青春カクテル
はじめまして!がんばり⭐︎おれんじと申します。
今回初めて投稿させていただきました。
処女作ゆえに読み苦しい部分もあると思いますが、
最後まで読んでいただけると幸いです。
ほんのりと木材の香りが漂う講堂に朝日が差し込み、今日もまた講義が始まる。毎週のように顔を合わせているにも関わらず、飽きもせずにここまで騒がしくできる周囲の人々に呆れると同時に今日もまたこっそりと日課を進める。
「お前またやってるのかよ」
突然かけられた声に若干驚きつつ見知った友人の声であることに安堵し、
「悪いかよ、これが今の生きがいなんだ」
と、小さなメモ帳にペンを走らせ続ける。
「それにしてもよくもまあそこまで熱心になれるもんだなあ。そこまでするほどあいつって魅力的かよ」
「あの良さがわからないと言うなら、所詮お前はその程度ってことだ」
「あーはいはい、じゃあそれでいいや」
友人の呆れ声を背にペンを動かし続ける。たった1人の声を頼りにそのメモは完成していく。
カクテルパーティー効果というものをご存知だろうか。簡単に説明すると、騒がしい中でも興味のある内容は自然と耳に入ってくると言ったもののことである。聞いた当時は眉唾だと思ったものの、いざ体験してみると馬鹿にすることはできないものである。こうして彼女の声を聞き漏らすことなく留めて置けるのは、これの影響も少なからずあるのだろう。
彼女は同じゼミの一員であり、俺が好意を向けている女性でもある。友人としてはそれなりにうまく言ってると自負しているが、どうにもその先に進めないというのをかれこれ半年以上続けている。そこで、彼女の趣味趣向に合わせた遊びやプレゼントをすることで気を引こうなどというなんとも短絡的で俗物的な行為に出たのは、若者からしたら少なからず理解を得られるのではなかろうか。
とはいえ、そろそろあの時期がやってくる。そう、世界中のリア充が街に溢れかえるクリスマスである。それまでには彼女にアプローチして叶うことなら恋人関係になりたいと思ってはいる。今のところ彼女にそれらしい気配は感じられないがもしもがあっては目も当てられない。その為にもそろそろ行動しなければならないと思っていた矢先の出来事であった。
「------最近----うまく行ってるの?」
「-----上手く----できた!」
「まじ?!おめでとう!」
「これで-----も-----だね!」
「あとは----するだけでしょ!」
「もーっ!それはまだ早いって!」
まさかの展開だった。うだうだしてるうちに彼女に相手ができてしまった。全て聞けたわけではないがあの女子の集まりでのあの流れはまさしくそれだ。その瞬間頭が真っ白になり、頭を一度冷やそうと足取りがおぼつかないまま俺は講堂を出た。
「こんなことしてるから先を越されるんだ…」
頭の中の不安をぶつけるように書き溜めたメモを握りしめると、俺はそのままそれをゴミ箱に投げ込んだ。力の加減もせずにただただ投げつけたそれは当然のように弾かれ、床に散らばっていった。
もっと早く行動すれば良かった。もし闇雲にでもアタックしてれば今頃隣にいれたのは俺だったかもしれない。そんなことを考えても後の祭りだ。
この恋はもう終わってしまったのだ。とりあえずそのままにしておくのは憚り、落とした紙を拾おうとすると
「何やってんの?そろそろ講義始まるよ?」
後ろから彼女の声がした。
「いや、お前こそ何してんのさ。周り人いないし、こんなとこ見られたら勘違いされるぞ。」
「は?何と勘違いされるってのさ。アホらし」
「付き合ったばかりなのに他の男と2人きりでいたらまずいだろってことだよ」
「え?ウチ彼氏いないんだけど」
「いや、俺知ってんだよ。嘘つかんでいいって」
「いやいや、むしろなんでそんな嘘つく必要あるん」
「えっ」「えっ」
一時の沈黙が流れ、俺は己の失態を自覚し顔を真っ赤にした。
「…まあいいや、とりあえず拾うの手伝うよ」
「あ、ありがとう…ん?いや、ちょっと待っ----」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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