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少女のお世話  作者: リクルート
12/17

昼休み

昼休み!

 午前の授業を終えて、昼休み。弁当は作ってきていないので、購買までパンを買いに行ってきて、戻ってきた。もちろん、美鈴(みすず)の分もだ。少女はパイプ椅子に座って(あかね)たちと遊んでいる。

「美鈴、パン買ってきたぞ」

 手に持っていた袋からいくつか、パンを取り出し、机に並べる。それを見て美鈴はどれにしようかと選んでいる。少女は自分の食べたいパンがあったようでそれを手に取っていた。それを持ちながら俺の膝に乗ったいた。しかし、パンの袋を開けるそぶりは見せない。俺を待っているのかもしれない。そう思い、俺も自分のパンを選んで、袋を開ける。美鈴はそれを見て、俺の真似をするように開けようとしていたが、なかなか開かない。その手からパンを取って開けてから、少女の手に戻してやるとお礼を笑顔で言われた。それから少女はいただきますと言ってから少しずつパンを食べ始めた。

「俺たちも食べるとするか」少女が食べ始めたのを見て(いつき)がそう言った。

 それを合図にして俺たちも食べ始める。ちなみに樹も茜も弁当を持ってきている。弁当の蓋を開けると、美鈴がそちらをちらちらとみていた。多分、パンだけだは足りないのだろう。というか美鈴のだけでも弁当作ればよかった。今更に後悔しても仕方ないのだが。その視線に気づいていたいたのだろう。樹が少女に声をかけた。

「美鈴ちゃん、何かほしいものある? 量は多いから美鈴ちゃんが食べても大丈夫だよ」

 そう聞かれた美鈴は何か考えていたようだが、結局彼の弁当をつまんでいた。

「じゃあ、私のもあげるよ。美鈴ちゃん」次は茜の弁当をもらっている。

 少女は自分のパンを食べつつ、二人から弁当のおかずをもらいつつ、昼食を終えた。休み時間は結構あるので、昼食を取ったくらいでは時間は余る。

「美鈴、何かしたいことあるか」

 少女は食べ終えてからは窓の外を見ていた。外では何人かが部活や、遊びで外にいた。

「美鈴、外出たい」

 その言葉に従って、俺たち三人は外に出た。


 暑くも寒くもないその空気は心地いい天気と言っていい。美鈴は走ってきゃっきゃと騒いでいる。

「天気いいわね。気持ちいい」茜は伸びをしていた。

 樹も同じようなことをしている。授業をまじめに受けていたからだろう。

 美鈴はそのテンションが高いからか、一人で走って行ってしまう。その方向はグラウンドの方だ。一人で行かせるのは心配なので、俺たちは美鈴の後を追いかけた。

 グラウンドに入る前にはテニスコートがあってそこでは部員が自主練習していたようで、それをいったん止めて、美鈴の相手をしてくれていたようだ。

「悪い、美鈴を引き留めてくれてありがとな」

 俺がそういうと部員は俺の方を見たかと思うと、走って去って行ってしまった。

「何だあれ、お礼言っただけじゃん」樹が咎めるような声で言った。

「仕方ねぇよ。この平和な学校では不良の扱いなんだからな」

 そう言ったが彼はなんとなく不満そうな顔をしていた。

「美鈴、一人で行くなよ。迷子になったらどうするんだ」

「わかった」本当にわかっているのだろうか。

「で、そのに出たはいいけど、何がしたいの。美鈴ちゃんは」

「あれ」

 少女が指をさしていたのは、テニスだ。多分、美鈴を引き留めていた部員もあの中にいるのだろう。美鈴がやりたいというのなら、交渉しなくてはいけない。俺では無理と言われるかもしれないが美鈴のためだ。なんとかして美鈴に遊ばせてやろう。

「なぁ、テニスコート、少し貸してくれないか」

 テニス部の集団に近づいて声をかけると、一斉に俺の方に視線が向いた。それから、俺と認識すると本土の人が視線をそらせた。その中でも俺の方に近づいてくるやつがいた。そいつが多分、部長なのだろう。

「悪いんだが、今は練習中なんだよ。君たちみたいに遊びでやっているわけではない」彼は俺と話すことが無駄とでも言いたげな口調で話していた。

「ちょっとだけでいいのよ。この子がやってみたいって」後ろにいたはずの茜は俺の隣に来て、加勢してくれた。

「少しか。......少しならいいか。じゃ、俺たちはいったん休憩にするから、その間だけ使ってもいいから」彼は近くにあったラケットのグリップをこちらに向けた。

「それから、ラケットはこれを使ってくれ。俺のなんだが試合用じゃないから心配しないで使ってくれ」

 それから茜と樹が少女の相手をしてくれた。俺はそれを少し離れたところから、見ている。茜も樹もテニス部員の友達のラケットを借りていた。

「なぁ、ありがとな」

 俺は近くで休んでいた部長にお礼を言った。

「ああ、俺は嫌な言い方をしたのにお礼なんてな。あんたは不良なんて言われているからどんなひどい奴なのかと思ったら全然だ。むしろ、噂の逆。噂なんて信じるもんじゃないな」

「そんなことない。授業はさぼるし、喧嘩っぱやいしな。不良と呼ばれるには十分だ」

 俺は、俺たち二人は美鈴たちが遊ぶ姿を見ていた。

「そんなの他の誰かが言ったことなんじゃないのか。俺も噂を聞いていたから、勘違いしてたけど、あんたは不良なんかじゃないだろ」

 その言葉に反論なんてせずに、ただそうかとだけ返した。それで会話は終わった。

 十五分くらいすると美鈴が疲れたらしく茜たちと俺の方に向かってきた。美鈴は彼にお礼を言いながら、ラケットを返していた。俺も彼に改めてお礼を言った。茜たちもラケットを返して、戻ってきた。

「また来いよ。俺はあんたとテニスがしたくなった」それは意外な言葉だった。

「ああ、また来る」

 それだけ言って、俺たちはその場を去った。

次は~ 午後の授業~ 午後の授業でございます

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