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第八話 想い


 言葉を尽くすことは心を尽くすことだ。


 言葉の中から相手の気持ちを感じ取る。


 それはとても暖かくて優しい貴方を想う誰かの心だ。


 誰かを大切に思う気持ちは誰にでもある。


 声に出すのを恐れずに、耳を傾けることを怖がるな。



 

  第八話 想い



 

 一本の留守番電話が入っていた。再生ボタンを押すと、聞こえてくるのは最近連絡先を交換したばかりの人物の声だった。


「池江くん?俺、剛志だけど。来週末空いてる?空いてたらボラ部で夏祭りの屋台の手伝いするんだけど、池江くんもどう?」


 サークルを辞めると言い出した手前素直に参加出来るはずもなく、メールの画面を開き断りの文を打つ。


【ごめん。行かない。誘ってくれてありがとう。】


 池江は送信ボタンを押すのを躊躇った。これでは、一歩進んだものが元通りになるのではないか。そう思い、文面を全て消して打ち直す。


【他に誰が来るかわかる?】


 もし、あの時迷惑をかけた三人が来るというならば、これはチャンスだ。たとえ気まずい空気になっても、それがどうだというのだ。ここで引いてしまう方が余程後悔する。

 返事はすぐに来た。


【全員は把握してないけど、将貴と洋介は行くって言ってた!あっくんも呼びたいんだけど、連絡先知らなくて】


 @ならば連絡などしなくとも絶対に来る。池江はそう確信していた。


【行く。@も参加する。】


 了解と絵文字付きの返信が来たのを確認して叔父の家へ向かう。いつもは鳴らさない呼び鈴を鳴らすと、@が出迎えた。


「翔ちゃん……」


 招き入れられた中には仕事に行っているため叔父の姿はない。叔父は近所で雑貨屋のような日用品や駄菓子、本等を売っている店を週五でやっている。勿論その時間を狙って来たのだ。

 居間に通され、飲み物を用意しようとした@を引き止めて向かいの席に座らせる。一呼吸し、気持ちを落ち着ける。


「……この間、取り乱してごめん」

「色々、酷いことばっかり口走った」

 

 素直に謝る池江の姿に、@はぼーと頭を下げる池江の旋毛を見ていた。きっとこちらから接触しなければ、池江は自分から近づいてこないと思っていたからだ。その姿が嬉しくも遠く感じて少し寂しい。昔はいつもこちらからのアクションがなければ自分からは謝らなかったのに、いつの間に変わったのだろう。

 自分以外の誰かの影響だろうか。自分が出来なかったことを他の人が出来てしまうのは悔しい反面、池江にとってはとても良いことだと素直に喜ばしい。

 それから池江は屋台の手伝いについて話した。@は勿論参加するよと快諾かいだくし、後から高田から送られてきた日時や場所等を伝えその日は解散となった。

 


 池江を玄関まで見送った@は、カレンダーに予定を書き込んだ。

 八月十日と八月十一日。この土日の二日間、地元の駅近くで旧暦に沿った七夕祭りが行われる。少し離れた大きな川沿いでは日曜日に花火大会が行われるらしく、駅からも少し小さくなるが充分に見える距離で、どちらも堪能したい人達が七夕祭りになだれ込むのだ。

 お祭り、と書いた横に下手くそな落書きする。殻から頭を少し出した中途半端なカタツムリだ。それを満足そうに見つめていると、この家の家主が帰ってきた。


「叔父さん、おかえりなさい!」

「ただいまー!良い子に留守番してたかー?」

「バッチリ」


 叔父は@の頭をガシガシと撫でると感慨深い面持ちで大人しく撫でられる@を見下ろす。


「家に帰って誰かいるってのはやっぱり良いもんだな」

「……そうだね」


 叔父の家の居間には仏壇がある。

 照れくさそうに笑う美人な女性の写真と、桐の箱に入った臍の、小さな結婚指輪が並べて置いてある。叔父の妻と、産まれて直ぐに息を引き取ってしまった息子だ。叔父は自分の子供をこの家で迎えてあげることが出来なかった。息子の死後間もなく、妻が息子の元へってしまった。

 その一年後に、甥の池江は産まれた。しばらくの間逢いに行くことは出来なかった。会った時に、何故自分の子供は生きることが出来なかったのかと、何の罪もない甥を恨んでしまうのではないかと、怖かったのだ。


 初めて甥を目にした時、ただただ叔父は泣いた。この腕に抱く赤ん坊の暖かさに、目の前の命が生きていることに感謝した。それから甥の池江と池江とずっと一緒にいた元気で面倒みの良い少年のことを、まるで自分の息子のように可愛がった。

