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少女のお世話  作者: リクルート
2/17

カレーハンバーグ

カレーハンバーグっ!

 食料品店を過ぎれば、俺の家はすぐそこだ。家といっても一軒家ではなくアパートのようなもので家賃は安いが、見た目は古い。ただ管理人さんがしっかりと管理していて部屋はその外見程古くはない。俺はその管理人さんの姿勢を尊敬して、部屋はいつも掃除して、汚くならなように気を付けている。歩いているうちに俺の住むアパートが見えてきた。

「おにいちゃん、あれ」少女が俺の住むアパートを指さして言う。

「ん、どうした。あれは俺の住んでいる所だぞ」

「そうなんだ。やっとご飯食べれるよー」少女はとても嬉しそうにしている。

 なぜ俺の住むアパートを指したのかと思ったが、周りの建物のより古いから目立ったのだ。

 少女は昼食のことで頭がいっぱいのようでご飯ご飯と歌っている。その歌を聴いていると俺まで腹が減ってくる。突然ぐー、と少女の腹が鳴った。

「おなか減ってるからしょうがないよね」少女は照れていた。

「そうだな。俺も腹減ってるし、少し急ぐか」

 そう少女に言ってアパートの自分の部屋へと急いだ。そうすると少女は楽しそうに笑っていた。

 アパートに着いて自室の鍵を開け、中に入る。抱いていた少女を降ろすと部屋の中に走っていった。仕切りや段差はない部屋なので転ぶことはないだろう。少女に勝手に外に出るなと言っておいてから昼食の準備に取り掛かる。カレーに使う食材やハンバーグの材料を切って、料理を進める。そして、カレーの香りが漂い始めたころ、隣に少女が寄ってきていた。

「どうした。何か用か」カレーの入った鍋を混ぜながら言った。

「早くできないかなぁって。んー、おにいちゃん着替えないの」少女は俺の顔を不思議そうに見ていた。

 俺は寝るとき以外は制服を少し着崩して生活している。だから、俺は何の違和感もなかったが少女にはあったらしい。確かに制服は学校でしか着ないというイメージはあるだろう。

「ああ、俺はいつもこの格好だからな。ご飯はあと少しでできるから待ってろ」

 焼いていたハンバーグが焦げ目がついてとてもうまそうに見える。焼けた肉の良い香りが広がっていた。俺と少女の腹が同時に鳴る。その音で笑っているうちにカレーのほうも出来上がってきている。そこであることに気が付いた。カレーハンバーグの盛り合わせの仕方がわからないということだ。もし、相手が大人なら適当でいいかもしれない。しかし、子どもはそうはいかないと思う。知っている盛り付け方以外は同じ料理とは認めないかもしれない。

「なぁ、カレーハンバーグってカレーの上にハンバーグか。それとも逆か」隣にいる少女に訊く。

「ええっと、ご飯の上にハンバーグだよ」

「それってカレーの下にハンバーグってことか」

「だから、ご飯の上にハンバーグだってば。白いご飯の上にハンバーグだよ」怒られてしまった。

 とりあえず、白米の上にハンバーグということはわかった。しかし、カレーはどこにかければいいのだろう。......あ、もしかしてカレーとハンバーグは別なのか。白米の右側にハンバーグで逆側にはカレー。よしやってみよう。

「どうだ。これでいいか」笑顔で少女に見せてやった。

「うん! ありがとう、おにいちゃん」少女は嬉しそうにそういった。

 よかった。少女も喜んでくれたし、うまく言ってよかったぁ。

 全く授業も受けずになんで子守なんてやっているんだか。自分のことながら少し笑える。

そう思いながら自分の分も盛り付ける。しかし、まだテーブルを出していなかった。たいして広い部屋ではないので、寝るときは一回一回除けなければいけないのだ。朝食は取っていないので、テーブルは昨日の夜に除けたままになっている。それを出そうとすると少女が手伝ってくれようとして、隣に来たのだがこれは重いので万が一のことを考えて安全なところに移動させた。思えばこの少女はかなり素直だと思う。子供は言うことを聞かないというイメージがあったので少し以外に感じる。テーブルを置き終わるとそこに今作ったカレーハンバーグを少女の分と自分の分を並べる。少女は席に着き、俺はスプーンを出す。もちろん、少女のは小さいスプーンを出した。それを少女に渡す。これで食べる準備は整った。

「いただきます」少女は行儀よく元気に挨拶していた。

 俺は無言で食べ始めると少女がこっちを見て頬を膨らませていた。

「どうしたんだ。同じ食べ物だぞ」

「いただきますって言ってない」少女は怒ったような声を出した。

「あぁ、いただきます」

 そういうと少女は嬉しそうに食べ始めた。それを見て俺も嬉しくなっていた。

「そういえば俺の名前、まだ言ってなかったよな。俺は―――――」

「おにいちゃん」少女は俺の言葉を遮って言った。

「いや、お兄ちゃんは名前じゃないから。俺は河原(かわはら)唯斗(ゆいと)っていうんだ」

「ゆーとおにいちゃん」首を傾けて訊いてくる。

「ゆ・い・と。ゆいと、だ。お前の名前は?」

「ゆいと、ゆいとおにいちゃん」少女は確認するように言い、続けた。

「みすずの名前は美鈴(みすず)っていうんだよ」笑顔でそういった。

「美鈴か。よし、分かった。次から美鈴って呼ぶからちゃんと返事しろよ」

 そういうと美鈴はこくりと頷いた。

 誰かと家で食事したのはいつ以来だろうか。小さな子供でも楽しく感じる。いや、子供だからかもしれない。そうして話ながら笑いながら、食事を済ませた。

カレーハンバーグって子供の大好きなものの塊だと思います。


まだまだ続くよ!

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