8 初めてのデート
俺たちは食事を終えたあと、これからどうするかということについて、二人で話し合った。
「現状、琴音さんと付き合うのは無理ね。」
妹にはっきり言われ、また俺はへこむが、確かにその通りである。
「まあ、確かにそうだが。結衣が助けてくれるんじゃないのか。」
「現状無理ってことだよ。もっというとこの世界線ではというべきなのか。」
「どういうことだ?」
「お兄ちゃんが琴音さん付き合うには過去に戻って、もう一度成人式後のあの立食パーティをやり直すの。だって今、琴音さんは寺田って人と付き合ってるんでしょ?いまからはおにいちゃんが超絶イケメンじゃないとむりでしょ。」
たしかに寺田はいらつく奴だが外見はそこそこいい。今からでは俺に勝機はない。
「まあ確かにそうだが。つまり、どうするんだ。」
「簡単よ、過去に戻るの。」
「俺もか?」
「もちろん。正しくは過去に意識を移すって言い方が正しいのかもね。」
「さっぱりわからないぞ。Fラン大学生にもわかるように説明してくれ。」
「うーん。タイムスリップには二つの種類があるの。一つは肉体ごとタイムスリップする方法。現在私がやっている方法だね。これは大がかりで、まだ試作段階なの。タイムパラドクスの問題とかいろいろあったりするからね。で、もう一つは、意識だけ過去にタイムスリップする方法だよ。これは三年前に完成していて、私でも扱うことができる。ただし、時間が制限されていて、1度に2週間しか飛べないの。」
「なるほど、未来の技術ってすごいんだな。」
「いや、NASAがすごんだよ。現在でもモデル開発くらいは設計されてるはずだよ。もちろんまだ一般には報道されていないけどね。」
「そうなのか、まあ、話はよくわかった。タイムスリップには二つの方法があって、身体をとばす方法と、意識を飛ばす方法がある。意識を飛ばす方法は期間が限られているが、俺にも利用可能。あってるか?」
「流石お兄ちゃん!あってるよ。私はちょうど今日から1週間前にこっちに来てるから、あと1週間くらいしたらタイムスリップしよっか。それまでに、お兄ちゃんには女慣れしてもらわないとね。」
「ま、まて、具体的に何やるんだ・・・?」
「デートに決まってるじゃん」
「まてまてまて、俺にはデートに誘える相手なんていないぞ。」
「ここにいるでしょ。お兄ちゃん。」
そうほほえんだ結衣の表情は心底楽しそうだった。