 しかし、所詮しょせん自分の息子のよう、というだけで自分の息子ではない子供達は、家で自分を迎えることも、迎えてあげることもない。もう一生無いと思っていたのだ。

 叔父の目から涙が零れた。


「この歳になると涙脆くてかなわんなぁ……」


 大切な人を亡くしても、その人を想う気持ちは消えない。だから何年、何十年経とうともこうして大切な人を想って泣く日がある。


「奥さんと子供は幸せだね」

「だといいがな……。あっくんは、幸せか?」

「うーん、ちょっと複雑かな。嬉しいやら腹立つやら」


 それを聞いた叔父はさっきまでの雰囲気を打ち消すように声を上げて笑い、再び@の頭を先程より強めに撫でる。


「あっくんは翔が大好きだな……。そんなに心配だったか?」 

「……夏は、唯一此処に来れるから……それに、今年は最後の夏だから」

「なかなか話し掛ける勇気がなくて、こんなに遅くなっちゃった」


 眉を八の字にして笑う@の頭から手を離し抱きしめる。本来あるはずの温もりがないのが、寂しい。


「無理はすんなよ」

「うん。……あのね、俺、夏好きなんだ。翔ちゃんと別れたのもこの季節だけどね、出会ったのも夏なんだよ」


 先に産まれた俺は後から産まれてくる翔ちゃんを早く早くって待っていたんだ。だから今度は、ゆっくり待つんだ。と@は泣きながら笑って、叔父の背をギュッと握った。


「本当に、お前らは……二人とも困った馬鹿息子だよ」


 駄目な子供を叱るような、呆れたような声色で発されたその言葉に@はくすぐったくなって嬉しそうに笑った。

 


 祭りの日当日。

 浴衣姿の@に連れられ、池江は叔父の家で叔父のお古の浴衣を着付けてもらっていた。池江は遠慮したが、二人に押し切られ渋々といった感じだが大人しく着付けられている。

 濃紺の生地に薄い青のストライプ柄の浴衣は池江に合っていた。


「似合うな!」


 池江を着付け終わった叔父は@に池江の隣へ並ぶように言い、叔父の自慢のカメラで写真を撮る。

 買いたいものがあったらこれで買いなさいとお小遣いの入った首にかける紐のついたがま口財布を池江には定番のカエルを、@にはカタツムリのものをそれぞれに渡した。 


「わざわざ買ったの……?」

「夏っていったらカエルとカタツムリだろ?」


 叔父の間違ってはいないようなそうではないような主張は、少し緊張していた池江の肩に入っていた力を抜いた。

 日が暮れるより前、屋台の骨組みを運び組み立てる作業が始まる。

 注意事項などを聞かされ、それぞれが自分の持ち場につく。ボラ部は点呼と誰がどこを手伝うのかの確認のため集められた。

 池江は謝ろうにもどうもタイミングが合わず、中々伝えられずにいた。

 清水は今回のボランティアには参加しておらず、代わりに点呼している風見に高田が耳元で話しかけると風見が池江、@、森川はその場に残るようにと言うと、他の人たちはぞろぞろと自分の持ち場に移動していった。


 @に背を押され、池江は三人の元へ足を動かした。喉が渇くのは暑さのせいなんかではない。自分から拒絶しておいていざ自分が拒絶されるかもしれないと思うと、どうしても緊張してしまうのだ。ここまで自分勝手な自分が、池江は心底嫌だった。それでも、そうするしか他に分からないから。今はそうしなければきっとずっといつまでも後悔すると思うから。


「ごめん」


 目の前に来た池江がいきなり頭を下げたことに呆気にとられ、森川と風見はすぐに反応出来なかった。


「色々、酷いことばかり言った。ごめん。」


 浴衣を握り込む池江の震えた手が、池江の緊張を伝える。森川と顔を見合わせた風見は@を確認してから、池江の肩に手を置いた。


「もう気にしてないよ。池江」


 少ししてから池江が、おずおずと頭を上げた。その姿がまるで叱られた子どもみたいに見えて思わず風見は笑ってしまった。


「俺も池江のこと煽っちゃったし、ごめんな」


 森川の言葉に池江はパチリと目を瞬かせその時の事を思い出したのか、眉を八の字にして下手くそな笑みを浮かべた。


 

