キラキラベタベタ恋愛のつもり
ねーふじ、余命短い青年と前世から愛してると言う電波な子のどちらかが片方に救われる話書いてー。
shindanmaker.com/151526
「ねえ、私はずっと貴方のことが好きだったのよ」
出会ってから半年のことだった。いつも通りベットの側に腰掛けて、彼女は唐突にそう言った。
「憶えてない?生まれ変わる前、私がクリスタルで貴方はエメラルドだったの」
「ごめん。何の話?」
「そう……やっぱり、そうよね」
目を伏せて、彼女ははにかんだ。
「私は魔導師で、魔力も強くて精霊にも愛されていたけれど…貴方は勇者で、魔法なんて全く使えなかったんだもの」
何を言ってるのか分からなかったが、それを嘘だと拒絶する気にもならなかった。
「僕のことが好きって言ったよね?」
「ええ、好きよ。改めて言うと、照れちゃうわね」
「君が好きなのは、僕なの?その、エメラルドって人なの?」
「どっちもよ。私も貴方と同じで生まれ変わる前の記憶が無くなっていたとしても……貴方のことを好きになってたもの。貴方の記憶が無くても……貴方がもし、他の誰かを好きになったとしても……私、貴方のことが好きだわ。貴方が幸せになってくれれば、それで良いの。だから、私、そのためなら何だってする」
美しくて強い瞳だった。彼女は本気だ。
「じゃあ、早速、お願いがあるんだ」
枕に肘をつき、重い体を何とか起こす。
「抱きしめてよ」
彼女は目を白黒させて、でも、嬉しそうに近づいてきて、僕を抱きしめた。
彼女の体温が伝わってきて、生を実感した。
僕は今、確実にここにいる。
「私がおかしな話をしてるって、笑わないのね」
「おかしな話だとは思うよ」
「嘘を言ってるとは思わないの?」
「うーん、嘘じゃないと思うな。全然ピンとは来ないけど」
この半年も、嘘をついたら彼女に全てバレてしまった。
だから、本音を包み隠さず彼女に伝える。
「でもね、嘘でもいいなって思うんだ。だって、君が僕のことを好きなのは本当なんだろう?」
「ええ、そうよ」
「だったらそれだけで十分だよ」
「ありがとう」
彼女の腕に力が入った。
「私、貴方のそういうところが好きよ」
僕も腕に力を込める。
終わりの恐怖から逃れるように。
彼女の感触を刻み付けるように。