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少女のお世話  作者: リクルート
13/17

授業 参

 教室に戻ってくると、チャイムが鳴って昼休みは終わりを告げた。次の授業は現代国語。美鈴は朝と同じように机に頬をくっつけて眠っている。俺は少女を膝に乗せたまま、教科書に載っている物語を眺めていた。その間に授業は進み、気づけばチャイムが鳴っていた。


 五時間目の始まる前には美鈴は起きなかったので、俺と茜、樹で話しているうちに五時間目の授業の開始を知らせるチャイムが鳴った。その時間が歴史だ。また教科書を取り出して、適当に眺める。その途中で、膝の上で寝ていた少女が目を覚ましたらしく、ゆっくりを体を起こしていた。少女は寝ぼけているのか、きょろきょろとして、俺が今読んでいた教科書をじっと見つめ始めた。何か気になるのかと思って、俺は手に持っていたそれを机の上に置いた。少女はそれを一枚、一枚、ページを繰っていく。その中で少女はその手を止めて急に声を抑えるようにして笑い出した。声を抑えているのは少女なりの気遣いなのかもしれない。耐え切れなくなった時は大笑いするかもしれないが。

「美鈴、何か面白いものがあったのか」

 少女はある写真を指さしていた。その場所にはフランシスコ・ザビエルが描かれた絵が載っていた。

 この人は確かキリスト教を日本に伝えたとされる人だ。確かに改めてみると面白いのかもしれないが、見慣れているせいか、笑いは起きなかった。少女は笑いながらも、ページを繰る。ところどころにある昔の人の写真に少女は小さな声で笑っていた。それから、そうしているうちに昔の人が食べていた料理の写真があるページを開いた。少女はその写真を指してこう言った。

「昨日の晩ご飯に似てるね、これ」

 その写真には白米、味噌汁に焼き魚、それと何かの野菜のお浸しのようなものが載っていた。この写真を見ると質素な風ではあるが、確かに昨日作った料理は色合い的にこう見えるだろう。しかし。昨日、少女はハンバーグを食べているので、不満を言っているわけではないのだろう。それは少女の楽しそうな笑顔からもわかることだ。

 少女はそうして教科書を眺めていた。その様子を見ていると、チャイムが鳴った。

 それを合図にしたかのように少女は教科書を閉じた。おれはそれを机の中にしまった。

「おといれ、どこ」少女は急に俺の膝から降りて、茜にそういった。

 彼女はそれを聞いて、俺を見てから、美鈴をトイレに連れて行ってくれた。

「なぁ、美鈴ちゃん、何に笑っていたんだ」樹が訊いてきた。前の席だったので気になったのかもしれない。

 俺はそれに教科書に載っている写真だと答えると彼は、そうかとだけ言って黙った。特に話したことはないのだろう。

 しばらくすると茜と美鈴は帰ってきた。少女は茜と樹に授業で見ていた写真について話していた。それから次の授業が始まるまで、そのことを話していた。

 六時間目だ。この時間は英語。俺は英語はそこそこできると思っているので、俺は現代文の教科書を呼んでいた。俺は本を読むのが嫌いではない。小、中学校の時はよく本を読んでいた。高校生になってからは本屋にもいかなくなったので、最近は本を読んでいる時間は少ない。俺がその教科書を読んでいる間、俺の膝の上にいる少女は樹にペンを、茜にルーズリーフを借りて、何やら書き込んでいた。俺は教科書を読んでいる途中で何度か少女のしていることを見た。どうやらそれは黒板を書き写しているらしい。英語に読めなくもないが文字というよりも、絵に近いだろう。それにそれの外側には何かの絵が描かれていた。何かの落書きのようだ。それを授業中に何度か俺に自慢げに見せてきていた。それを笑顔で見返しながら、教科書を読んでいた。そうしている間に六時間目の授業は終わった。

 授業が終わると、美鈴は少女自身が書いたそのノートを茜、樹に見せていた。

「偉いわねぇ、どこかの誰かさんとは大違いね」そう言いながら、茜は少女の頭を撫でていた。

 彼女の視線が俺を攻撃していた。まぁ、そうされても俺はノートを取ったりはしない。

 少女はそのノートの落書きを茜の膝で説明していた。俺と樹はそれを眺めながら、たまに会話をはさみつつ、時間をつぶしていた。そういている間に、チャイムが鳴った。

 七時間目。それは学校によってあったりなかったりする時間。この学校ではあったりする。この時間は生物だ。この教科の教師は眠気を誘うような話し方をする教師が担当している。まじめな奴は寝たりしないのだろうが、俺はあいにくとまじめではない。ここまで言えば、俺がどうしていたのかわかるだろう。


 結論から言うと俺は寝ていた。多分、七時間目が始まってすぐに寝ていたのだと思う。

「おーい。起きろよ」

「早く起きなさいよ。授業は終わったわ」

 声が耳に入ってくるがその意味が分からない。音だけが頭に残る。頭が揺れる。頭がくらくらとし始めた時俺は目をゆっくりと開いた。

「やっと起きた。全くなんで私が起こさなくちゃいけないの」

 顔を上げた目の前には女性の顔があった。それは茜の顔だ。意識が覚醒し始め、俺は状況を理解していた。

「おにいちゃん、ねすぎー」茜の隣には美鈴が立っていた。少女は頬を膨らませて怒っていた。

「あ、ああ、悪い」

 俺が眠っている間、少女は何をしていたのだろうか。気になって、樹に訊いたところ、少女は樹の電子辞書をいじっていたらしい。その中でも六時間目の英語が気になっていたのか、英語の発音を聞いていたらしい。音が出るので、彼がイヤホンを貸してくれていたと言っていた。その話を聞いているうちに、ホームルームの為に、担任が入ってきた。

寒くなってきて、キーボードが打ちづらくなってきました。あー、大変。パソコンが動かなくなることはなさそうですが、そうなるほど、寒くならないことを望みます。


 続く。

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