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2 初恋


俺が彼女、神元琴音に惚れたのはいつだろうか。気がついたら好きになっていた。初恋とはそういうものではないであろうか。まあ、この気持ちが恋だと気づいたのは小学校五年生の時くらいかもしれない。彼女は小学校の時から今と変わらず、ショートヘアーであった。輪郭は丸っこく、目は宝石のようにいつも輝いていて、透き通るような白い肌をしていた。性格はいかにも清楚って感じで、いつも敬語で話をしていた。別にコミュニケーションが苦手とか、そういうことでは無く、単に家が資産家なのである。いわゆる、お嬢様というやつだ。そのお嬢様は小学校、中学校ともに、女友達は多く、友達の前ではいつも楽しそうに笑顔を作って話していた。そんな彼女に好意を寄せる男子は少なからず存在したが、大抵は「俺には釣り合わない」などと、行動に起こす前に諦めていた。まあ例外が俺なのだが。彼女のことが気になり始めたのは、小学五年生の時のキャンプである。

 俺たちの小学校には代々伝わる肝試しが、キャンプでの恒例行事になっていた。男女2人ずつで森を一周してくるというものなのだが、運良く、彼女と同じ班になったのだ。

彼女は回っている途中、

「怖いです…」

と半泣きで言っていたのを鮮明に覚えている。その不安そうな顔が本当に可愛くて、俺の胸を射るものがあった。男は女の涙に弱いと言うが、まさにこのことであるのだろうか。

 そのキャンプの後から、俺は猛烈に彼女のことを意識し始めた。初恋というのは大変なもので、気がつくと彼女のことばかり考えていた。彼女に何度か気持ちを伝えようとしたが、結局勇気が出ず、そのまま時は中学校へと流れていった。中学校は三年間、彼女と別のクラスになってしまい、関わりはほとんどない状態であったが、俺の気持ちに変わりは無かった。逆に、みんなはどうやって初恋をおわらせたのであろうか、疑問に持つほどである。5年間気持ちをしまってきた俺だが、高校は彼女と別々ということで、最後くらいちゃんと気持ちを伝えようと思い、中学の卒業式に彼女に告白した。

「小学校の時から好きだった。俺と付き合ってくれ」

彼女は驚いた顔をしていた。その後、しばらく考え込んだ末、彼女はこう話した。

「私たち、いまからそれぞれ違う場所に行きますよね?さよならするべきなのに付き合うのは違うと思います。」

彼女の顔は真剣そのものであった。俺は

「しっかり俺の気持ちに応えてくれてありがとう。」

といい、その場を後にした。だが、俺の彼女への恋をその後も途切れることもなく、今に至っている。まったく、初恋というものは厄介だ。


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