4 結局、妹は兄が好き
成人式後のパーティーから地元に帰還し、石沢の実家についた。彼の家のインターフォンをおすと中から石沢の妹のあやちゃんがでてきた。
「あ、久しぶりだね。あやちゃん。」
「ひさしぶり!さとにい!え、にいに酔っぱらってるの??おかあさーん!たいへんたいへん!」
あやちゃんは身長が小さく、このガチムチの兄妹とは思えないくらいかわいい。確か、歳は俺の妹と一緒くらいで十三歳だったような。そんなことを考えているうちに、両親が家から出てき、俺にお礼を言うと、タクシーで寝ている石沢をたたき起こし、家に連れて行った。
「君はどうする。乗っていくかい?」
「いえ、僕の家は徒歩10分くらいなので大丈夫です。」
そうタクシーの運転手に告げて、俺は帰路についた。
歩いて5分くらいであったろうか。家の近くの住宅街に入ったとことでいきなり俺は声をかけられた。
「もうすぐ君の電話が鳴るよ」
夜道にいきなり現れたスーツ姿の黒髪ツインテールで20歳くらいの女性はそう俺に問いかける。
「なにいって・・・」
その時、俺の電話が鳴った。
「よう。岡崎か?寺田だよ。俺、琴音ちゃんと付き合うことになったから。一応、琴音ちゃんファンクラブ団長のお前には報告しないといけないなとおもって。じゃあな!」
調子のいい声の男に一方的に電話を切られる。中学からの初恋の相手を奪われ、俺は返事の一つもできなかった。なんとなくその雰囲気はあったが。
「ほらね。言ったでしょ。」
しばらく身動きが取れなかった俺に彼女は吐き捨てるように言う。そうだ、この女は電話がかかっていることを言い当てたぞ。
「君は一体・・・」
「わからないの?まあいいや、そんなことより大好きな琴音ちゃん奪われちゃったけどいいの?」
そんなことまで知っているのか。この人何者なのだ。
「よくないに決まっている。琴音は俺のフィアンセだぞ(自称)」
そういうと、彼女は微笑みながら
「ふうん。変わってないね。私がどうにかしてあげようか」
といった。この時の少しにやりとした表情、どこかで見たような。彼女は続ける。
「私ね。未来から来たの。あなたを助けるために。」
何を言っているのだ、こいつは。まずい、完全に頭のおかしい人だ。
「んー。まだ信じてもらえない?なら、あと5秒後にlineがくるよ?」
彼女は手に持っている形容しがたい腕時計のようなものを見ながらそう予言した。そんなばかな、とおもいつつスマホを取り出し、lineを見ると、ちょうど母からlineが届いた。
「わかった。君が未来から来たことは信じよう。でも、なんで君が俺を助ける必要があるのだ?」
そう答えると彼女はまた、見覚えのある少しにやりとした表情をしながら言った。
「そんなの家族だからに決まっているでしょ。お兄ちゃん。」