⑺決戦! VSレミリア!
レミリアは悪く無いんだ…
夜明け迄残り6時間半
霊夢とレミリアが最終決戦をした…らしい屋上まで着いた。瞬間、気配が一気に強まった。
「…!来るわよ…」
「えぇ。何処から…」
「神…『スピ…ザ・グ…ンル』」
「下よ!」ドゴーン
「チッ…逃し損ねたか…」
床に空いた穴から出てきたのは勿論レミリア。だが…その後ろに1人居る?
「れ、霊夢!」
隣にいる紫が叫び、ギョッとしつつも目を凝らすと…そこには確かに霊夢がいた。だが何か様子がおかしい。目に光がないのだ。
「な…もしかして…操られてる…?」
つい考えてしまった事を言葉にしたがそんな事あり得ないと首を振る。しかしその言葉はすぐに現実となる。
「あら、よく正解に気付いたわね。まぁそんな事に気付いたってどうにもならないけどね!あのお方の邪魔をするなら容赦なく殺す!」
え…今なんて言った…?殺す…?弾幕ごっこで決着をつけるのではなく…本気の殺し合いの弾幕ゲームをやろうって言うの!?そんな事…
「して良い訳無いじゃない!」
「あら、何がして良い訳無いのかしら?あの方の御命令なんだから良いのよ。」
隣を見ると紫も歯を食いしばっている。そう。そんな事あって良いはずがないのである。
「ふーん。無視ねぇ。じゃぁ遠慮なく殺るわよ?」
そう言うと共に、致死の威力が込められた弾幕が放たれた。
「クッ…本気で私達を殺しに掛かって来てるわね…幻想郷のルールに乗っ取る以上こちらからはあの威力の弾幕は出せない…どうにかしてダメージを蓄積させて気絶させるしか方法は無いけど…」そこまで紫は言うとレミリアを傷つけないギリギリの威力の弾幕を放つが…
「な…!打ち消された…!」
「えぇ。弾幕の威力が違いすぎると弾幕は一方的に消去されてしまうの。」
「そんな…!私達に勝つ術が無いじゃないの…!」
「いや、1つだけあるのだけれど…」
「もしかして…『マスタースパーク』?」
「えぇ…」
「無理ですね。」
「知ってました。」
「でも本当にどうするのよ!魔理沙が来るまで待球するしかない訳?いつ来るかも分からないのに?」
「…………。危険な賭けかも知れないけど聞いてくれる?」
「えぇ。」
「今この空間は幻想郷から隔離されている。ただ、レミリアの現在の魔力だとスペルカード中は術が持たない筈。術が一時的でも薄れれば境界を繋げられる。そこで魔理沙に伝言して紅魔館に向かってもらうの。」
「魔理沙に境界を通って貰うのはダメなの?」
「やってみないと分からないけど、多分無理。物体の通り抜けまでは出来ないと思う。
そしてここからが本題。幽々子には境界を繋いで伝言している間1人で2人の弾幕をなんとか相殺して欲しいの。」
「相殺!?そしたら私も致死の弾幕を放たないといけない!そんなの幻想郷の掟を破る事になるわ!」
「今回は『幻想郷の大賢者』八雲紫の名の下に致死弾幕の使用を許可する!責任なら全部私が取る!だから…!」
「そこまで言うならわかったわ。全力で貴方を守ってみせる。」
「頼りにしてるわよ!相棒!」
「ええ!こっちこそ!」
「ようやく作戦会議が終わったようね。…どんなに足掻いても私達に殺される以外の運命は無いのに…私達もこんな所で時間食ってる暇は無いのよ!悪いけど最初から全力を出させて頂くわ!」
「符の参『ヘルカタストロフィ』!」
「光霊『神霊宝珠』!」
「来るわよ!
境界準備迄…5…4…3…2…1…GO!」
「『反魂蝶-九分咲-』!!」
このスペルは正直発動するかも分からず、発動したとしても暴走するかも知れない超危険なスペル…八分咲までなら私の意思力で耐えられるが、九分咲まで行くと制御できるかわからない。反魂蝶が満開になってしまった時、私は幻想郷に存在出来なくなる…………それでも!
「私は幻想郷を守りたいのよ!!!」
「フッ…他愛無い事を。今更抗っても無駄…何っ!弾幕が…私の弾幕を消し去っていく…!そんな事はあり得ない!こうなったら…
紅魔符『ブラッディカタストロフ』!!」
「クゥ…このままだと押し切られる…境界の準備はまだ終わりそうにもない…!」
アレを使うしか無いの…?でも本当に私が死んでしまう…でも…やるしか無い…!
「『反魂蝶…』」
「幽々子様ーー!!