「いやぁ、いい感じじゃん。ね!あっくん!……あっくん?」

「えっ?あ、そうだね、うん」


 すぐ側で三人を見ていた高田は仲直り出来たのを見て嬉しそうに隣にいた@へ視線を向けると、ぼうっとしたような様子の@が取って付けたような返事をした。

 その様子を見かねた高田は、@の手を掴んで三人の元へと合流するべく、駆け出した。

 手分けして屋台の手伝いをした後は、手伝いのお礼と言われもらった焼そばやたこ焼きなどを持って、人の少ない場所でそれらを分けて食べる。


「なぁんかこうしてるとピクニックみたいだよねぇ」


 もちゃもちゃと、たこ焼きを食べながら、そう言った高田の愚痴にはソースが付いていた。無言で池江がティッシュを渡すと、お礼を言って口周りを拭う。


「それならキャンプとかしたいな!」


 高田の話に乗るように風見が軽くそう言うと、珍しく森川から賛同の声が上がった。


「しよっか。キャンプ。」

「えっ!?まーくん乗り気じゃん!」

「森川って清水先輩にしか賛成しないんだと思ってた……」


 トントン拍子で話が進んでいくのを、@はニコニコと眺めながら小さな声で池江に話しかけた。


「楽しくていいね、こういうの」

「……そう、だな」


 風見と池江のバイト先は外装の塗り替えで十四日から二週間は休みのため、キャンプは高田の都合に合わせ、お盆明けした次の週の月、火となった。話に参加していなかった池江と@も当たり前のようにそこの人数に含まれていた。

 


 二日間の祭りが無事終わり皆と別れ、街灯の少ない道を歩く。

 叔父の家で着替え、池江が自宅の玄関を開けると女物の靴が揃えて置いてあった。


「おかえり」

「ただいま……姉さん」


 その靴の持ち主は上京した池江の姉、はるのものだった。


「帰ってくるとは、思わなかった……」

「実家よ?お盆は過ぎてしまったけど、顔くらい出すわ」


 居間のテレビの前に座る姉の存在に池江は動揺していた。


「今まで、夏は帰らなかったくせに」


 そうだ、この姉は盆の時期も弟の誕生日にもメッセージは送れど決して帰ってくることはなく、顔を合わせるのは年末の数日だ。その間も池江と言葉を交わすことは少なかった。


「最近、良いことでもあった?」

「……なんで?」

「なんとなく」


 昔は仲が良かったはずなのにいつの間にか姉弟は、どことなくぎこちなくなっていた。いや、【いつの間にか】ではない。あの日、あの事件があった時からだ。

 あの時から池江は姉のことが苦手で、後ろめたくなったのだ。

 池江は姉から目線を逸らした。すぐにでもこの場から離れたかった。


「手洗いうがいはしないとダメよ?」


 その声に、階段の一番目に乗りかかった左足を下ろし、洗面所へ向かう。その時の足音は少し荒かった。手洗いついでに顔を洗う。顔を滴る水を拭こうと顔をあげると姉がタオルを持って隣に立っていた。


「なんだか昔みたいね」


 そうニッコリ笑った姉に、なんだか責められている気持ちになり、池江はタオルを受け取りお礼を言うと今度こそ足早に自室へ向かうと音を立てて扉を閉めた。




 姉の帰郷という予想もしていなかった出来事があり、姉と会話したことで池江に何か思うところがあったのかぼうっとしているうちにキャンプの日になっていた。

 車は高田が出してくれるということで、キャンプ地の森川の別荘のある目的地へと何故か風見の道案内で所々寄り道をしながら向かった。


 着いたところは周りは自然に囲まれているがテントを張ったり、焚き火が出来るよう整地されたキャンプ場のような広場があり、少し離れたところに木で出来たバンガローのような建物があった。少し離れたところには小さい川が流れているのが来る道すがら見えた。

 期待以上の場所に高田と風見は大はしゃぎで辺りを散策に行ってしまった。


「ちょっとだけ!すぐ戻るから!」


 残された三人はバンガローの鍵を開けて、焚き火のための薪や調理道具などを運んだり、車からテントを出したりとキャンプの用意を進めた。テントだけは張り方を知る人がいなかったので高田たちが散策から帰ってきたらやらせることにした。

 散策から帰ってきた二人は張り切って二つのテントを張り、更にはハンモックまで作っていた。


 それからバンガローの中を見させてもらったり、わざわざ豆から挽いたコーヒーを入れてまったりしたり、夕飯のカレーの準備をしていたらすっかり辺りは暗くなってきていた。ランタンをいくつかつけて少しの明かりの中で揺らめく焚き火を見ながらのカレーはなんだか美味く感じた。


「ずっと、続いてほしいくらい楽しいね」


 今日はいつもより大人しかった@が食後のアイスを食べながら呟いた。


「だな!でもずっとだと他のこと出来ないしなー。海に釣りにも行きたいし、プールも行けるだけ行っときたいし、夏ってなんでこんなやりたいこと沢山あるんだろうなぁ」

「やらなきゃいけないこともあるしねぇ?課題、終わったの?」

「え、や、やってるよぉ?うん。ちょっとあの、筆が乗らないだけでさ?ね?」


 森川に笑われ高田がしどろもどろに答えながら風見と池江に目線で助けを求める。


「俺は終わった」

「俺もあと少しかなぁ」


 無残にも助け舟は出されることなく、なんなら追い打ちがきてしまい項垂れた高田は二つ目のアイスを開けた。

 夜も深まり虫の声が響くのと共鳴するかのように隣のテントからのいびきや寝息が聞こえる。それとは対照的に池江と森川の二人しかいないこちらのテントは静かだった。

 池江は中々寝付けずに目を閉じていると、先日の姉との会話を思い出した。





「なんだか昔みたいね」


 そうニッコリ笑った姉に、なんだか責められている気持ちになり、池江はタオルを受け取りお礼を言うと今度こそ足早に自室へ向かうと音を立てて扉を閉めた。

 

