アフタースクール
放課後
そそくさと教室を出て昇降口へ
向かう陽、洋介はともかく悠人にあえば
またサッカー部への入部を
勧められなかなか帰れなくなるだろうと
おもったからだ。
よし、もぅ大丈夫だろう。
と思った矢先に
「陽ちゃーん!(ようちゃーん)」
あきらを、ようちゃんとよぶのは
もはや一人しかいない。
「そんな馬鹿でかい声で呼ぶなよ
明音」
「え〜いいじゃん別に〜。」
真田 明音は陽と
幼馴染で以前陽をようと読み間違い
以後ようちゃんと呼ぶようになった。
「陽ちゃん部活はー??」
「俺ははいらない。」
「えー!なんで!もったいない…。」
「とりあえず、そういうことだから。」
既に体操服を着ていた明音は
聞くまでもなく、サッカー部の
マネージャーにでもなったのだろう。
「もしかして、まだ中学でのこと
きにしてんのー??」
「……。」
「もし、そうなら気にすることないよ。実力のある人が評価されて何が悪い!」
明音は正しいと思うことは貫き通す。
陽にとっては見習うべき存在なのかも
しれない。
「それは一般論。それでも気にくわない
奴らはいるんだよ。」
「でも、見てる人は見てるよ?
私も洋介も、悠人だって!」
「…ありがとな。でもいいんだよ。」
そう言って陽はその場を離れた。
「私はいつも陽ちゃんを見てるよ…。」
そんな明音の想いもいまはまだ
陽には届かなかった。
陽は家に帰るなり、荷物を片付け
夕食をとり、風呂に入ってと
淡々とやるべきことをこなした。
5年前飛行機事故で陽は両親を
失っていた。世界中を飛び回り、
NGOとしてたくさんの人を
助けていた両親を陽は誇りに思っていた。
その頃から、ずっとお世話になっている
祖父と祖母には本当に感謝し、高校では
できるだけ迷惑をかけまいと過ごすことをきめていた。そんなことも
陽がサッカーから遠ざかった理由の
一つだった。