえで養子として迎えることにした。


俺、まだ23歳なんだけどな。



そして我が家に二人目の住人である『息子』ができたのだった。




俺の名前は須藤頼朝。

有名な将軍みたいな名前だが、父親の名前は義経だ。なぜだ…。


その父親も母親も事故死して親戚も無い俺は天涯孤独だった。


そこにやってきた息子の零斗れいとはとても可愛らしかった。


「これからは二人で幸せになろうな」

「おとうさん、結婚相手に言うみたいなこと言うなよ」


ちょっと嫌そうな顔をしつつも口元は笑っている零斗。


彼の本当の両親の裁判が終わるまで笑ったことが無かったが、俺と親子になってからは笑うことが増えた。


「これから楽しいこといっぱいしような」

「うん!」

「というわけで、勉強だ」

「え゛?」


固まる零斗。


「零斗は今度小学3年生になるだろ?早く学校の勉強追い付かないと困るからな」


零斗への虐待を隠すためにあの馬鹿親どもは零斗が病気だと嘘をついて学校を休ませていたのだ。


だから零斗には小学校1年生程度の学力しかない。


「ぶー。おとうさん、そこは一緒に遊ぶ流れじゃないの?」

「遊びはあとだ。まずは算数からいくぞ!」

「わーん!」



それから20分の勉強と10分の息抜きを繰り返しつつ、零斗に勉強を教えていった。


零斗はとても物覚えが良かったので、なおのこと勉強する機会を奪った奴らが憎らしかった。


でもここはあいつらが住んでいたアパートから遠い山の中の一軒家。

零斗の心を癒しつつ、これから幸せに暮らしていけるだろう。




そうして3年経った。


4月から零斗は小学校6年生になる。


その時、悲劇が起きた。


あの馬鹿親どもが出所し、うちに乗り込んできたのだ。


しかも手に刃物やスタンガンを持って。


武道や護身術の心得の無い俺は零斗をかばいながら抵抗したがスタンガンで気絶させられ縛り上げられた。




それからは地獄だった。


わざわざ縛り上げられた俺の目の前で、同じように動けなくされた零斗が虐待を受けるのだ。


「きゃはははっ!楽しっ!やっぱりあんたって最高の叩き心地だわ!」

「おいおい、腹は蹴飛ばすなよ。水しか飲ませてなくても吐くときたねーからな」

「掃除ならそこの泥棒にさせればいいのよ。私たちの『おもちゃ』を奪った泥棒にね」

「そうだな。這いつくばって零斗のゲロなめさせるか。よっしゃ、俺が吐かせてやる」

「やめろっ!零斗をやるなら俺をやれっ!」

「馬鹿なの?あなたがそうやってコイツをかばうから、コイツをいじめるのが楽しくなるんじゃないの」

「おらおらっ!」


どごっ、ぼこっ


「うごおっ…」


まともに悲鳴も上げられないほどに衰弱した零斗は吐いた。




真っ赤な血を。



「え?ちょっと待って。あなた、やりすぎたんじゃない?」

「これはやっちまったか?」


零斗はピクピクと痙攣し始めた。


「ちっ、このままだとまた刑務所に逆戻りだ」

「ねえ。それならいっそここ燃やさない?」

「なるほど。証拠隠滅だな」

「冴えてるでしょ、あたし」


その言葉に、俺のわずかに残っていた理性が壊れた。


「き・・・さ・・・ま・・・らあ・・・」


ぶちぶちっ


「え?こいつ何をしてやがる?!」

「うそっ?ありえないわっ!」


俺はインシュロックで縛られた両手首の拘束を無理やり解いていた。


インシュロックは切れずに俺の手首と手が裂けて血がほとばしる。


これで両手は自由になった。

しかしまだ両足が拘束されたままだ。


「この野郎!くたばれ!」


零斗を虐待するのに使っていた木刀が振り下ろされたので俺はそれを転がって避ける。


そして両足に力を籠める。


ぶちっ、ぶしゅっ


インシュロックから無理やり引っこ抜いた足首の肉が削れて血が噴き出すがかまわない。


今俺に必要なのはこいつらを叩きのめすための『自由』だ!


「ひいいいいっ。こ、来ないでっ」


両手両足から血を流してにじり寄る俺に恐怖してへたりこむ女。


しかし男は木刀を俺に向けてさらに振り下ろしてきた。


バキイッ!


「やったぜ!うぎゃあっ?!」


俺は肩で木刀を受け止めつつ、男の眼に指を突き入れた。


「て、てめーっ…(ばきっ)ぎゃあっ!」


さらに膝を蹴り飛ばして折り、倒れた男の腹の上に足を振りかぶる。


「零斗のかたきだ!」

「やめろおおおおおおっ!!」



ぐじゃっ


「おぼっ」


男は全身から色々なものを吹き出して気を失った。


その傍らでおろおろしている女。


その足元には失禁した証拠が広がっていた。


「早く救急車を呼べ。そうしないとこいつは死ぬぞ」


俺のスマホはどこかに隠されており、こいつらのスマホは本人しか使えない。

だからこの女に救急車を呼んでもらうしかないのだ。


「あ、あたしは悪くないんだからあああっ!」


そう言って腰の抜けていたはずの女は一目散に逃げだした…が逃がすはずが無い。


「おらあっ!」

「きゃあっ!」


俺は怒りに任せて女を後ろから蹴り飛ばすと、そいつは転んでテーブルに頭をぶつけて沈黙した。


「おい、起きろよ。おい!」


死んでる?

