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03

 水魔法が書かれている書物はすぐに見つかった。調合師のセイジくんが覚えるのに使ったのが棚にあったからだ。セイジくん自身は、薬草採取のクエストをこなした報酬を使い、本屋で手に入れたそうだ。手に入れた書物は他のプレイヤーに譲渡することもできるから、こうして知り合いに譲ってもらう形で読むこともできるわけだ。


「あれ、レベル1の水魔法であることしか書いてない……」

「まあ、術式ってのはハッタリだ。実際には、条件さえ満たしていれば読める」

「レベル1の水魔法って文字が読めた時点で修得されてるよ」


 ステータス画面を見たら、確かに『水魔法:Lv. 1』とあった。


「修得した魔法は繰り返し使っていくとレベルが上がるよ。とりあえず、この魔石に水魔法を付与してみて」

「でも私、まだ付与スキル修得してないよ?」

「職業に魔法付与師を選んだのなら、既に付与スキルはあるはずだ」

「え、そうなの? ……あ、ホントだ」


 職業に伴うスキルは別の欄にあるので気づかなかった。ただ、表示はこちらも『付与:Lv. 1』と同じ形式だった。


「じゃあ、早速。魔石に手を当てて……『付与:水魔法、キーワード:ウォーター』」


 ぼうっ……


 手から薄い水色の光が現れたと思ったら、すぐに消えた。


「……付与、できたのかな?」

「できたと思うよ。ちょっと貸して。『ウォーター』」


 ぼとぼとぼと


「蛇口から出るようにはいかないね。でも、できた!」

「後は繰り返しだな。ああ、消費するMPポイント……魔力量には注意しろよ」

「……これだけで、MPが半分に減ってる。魔力はどうやって回復するの?」

「休むか、MP回復ポーションを飲むかだな。最初はポーションを使わず、休み休み続けた方がいいだろう」

「僕がポーション作って渡してもいいけど、コストパフォーマンスが悪いんだよね。初期設定の魔力を全回復させるのも、その十倍の容量があるプレイヤーの魔力を全回復するのも、最低ランクのポーションをひと瓶使うことになるから」


 そう考えると、最初のレベル上げは結構時間がかかるんだなあ。


「ひとつの魔法をレベル上げしていくのと、レベル1でいいからたくさん魔法を覚えるのと、どっちがいいのかな?」

「それはプレイヤーによるかな。複数の魔法を修得するには、複数の書物が必要だし」

「とりあえず、俺達が持っている書物を全て試してみたらどうだ? セイジは他に土魔法が、俺は風魔法があるな」

「あー、僕は風魔法を覚えることができなかったんだよね。調合には必要ないってことかなあ」

「俺の場合は、鍛冶の時に風を送り出す必要があるからだろうな。その代わり、土魔法が使えない。調合師と、あと、大工職人向けらしい」


 その辺りの規則性はよくわからないみたいだ。もちろん、ゲーム開発者が決めているのだろうけど。


「じゃあ、今日中に風と土の魔法の付与も試してみるね!」

「ああ、がんばれ。小さい魔石ならいくつもあるから、なくなったら呼び出してくれ」

「僕達は、冒険者ギルドに毎日納入しているアイテムを作っているから。じゃあね」


 そう言って、ふたりはそれぞれの作業部屋に向かっていく。


 よーし、がんばるぞー。



「……ユリカちゃん、ユリカちゃん!」


 はっ。


 あれ、今、何時?


「すごく集中してたねえ。試験の時みたいに!」

「セイジ、お前はもう少し集中力を養うべきだ」

「あ、お兄ちゃんも」


 どうやら、魔法修得と魔石付与に熱中していて、時間が経つのも忘れていたようだ。


「で、どうだ? まあ、それだけやってたら、かなりの成果が出たと思うが」

「うん! 今やってたのは、水魔法1に土魔法3の割合での付与かな」

「「……え?」」

「え?」


 あれ、ポカンとされた。なぜ?


「割合……? 割合って?」

「付与魔法の割合を変えると、発動する魔法の効果も変わるからだけど……」

「いや、ちょっと待て。ユリカ、複数の魔法が付与できたのか?」

「え、最初からできたけど?」

「ええ……」


 あれ、もしかして、やっちゃいけなかったのかな?


「できなくはないけど、今のユリカちゃんのMP容量だと、かなり地道な作業が要るって聞いたよね」

「うん、だから、休み休みやったよ。メモを取りながら」

「メモを……。ずいぶんとやり込んだんだな」


 そうかな? 料理のレシピを改良する時と同じようなものだけど。


「でも、結局一番うまくできたのは、水魔法1と風魔法4の割合の付与かなあ」

「この魔石がそうなの? キーワードは?」

「『レインボー』だよ」

「え、それってもしかして……『レインボー』」


 ぱあああっ


「わー、魔石の周りにきれいな虹が!」

「しかも、だいぶ保つな。あと、水しぶきが変に飛び散らない」

「武器とか防御の装備にはならないけど、おもしろアイテムとしてはいいと思って」

「いいよいいよ! 土産物屋に売れるかも!」

「そうだな。独占しつつ数が作れれば、かなり儲けることができるかもしれない」


 そっかー。じゃあ、当面はこれでお金を貯めようかな? でも、もう少し工夫したいんだよねえ。色とか持続時間とか。

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