それは奇妙な扉
ここは名古屋にある庄内通。
場所は名古屋駅から東山線に乗り、伏見駅で乗り換えた後、鶴舞線の庄内通駅で降りると到着するごく普通の街である。
ここで、とある少年は平凡な生活を送っていた。
少年の名は伊藤恭介17才、中肉中背で勉強はやや苦手、アニメや漫画が大好きな一般的な男である。
家族構成は母と弟の三人暮らし。父はとある理由で
別れたらしい。詳細は不明。
そんな彼は母からのお使いを頼まれ、今まさに買い物に向かう真っ最中であった。
「今日はカレー作るから材料買ってきて。」
「えぇ、嫌だ」
「じゃあ今日の晩ご飯はなしね。お母さんも忙しいからしばらくしたら仕事行っちゃうよ」
という会話を経て、お使い中なのである。
「また、お使いか…自分で買いに行けばいいじゃん」
母からのお使いに愚痴をこぼしつつ、近所のマヨナカというスーパーで買い物を終え、外へ出たところ、それは起こった。
普段なら人の往来が多いはずの道だが今日に限っては、人どころか車すら通らない。
持っているスマホの時計を見ると午後6時10分くらい。
普段ならちょうど夕方から夜にかけた明るさのはずが今日に限っては紫の霧がかった夜中のような夜、いや、夜というより夜中のような暗さであった。
「やな天気だな、はやく帰ってカレー食べよ」
と、構わず小道に向かって進んでいく。
相変わらず人っ子ひとりいないまままっすぐ進んでいくとふと目の前に不思議な扉があった。
それは、さながら西洋の立派なお屋敷にあるような、はたまたよく遊ぶRPGのお城のような、あるいはアニメで見るような魔法の扉のような不思議な雰囲気を醸し出した大きな扉が小道の先にあった。