」
「妖夢…!?どうして!」
「永遠亭の調査が終わったので紅魔館に行こうとしたら何やらとんでもない弾幕の気配がするじゃ無いですか。これは援護しないと!って思って来たら幽々子様がいたので…。それよりも!幽々子様!貴方反魂蝶を満開にさせて死ぬ気だったでしょう!本当に…死んでしまうかと思って…生きてて良かったです…幽々子様…!」
「妖夢…」
「さ、それよりも迷っている暇は無いようですね!後何秒で終わりますか!紫様!」
「後45秒で境界の準備が終わる!そこから魔理沙にコンタクトを取る時間も含めると1分超耐えてもらわないと厳しい!出来る!?」
「なんとか耐え切って見せます!幽々子様は疲れてるでしょうから一回下がってください!」
「でも…」
「良いですから!下がって!
桜花剣『閃々散華』!」
「妖夢…ここまで剣術の腕を上げていたのね…これなら大丈夫そう…」致死の弾幕すら次々と斬っていく妖夢を見て一安心。弾幕は斬の攻撃に弱いのでこれなら安心出来そうだ。紫の方はまだもう暫くかかりそうだがまぁなんとかなるだろう。…と安堵した矢先…
「クゥ…これが私の最大出力なのに…」
シュゥゥゥーン
レミリアの背後に黒装束の誰かが現れた。
「まだまだだな。レミリアスカーレット。」
「ハッ…!?すみません…これが限界で…」
「ならばもっと力を授けてやろう。今すぐ全員皆殺しにしろ。」
そう言うと手に光を生み出し、レミリアに投入した。
「有難い…必ずや皆殺しにして見せます!」
シュゥゥゥーン
誰…!?弾幕に隠れてよく見えないけどもの凄い魔力…!今の私に相手になる奴じゃない…!それにアイツは人界で見た奴とは違う!ヤバいヤバいヤバいアイツはヤバい!
「妖夢逃げて!!!」
「幽々子様…?」
「フッ…これでもう敵なしだ…お前らなんぞ瞬殺だよ! 神紅符『ブラッディ一七条のレーザー』!!!」
先程の光の玉の影響なのだろうか?威力が上がり、掠っただけでも致死のレーザーが妖夢に迫る…
「逃げてーーーー!!!!」
「紅神符『十七条のカタストロフ』!!!」
突然現れた誰かのスペルによりレーザーとレーザーが互いに衝突し、爆発を引き起こして黒煙を撒き散らす。
「ゴホッ…妖夢…無事…?」
「はい…私はなんとか…無事です…それより…あの子は…?」
そう。一体誰なのだろう。いきなり飛び出してきたかと思えばレミリア以上のレーザーを準備動作無しに解き放った。ただ者ではない。見ようとするが黒煙に阻まれてなかなか見れない。そろそろ薄れてきたかな…と思った時再びスペル詠唱の声が聞こえた。
「禁忌『レーヴァティン』!」
そのスペルでハッ…と勘付く。レミリアに似た17本レーザー、1人しか操れないという神の武器…
「フランドール・スカーレット!」
「幽々子と妖夢は下がってて!これは私個人の喧嘩なの!
お姉様…よくも私の能力をあっさり渡してくれたわね…ふざけるんじゃないわよ!」と、言うとすごいスピードで突っ込んでいく。致死の弾幕は当たる前に全て斬り、ドンドン距離を縮めて行く。私でも唖然としてしまうレベルだ。隣にいる妖夢は目を丸く見開いている。フランは剣術の達人でも無いのに妖夢より全然剣の使い方が上手い。前に手合わせした時も思ったが、フランは天才だ。ほとんど自分の直感によって行動している筈だ。今の剣術も弾幕の動きを予測して斬っているのではなく、弾幕が来たから斬る!と考えている筈。フランが戦術を覚えたら幻想郷のバランスが崩れてしまうのでは…………と考えてしまうレベルだ。
現に今も数秒物思いに耽っていただけの筈だが、あっという間に目と鼻の先の距離まで詰めており…
「いい加減目を覚ませぇぇぇぇ!!!」
斬りかかった。
「はぁ…愚かねぇ。そんな感情に任せた愚直な攻撃で私を倒せると思ってる訳?愚かな妹さん。
神槍『スピア・ザ・グンニグル』」
レミリアも槍?剣?を取り出すと、そのまま斬り合いになったが…
「クッ…!」
フランの一方的な攻撃をレミリアが必死に防いでいる。フランの強さが底知れず、思わず身震いしてしまう。
「フラン…貴方は…本当に…」ガッシャーン
思わず頭に思い浮かんだ事を口に出してしまい、慌てて口を塞ぐが、レミリアの「スピアザグンニグル」の割れた音にかき消されて他の人には聞こえなかったようだ。
「フラン…止めて!貴方だけは行かせたく無いの!」
「やめられるわけ無いでしょ!あんたが何したか分かってんのか!」
「クッ…しょうがないわね…これだけはフランが居る時に使いたく無かったけど…
ファイナルスペル!『紅色の幻想郷』!」
レミリアが叫んだ途端、身体が軽くなったような感覚がした。
「何処…ですか?ここは…?」
「私の境界の気配が無い…何処かに飛ばされた…?」
「呆けてないで!ここはお姉様のスペルで作り出された異空間!時間いっぱい耐えないと抜け出せない!」
よく見て気付いたが、中央に大きな鉄塔があり、その上に「999」と表示されており、1秒ずつ減っている。
「後16分以上も耐えないといけないのね…」
「えぇ…でもこれがラストスペルの筈だから、スペルカードの出し惜しみは無し!全力で乗り切るわよ!」
さっき限界まで反魂蝶を咲かせたのでコツは掴んだ。操作を任せるのではなく、力を「借りる」のだ。
「『反魂蝶-満開-』!」
「幽々子様!?それ使って問題無いのですか!?」
「えぇ…少しキツイけどなんとかなる筈…」
「分かりました!では私も行きますよ!
