両親(1)
ファンタジーなゲームや小説には必ずと言っていいほど出てくる魔剣ですが、意外と魔剣について語られることはありません。
喋ったり、魔法を切ったり、けがを治したり、鉄を切ったり、かなり目立っているのに、彼らはお店で売ってたり、岩に刺さってたりとかなり酷い仕打ちを受けています。
この話はそんな彼らを思って書き始めました。
連載速度はかなり遅いと思うので、そこの所はご容赦ください。では・・・
俺の名はバハムート。彼の龍族の王たる者の鱗より造り出され、その者と同じ名を付けられた、魔剣だ。数々の英雄、勇者、時には魔王、に使われ多くの命を絶ち、生き血をすすってきた。
さて、そんな俺が、今回筆を持って、いや、タイプしているのは何故かと言うと、ただの気まぐれである。実際は、これを書いてあわよくば俺の半生(もしくは反省とも言う)が、小説か何かになり、金が儲かればいいと思っている。では、俺の物語を聞いてくれ。
「この剣の名はバハムートにしよう」
これが、俺の聞いた初めての言葉だ。その言葉は、俺の生みの親の鍛冶師ゲインが発した言葉だった。その頃の俺は、生まれたてで言葉の意味など全く理解していなかったが、聞いたモノをオウム返しするぐらいの知能はあったようだ。
「このけんのなばはむーとにしよう」
「おぉ!?お、お前か?」
それはもうしこたま驚いたらしい。椅子から転げ落ちていたのを今でも覚えている。まぁ、脳やそれに準ずる記憶機関が無い俺は物事を忘れることは無い訳だが。
「おまえか?」
「なんじゃ!!親に向かってお前とは!!」
全く持って理不尽な親である。
数時間が経ち、俺が言われたことをオウム返ししていた事にようやく気が付いたゲインはかなり困ったらしい。
「うーむ・・・どうしたものか・・・最強の剣を作るつもりが最強のレコーダーを作ってしまったか・・・」
「どうしたものか・・・」
「お前のことだってのに・・・なぁ?」
「なぁ?」
素材が龍王の鱗のレコーダー、夢にも出て来たらしい。それはもう相当な悪夢だった、と。
「お邪魔するわ」
「ん?」
「ちょうど剣が出来たころだと思ってね・・・」
「げ・・・」
そこに尋ねて来たのは、俺のもう一人の親、龍王その人だった。実際は女性なので龍王ではなく、龍女王なのだが。彼女が自身が依頼主であり、素材の提供もした。具体的に言うなら、角や鱗、血の提供である。製造方法は門外不出のためここでは言えないが、そうやって俺は造り出された。いうなれば、ゲインが母親であり、龍女王は父親だった。普通は逆だが、産み出したという点で言えばゲインが母親になる。まぁ、結局の所この女王の事を『母さん』と、ゲインの事を『父さん』と俺は呼ぶことになるのだが。
「なに?どうしたの?もしかして失敗したのかしら?」
「い、いや!!失敗はしてない!!失敗はしてないがただ・・・」
「ただ?」
「ただ?」
「いや、うん。こんな感じになってしまった」
「しまった」
「あら?あなたが喋ったの?」
「の?」
「イヤすまん!!もう一度作り直すから、血を・・・」
「決めたわこの子は私が引き取る」
「分けてくれ、ってえぇっ!?・・・いや、それは多分失敗で繰り返して話すしかできないポンコツだぞ?」
「いいえ、失敗じゃないわ。この剣には魂が宿ってる。この子は赤ちゃんなのよ、ちょっと刺々しいけどね、物理的に」
「そう・・・なのか?」
「そうよ、だからこれから頑張りましょうね、お・と・う・さん!!」
「えぇっ!?」
そうして、俺の初めの持ち主である、鍛冶師ゲインとその妻である龍女王バハムートとの生活が始まったのである。