表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女のお世話  作者: リクルート
8/17

美鈴、高校へ

 学校はそんなに遠くはない。商店街を通り抜けたらすぐそこになる。

 学校に着き、靴を履き替える。美鈴(みすず)は上靴なんて持っていないので、来客用スリッパ我慢してもらおう。そして、職員室に向かった。近づくにつれて足が重くなっていく。何度も職員室に呼び出しを食らっていて、しかも昨日も授業をさぼっているのでかなり入りずらい。だが、美鈴をここまで連れてきて今更百戸rこともできないし、何より少女の前で不安な顔などできるはずがない。

 俺は堂々と職員室に入った。担任を探していると、後ろから声をかけられた。

河原(かわはら)。お前またなんかやったのか」

 昨日のことはお咎めなしらしい。

 声の方を見ると担任が立っていた。

「ちょうどよかった。今日一日でいいから、妹をこの学校に置いてやってくれないか」

 そう言ったが彼は何か難しい顔をしていた。

「いや、妹って。お前にいるわけ...」言葉を止めた彼の視線の先には俺のズボンを握っていた美鈴である。

「...わかった。他の教師には俺から言っとくから。それより問題起こすなよ」

 そう言って彼は自分の席に戻った。なんだかんだ言いながら俺のことを気にかけてくれている担任だと思う。俺の気のせいかもしれないが。

「美鈴、いて良いってよ。教室に行こう」

 少女の視線に合わせて少し(かが)んだ。少女はこくりと頷く。俺はそれから立ち上がって少女の手を引いて教室へと向かった。


 教室のドアを開けると(いつき)が俺を見つけて手を振った。さらに美鈴にも笑って手を振ったが、少女は緊張しているのかぎこちなく手を振るだけだった。ちなみに俺の席は一番窓側の後ろで、その前の席に樹が座っている。。それはそこに向かい、美鈴の席を作るために教室に一つは常備されているパイプ椅子を持ってきてそこに美鈴を座らせることにした。しかし、少女はその席にはつかず、俺の前に来た。

「だっこして」両手を俺の方に伸ばして言った。

 仕方ないか。初めての場所になるのだから不安なのだろう。そう思いつつ俺は少女を抱き上げて膝の上に乗せた。

「唯斗。おはよう。美鈴ちゃんもおはよう」

「いつき、おはよう」声は小さいがしっかりと挨拶している。

 俺は軽く手を挙げるだけだ。

「美鈴ちゃん、連れてきたんだ。まぁ、仕方ないか。家に留守番できる年じゃないしな」

「そう思ったからさっき職員室に行ってきたんだ」

「それは、一大事だな。職員室にとっては」

 そんな感じではなかったが。というか、俺は喧嘩とか薬物とかやってるわけじゃない。授業をさぼりまくっているだけだ。怖がられるようなことはしていない。

「それはそうと、樹。今日バイトなんだが、美鈴の面倒見てくれないか。家に一人は寂しいだろうし、俺も心配なんだ」

「悪い。今日は勤務が早くなってて、唯斗と時間が被ってるんだよ。だから、悪いけど面倒は見られない」彼は申し訳なさそうだった。

「そうか。バイトなら仕方ないか」

 どうするべきか。心当たりがなくはないが最終手段として取っておきたい。

(あかね)ならやってくれるだろ。頼んでみたら?」

「んー、それは最終手段だ。頼み事したらお返ししろって言うからな」

「私が卑しい奴みたいなこと言ってるじゃない。私ってそんなキャラなのかしらぁ? 唯斗くーん」

 後ろから何やらすごい気配を感じる。怒気にも似た、何か悪いものなんだろう。

「というかあんた。隠し子はさすがにまずいんじゃないの」彼女は俺の隣まで来た。

「隠し子じゃねぇ。妹だよ」

「妹ねぇ。あんたって兄って感じしないのに」

「そうかよ。勝手に言ってろ」

「ゆーとおにいちゃんはかっこいいもん。みすずのおにいちゃんだもん」腕の中にいた美鈴がいきなり声を上げた。

「あ、ごめん、なさい」彼女は少し困った顔をしていた。

「美鈴。今のはちょっとした冗談だよ。本気でそうは思ってない」

「ほんと? おねえちゃん?」美鈴はその人の顔を見つめる。

「当たり前じゃない。唯斗とは仲良しなんだから」言葉を砕いて言ったつもりなのだろうが、なんか変な感じになっていた。

「自己紹介するわね。私は串間(くしま)(あかね)。名前で呼んでね」茜は美鈴と同じ視線に立ってそういった。

「みすずの名前はね、美鈴言うの」

「そうなんだ。美鈴ちゃんは自己紹介できて偉いねー」少女の頭を優しくなでている。

 美鈴はとても嬉しそうにしている。

「あ、あね、おねえちゃん?」確認しているのだろう。しかし、わかっているところだけをつなぐと姉姉になってしまっていた。

「あ、か、ね。あかねだよ、美鈴ちゃん」やっぱり子守は女子の方がいいよなぁ。なんというか、子供のことをちゃんとわかっている感じがする。

「あかね、おねえちゃん。あかねおねえちゃん」彼女の目を見て確認していた。

「そうよ。よく言えたわねー! 偉いわ!」さらに頭をなでている。

「俺だけなんで樹って呼び捨てなんだろうか」なんか呟きが聞こえた気がしたが無視。

「それでなんか私に頼み事するの?」

「あー、それがな――――」

 これまでのいきさつを話した。

「そうね、予定はないから大丈夫よ。美鈴ちゃんの面倒見てればいいのよね」

「ああ。遊んでやったり、お菓子食べ過ぎないようにしたり、外でないようにしたりな。頼むな」

「わかったわ。じゃ、帰るときは一緒ね」

 そこまで相談すると担任が入ってきた。美鈴、初の高校生活の始まりだ。

現実だと高校に妹や弟って連れてこれるのでしょうか?


続く!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