桜花剣『閃々散華』!」
「廃線『ぶらり廃駅下車の旅』!」
「このスペル弾幕の量が桁違いね…16分も耐えられるの…?というより何か足りないような…」
「フラン呆けてないで!」
紫がフランに声を掛けたので何事かと視線を向けると完全に呆けてるフランがいた。
「早くスペルを使いなさい!」
「何か違う…何か違うんだよ…」
「何が違うの!早くして!」
「ハッ…そうか!
禁弾『スターボウブレイク』!」
途端目の前が七色の光に染まった。
「嘘…威力も範囲も桁違いじゃない…」
昔は精々横幅5m縦幅3mほどの威力であったスペルが今や横幅はざっと20 mはあるだろうか?途轍も無い威力のスペルへと変わっていた。「禁弾『カタディオブトリック』!」バチッ
今度は大玉を鉄塔に向けて発射した。何をする気なのだろうか?と思っていると鉄柱からスパークが出た。
すると鉄塔から表示されていた「978」の文字が…
「78…?」
「昔お姉様と手合わせした時は「99秒のスペルだったの!さっきのスペルから分かったけど威力は精々2、3倍だった!出口が99秒に鉄塔の内側に出現しても999秒待たないとクリア出来ないと思っていればそれに気づかない!そう考えたんだと思う!」
「OK!これでもう後1分ね!余裕よ!余裕!」
「でもレミリアは逃げているでしょうね…」
「流石に魔理沙は間に合わないわよね…」
およそ7分後…
「いや!いつまで減り続けるのよ!この数字!」
「本当!おかしいでしょう!」
現在鉄塔の数字は-389。
「何よマイナスって!」
「あの…幽々子様…」
「何?」
「スペルが…もうこの30秒残ってるスペルで最後なんです…」
「嘘…もしかして半分霊だし私の劣化版スペル使えるかしら?」
「いや、幽々子様こんな時に天然要素要らないですよ!それよりヤバいですよ!本当に後15秒しか残ってません!」
「これは本当に不味いわね…」
とは言いつつもかなり自分も13枚しか無く、ストックが危なげだ。「紫!後何枚ある!?」
「11枚!」
「やばい…早くこの空間のトリックを見つけ出さないと…」
「フランは後何枚!?」
「えぇ…っと…49枚!」
「え!?そ、その中にラストの耐久スペル何枚残ってる!?」
「8枚!」
「ラストスペルのストックがあるのは他にいない!?」
せめてもとダメ元で聞いてみたが、やはり首を振る者しか居ない。
800秒。それが私達に残された時間。
「ラストスペル発動まで!3、2、1、0!
QED『495年の波紋!』」
その合図を機に私は東へ、紫は北へ、妖夢は西へと移動した。
「この辺やけに弾幕が濃いわね…」
そう。さっき気付いたのだが、ここだけ異様に弾幕が濃かったので、何か隠しているのでは?と思ったのだ。その勘は当たり、銀色に光るボックスを見つけた。
「あった…!」が、その顔は一転絶望になる。「何よこれ…ダイヤル式…?」そう。3桁の数字を入れる欄があったのだ。
「嘘でしょ…分かるわけ無いじゃない…」
その時、ふとレミリアの言葉が蘇った。
「フラン…止めて!貴方だけは『行かせたく無い』の!」そう。何故あの時レミリアは「行かせたく無い」、と言ったのか?私なら咄嗟に出る言葉は「殺したく無い」だ。何かフランに関わる謎がこの異空間の中にある…?だとしたらそれはこの3桁の数字!一体なんだ…
「次のスペルに移行する!3、2、1、0!