 その背中を姉は静かに見つめ小さくため息をついた。

 それは決して、池江を責めるようなものではなく、仕方ないなというような少し呆れた優しいため息だった。

 暫くして、池江の部屋にノックの音が響く。返事も待たずに姉が入ってきた。

 着替えもせずにベッドに横になり壁を向く形で背を向けた池江の近くに椅子を持ってきて座ると、姉は静かに話し始めた。


 それは日常の些細なことだった。

 実家とは違って家事を自分でする大変さ、都会の物価の高さ、生意気だけど素直な教え子たちが可愛いこと、夏休みでも学校の先生は働かなきゃダメなことへの愚痴、池江が聞いているかどうかは関係なく指折り数えて右手を閉じ終わると、一際優しい声で言った言葉に池江は思わず姉の顔を見た。


「結婚しようと思うの」


 あのいつもの勝気な雰囲気を何処へやったのか、初めて見るような照れた顔で笑った姉を目撃してしまった池江は呆然と口を開けて凝視した。


「まだ先のことだけどね。籍だけは先に入れるつもりだから、年末くらいにその挨拶に来るわ」

「なんで」


 やっとのことで口から出た言葉はどこか咎めるような声色をしていた。姉が池江を見るとなんだか迷子になって不安になったように顔を歪ませていた。そんな池江を姉は仕方がないなとお姉ちゃんぶるように笑った。


「私の中で彼が一番になったから。他のだれよりも」


 どうして姉は前を向けたのに、自分はいつまでもあの頃のままなのに。

 そう思ってしまった自分にとてつもない嫌悪感を抱いた。姉の幸せを素直に喜べず、祝いの言葉すらかけることが出来ない。


「翔は昔から私より繊細よね。そのくせ自分の事にも他人の事にも敏感で、どうすれば傷つかないのか考えすぎってくらい考える」


 今度は姉が池江を咎めるような視線を送った。それに気付いた池江は無意識に布団を固く握った。頭の中を爆音の警告音が流れているようにじくじくと痛み、血管を流れる血液のどくどくとした感覚が、次に姉から紡がれる言葉を警戒していた。


「本当は全部分かっているのに、分かってないふりをするくらいに。変わらないなんて無理よ。時は進むし、人は成長する。過去は思い出になるの」

「……なんで、いまさら。ずっと放っておいてくれれば良かったのに」

「本当は、もっと早くに言わなきゃ駄目だったのは分かってる。でも、啓に似た人とばっかり付き合ってた私が翔に何か言っても聞いてくれないでしょう?」

「自分が吹っ切れたから俺もってこと?」


 意地の悪い言葉を発したとは思っていても池江の口は止まらない。起き上がって、椅子に座る姉を見下ろして眉間に皺を寄せ、激情に身を任せてしまう。


「姉さんには関係ないだろ!ずっと見ないふりしてきたんだから、これからもそうしてろよ!勝手に俺にまで価値観を押し付けるなよ、姉さんの言ってることなんか分かんないよ……!」


 駄々っ子のように力の限り叫ぶ池江の握りしめた手を姉が優しく手に取り解く。手が触れた瞬間ビクリと肩を揺らすが、池江は姉の手を振り払うことが出来なかった。


「昔だったら泣いてたのにね。嫌なことがあれば泣いて、辛いことがあれば泣いて、そしていつも翔が泣いてると啓がすぐにとんで来て泣き止ませるまでがセットでさ。……泣き止ませてくれる人がいないから、いなくなってしまったから貴方は泣かなくなったのね」


 

 ある過去を受け入れたくなくてずっと見ないふりを続けてきた。それが一番その過去を実感することだと分かってしまったのに、今更止めるとこなど出来なかった。今流れているこの涙はなんの涙なのか池江は分からなかった。姉に対する怒りなのか悔しさなのか悲しみなのか。


「分からないよ……」


 それを受け入れる勇気はなくて、ずっと見ないふりをしていたらいつの間にか見ることが出来なくなっていた。


「そう、そうね……。でも翔、きっと今なのよ。翔は会わなかった半年の間に変わったわ。何が原因かは分からないけど、とても良くなった。だから、後は貴方が前を向くための覚悟を決めるだけ」

 



「覚悟ってなんだよ……」


 薄い毛布を頭まで被り身体を丸めて呟いた。その呟きを森川は池江に背を向けて聞いていた。

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