1 五年ぶりの再会
「おい岡崎、起きているか」
「おう」
玄関を開けると、いかにも大柄な男が立っていた。
「はやくのれ、おまえが最後だ」
車の中を見ると、同じ中学でラグビー部の仲間であった古い友人たちがスーツを着て座っている。そう、今日は成人式なのだ。この大柄な男、石沢たくやは、かつてのチームメイトと成人式に一緒に行こうということであしになってくれるらしい。
「久しぶりだな、みんな」
車の助手席に乗り込み軽く挨拶をする。周りを見渡すと、いかにも屈強そうな男だらけだ。こいつら、軒並みでかくなりやがって。ちなみに、俺の身長は百七十センチで本人はすこしコンプレックスをかかえている。久しくあった旧友ともゆっくり話したいが、今日の俺、岡崎悟にはなさねばならぬ大事なことがあった。
「なあ、中学時代に神元 琴音って子いたよな。かわいくなってるかな」
「当たり前だ。俺の初恋の相手だぞ。美人になってるにきまっている。てか、もとから美人だし」
そう、今日は初恋の相手神元琴音と会えるのだ。
「あーおまえ、琴音ちゃんのこと好きだったな。」
後ろから元チームメイトが茶化してくるが、
「ついでに今も好きだ。俺は琴音ちゃんファンクラブ団長だぞ。」
俺がそう答えると、車の中全員から、まじかよという声が聞こえた。そう、俺は小学校からずっと神元琴音という女性に恋をしているのだ。
「まあ、琴音ちゃん相手ならわからんでもないな」
石沢がフォローするかのように言葉を発する。そのとおり、琴音ちゃんはそれほどまでに素敵な女性であったのだ。中学時代の彼女は気高く、そして上品で、そしてなによりかわいくて…
「おい、着いたぞ」
中学時代の琴音ちゃんのことを考えているうちに車は成人式会場についた。五年ぶりに見る彼女はどうなっているのか。期待に胸を膨がふくらむ。一同が駐車場から歩き、受付に歩いている途中、彼女がいきなり後ろから現れた。
「あれ?ラグビー部の人ですよね?みなさん、お久しぶり」
一同が振り向くと、そこにはショートヘアーで浴衣を着た、身長150cm程度の完全美少女といえるであろう、神元琴音が立っていた。輪郭は丸っこく、目は宝石のように輝いていて、透き通るような白い肌をしていた。誰がどう見ても可愛い。
「お、久しぶり」
石沢が返事をしながら、肘で俺を軽くたたく。ただ、完全に俺はフリーズしている。それほどまでに彼女は美しかったのだ。ようやく何かをしゃべろうとしたとき
「琴音~!早く写真撮ろうよ」
どこからか女性の声が聞こえた。
「ごめんなさい。みなさん、またあとで」
そういいながら、彼女は草履をぱたぱたと鳴らしながら、去っていった。
「やっぱかわいくなっていたな。どう思う岡崎」
「どうっすか。団長!?」
旧友どもが俺に問いかける。俺はもちろん
「最高だ。やはり彼女こそ俺のフィアンセにふさわしい。」
一同から笑いが起こる。
「なら少しは話せよ」
その通りなのだが、彼はにやりと笑いながら
「まあ焦るな。勝負は二次会だ。俺は二次会で必ず彼女を堕とす。」
「中学時代に告ってふられたおまえが、か?」
またも笑いが起こる。皆は俺の言っていることを冗談だと思っているらしい。ふん、笑っているがいいさ、もう一度言う俺は絶対に彼女を堕とす。