QED『〈495〉年の波紋!』」
「それだ!495!」
495と入力し、OKを押すと中央の塔から無機質な機械音声が聞こえた。
“ロックが解除されました。外部からの異空間の破壊が可能になりました。”
「幽々子!よくやったわ!」
「でも…外部からって言ってたわよね…って事は…
「「内部からじゃ破壊出来ない…!」」
「って事は魔理沙を待つしか無いのね…!」
「早く来て…!」
「最後の1枚!これが私の限界よ!
ファイナルスペル!!QED!!『495年の波紋』!!!」
「後100秒…!」数値は-972。-1073になった時、私達の命は尽きると言っても過言では無いだろう。
フランのファイナルスペルが残り1分を下回ろうというとき…
ドゴォォォォォォォーーン
残り-1013まで減っていた鉄塔が吹き飛び、弾幕の生成も止まった。そして床に空いた大穴から出てきたのが…
「魔理沙…間に合ったのね…」
「あぁ!なんとか間に合ったのぜ!それよりこの異空間本当に硬いな…マスパ6発でやっと壊れたぞ…」
「そんなに硬かったのね…この異空間。助かったわ。ありがとう。」
あれ?何か大事な事忘れてるような…?何だっけ?
「あ、レミリアよ!どうなった!?」
「レミリアなら自慢のマスパで処分したぜ♪」
「さっすが魔理沙〜ありがとっ!♪」
「あ、霊夢は!?」
「あぁ…それなんだがな…」
「こっちよー!貴方達強くなったわねー」
「「「「…………え?」」」」
「いやなんで意志持ってるんですか!?」
「操られた筈じゃなかったの!?良かったぁ…………」
「いや、安心出来ないわよ!紫!こいつ味方のフリを…!」
「いや、違うし。一旦私の話を聞いてくれません?」
「えぇ…良いけど…」
「いや、私もね。紅魔館に着いた時精神操作受けてるのは気付いてたのよ。で、この状況!利用できるかも!って思ってパチェのスペルわざと直撃させてね…気絶寸前まで行って良い感じに演技して情報取ってたの。」
「へぇ…………で?それで何が情報あったの?」
「ええ。凄い特ダネが。確証は無いけど…来月の1日、23:50に幻想郷狩りが10000人規模で攻めてくる。」
「「「「…………ハァァァァァ!?」」」」
満場一致で叫ぶが…
「へぇ…」
紫だけ物凄く反応が冷めている。
「いや、紫何故平然としている!?」
「いや、そんなの地面に境界開いて外部に送り返せば良いじゃないの。」
「いや、それが無理なのよ。幻想郷狩りは全員能力抵抗を持っているらしいの。」
「えぇ…弾幕で殺すしか無いの…?冗談で言ったつもりなのに本当に幻想郷大戦争になったわね…」
「まぁあながちその表現は間違ってないわね。幻想郷の全住民を集合させて昼のうちに対策を練っておかないと。」
「そしたら文屋にも協力してもらわないとね!ちょっくら脅してくるね〜♪」
「…え?まぁ紫はとりあえず置いておいて良いか…」
「じゃあ明日の12時集合で良いんですよね?それでは解…」
「いやちょっと待って!」、
「何ですか〜幽々子様。もう眠いんですよ〜」
「いや…戦闘中にレミリアの後ろに居た黒装束の奴が気になってね…幻想郷の中では1番魔力が強い八意永琳の1.5倍はあったと思うわ…」
「まぁまぁ♪今はそんな事気にせず打ち上げよ!思いっきり飲むわよー!」
「いつも酔った時持ち帰るの大変なんですから程々にお願いしますよ…」
やっぱり幻想郷は幻想郷ね…普通なら愕然として絶望するのに…ま、今日は私も飲みますか。きっと妖夢も許してくれるでしょうし!
幽々子達が博麗神社で打ち上げをしていた丁度同じ頃…
「レミリアが失敗した、か…幻想郷もまだまだ侮れない奴が多いな。ムムム…。!そういやお前の能力って『能力をコピーした者の精神を操作できる』、だろ?だったらあの金髪のクソ強ぇ吸血鬼精神操作できれば完璧じゃねーか。」
「いや…あいつは吸血鬼の限界魔力を5倍以上超過していて…私の能力でもコピーすら完璧に成功出来なかった…使ったら暴走しちまったよ。山が丸ごと崩れた。あいつは吸血鬼なんかじゃ無い…もっと凄い…何かの膨大な存在だ。」
「へぇ…面白そうじゃ無いか。まぁとにかく今日は早く寝るぞ。明日から戦争準備なんだからな。忙しくなるぞー!」
「チッチッチッ。ボス〜戦争じゃ無くて虐殺でしょう?」
「ハハッwそうだったな。それじゃあまた明日。」
「良い夜を。」
暗がりの森に2人の話し声が響いていた。
ポケ○ンじゃ無いんだから…
何が「決戦!」だよ…