これでは救急車も警察も呼べない!


しかもここは山の中の一軒家。

近所の人など居やしない。


「なんとか運転するしかないか」


俺は吹き出す手足の血を気にもせず零斗をかかえると車に乗せて村の病院に走った。


「待ってろよ零斗!」

「あ…あ…」


レイトの意識は今にも消えそうだ。




しかし俺が慌て過ぎていたことと、出血しすぎていたことと、手足が思うように動かせないことなどが重なり、俺はハンドルを切りそこなってしまう。


「あっ?!まずいっ!」


車は狭い山道から飛び出し、崖下へと落下していく。


「うわあああああああっ!零斗おおおおっ!」


俺は助手席に寝させている零斗に大きかぶさったが…


ゴンッガウンッドゴンッ!


車は崖に何度もバウンドし、天井はひしゃげついには…


ドゴオオオオオオッ!!



車は爆発炎上した。




俺は零斗を救えなかった。

生まれ変わることがあれば、今度こそ零斗と本当の親子になって、幸せになりたい。


そう思って俺の意識は途絶えた。


最期に、零斗の手を握りしめたまま。











「ということで、今夜のお話はおしまい」

「ちょっとおとうさん!何よこの話?!あまりに救いがないんじゃないの?!」


そう怒るのは、の零だ。


「だってお前が『おとうさんが最近眠る前にしてくれるお話は悪い奴が出なくて恋愛っぽい話ばかりだからそういうの無しで』って言ったからじゃないか」

「だからって、だからって、こんなのひどすぎるよお」

「最近はハッピーエンドばっかりだとか文句言ったじゃないか」

「でも、これはやりすぎだよお。ひっく、うええええん」


俺は泣き出した小学6年になろうとしている零奈の頭を撫でてやる。


「ごめんな。今度はもっといい話にするから」

「うん」

「じゃあ今夜はもう寝ろよ」

「こんな怖い話だと寝られないよお。だからもう一度お話して。ね、おとうさん」

「仕方ないな。じゃあ、どういう話がいい?」

「えっとね…」


零奈は少し考えると、その可愛らしい栗色の瞳で俺を見つめながら言った。


「おとうさんと私が異世界に行って恋人になる話」

「え?零奈と俺が仲良くする話はキモいって言ってたじゃないか」

「じゃあキモくないようにして」

「恋人じゃなくていいんだな?」

「恋人がいいの!それと、エッチな話でもいいよ」

「教育上悪いから駄目だ」

「けーち」



そして俺は零奈にお話を始めた。


俺の可愛い娘、零奈。


隣の家で虐待されていた娘を助け出して養子縁組した娘だ。


俺はさっきの話みたいにならないよう、零奈とずっと幸せに暮らしていこうと思…


ピンポーン


「こんな時間に誰だ?」


俺がインターホンの画面を見ても誰も居ない。


「いたずらか?」


バリーン!


いきなり庭に面したガラス戸が割られた。


そこから入り込んでくる二人の男女。


「見つけたぜえ」

「恨み晴らさせてもらうわよっ!」


そいつらは零奈の元両親。


俺たちに復讐するためにここにやってきたのだろう。


「おとうさんどうしたの?」

「零奈?下がってろ!」

「零奈、大きくなったなあ。でへへ」

「叩きがいがあるわねえ」


そいつらは残酷な笑みを浮かべて手に持った包丁やスタンガンを振りかざす。


「なんだ、普通の包丁かあ」

「スタンガンも出力が小さくて気絶しない奴だな」


零奈と俺はちょっと落胆していた。


「な、何落ち着いてやがる!」

「今からあんたたちを動けなくして、散々にいたぶってやるのよ?わかる?」

「わかってるわ」

「わかってるさ」


俺と零奈は両手を広げてやれやれといったポーズをする。


「散々、あんたたちが襲ってきてこうなるかもしれないって話をおとうさんにしてもらっていたのに、まさかその程度のものしか持ってきてないなんて」


そう言うと、零奈は木刀をどこからともなく取り出す。


「な?どっから出しやがった?!」

「あなたたちがどのパターンでうちに来てもいいように、あちこちに武器が隠してあるのよ」

「なんだと?!」

「でもこのパターンって想定していた中で一番『楽なパターン』よね。寝ている間に不意打ちとか通学中に友達が人質に取られるとか色々想定していたのに」


「おとうさんの寝る前にしてくれるお話でね」




それから俺も武器を手にして、あっさりそいつらを鎮圧した。


この日のために零奈も俺も武道や護身術を習いまくったからな。


「正当防衛っていいわね!腕とかぶち折ってやれてスッキリしたわ!」

「これでもう復讐には来ないだろうな」

「ううん。まだわからないよ」

「そうかな?」

「だから、それでもあいつらが復讐しようとする話をしてほしいな」

「まだやるのか。まあいいけどな」

「それでね。私とおとうさんがその苦難をくぐり抜けてラブラブになる話で…」



「キモくならないようにしてね♪」

お読み下さりありがとうございました!

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