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あたたかい季節

作者: 伊田天
掲載日:2018/03/12

あたたかい季節


ハラリ、と舞い降りて来た落ち葉の感触で眼が覚める。それとともに、むせ返るような金木犀の香りが鼻についた。

少し尖ったような風が通り抜け、僕は、心なしか体を震わせた。

年を重ねるにつれ、この季節はこんなにも寒かっただろうかと、ふと、思うことが多くなった。

大分年も取ったし、そう感じるのは当たり前なのかもしれないなと思う。

この辺りの樹々の葉はほとんど落ちてしまって、残っているのは、僕がいる、ここの木くらいになった。

楽しそうな笑い声をあげながら、子どもたちが落ち葉を踏みしめたり、舞い上げたりして遊んでいる。

赤や、黄、焦茶の色が、僕の前でひらひらと踊っている。

なんとなく優しい気持ちになって、僕は目を細めた。柔らかな日差しが、木漏れ日となって降り注ぐ。

僕は、ごろごろと喉を鳴らしながら、空を仰いだ。

雲ひとつない、絵のキャンバスのような、大きな青空がそこには広がっていた。

飛行機は控えめな音を立てながら、僕と子どもたちの間に、白い直線を描く。

飛行機雲は、まるで何かを確信している、真理のように、そこに真っ直ぐのまま留まった。

明日は雨が降るのかな。

長く生きて来て経験的に、飛行機雲が残る日の翌日は、必ずと言っていいほど雨が降った。

秋雨は冷たい。また気温が下がるのだろうか。

そんなことをぼんやりと考えていると、まぶたがすぅと重くなり、僕はまた夢の世界へと戻って行った。


僕が目を覚ましたときには、もう陽が傾き始め、夜がそこまで迫っていた。

子どもたちは家に帰ってしまったようだ。

辺りは静寂で包まれ、金木犀の香りだけが、そこに強い存在感を残している。

飛行機雲はまだ薄く残っていて、線のこちら側に薄く雲が広がりつつあった。

寒いなぁ、僕は、また、そう思う。

夜だからかなぁ、けど、まぁいいか、なんだかすごく眠たいし。


けれど、もし贅沢を言うのならば、何か温かいものが欲しい。

その何かは何なのだろう。


ざわりと風が吹き、地面に黒い点が、ひとつ、ひとつと増えてくる。

あぁ、雨が降り始めたのだ。

秋雨は優しく、けれど、冷たく降り注ぐ。

始めは小さな点だった黒が辺りを染めていく。

その様子を眺めながら、何かが僕の頭に引っかかった。

微かな違和感。

周りをぐるりと見渡して、その答えに気付く。

・・・そうか、雨が降っているのに自分は濡れていないからだ。

落ちなかった葉が、雨を、僕から遮ってくれているのだ。

僕は、長年の相棒を仰ぎ見た。


なんだよ、水臭いな。言ってくれよ。


僕は、もう、あたたかくって、嬉しくって、満足してしまって、幸せで。

そして、深い深い眠りについた。


最期に、落ち葉がそっと僕の上に降り注ぎ、確かに、おやすみ、という声を聞いた気がした。


もう、寒いなんて感じなかった。

こんにちは。

初めて作品を投稿させていただきました、伊田天と申します。

みなさんが読まれた後に、少し優しい気持ちになれるような、そんな作品を書いていきたいと思います。

どうぞよろしくお願い致します。

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