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72.番外編・Dの心地

今日もこの小説を読んでくださって感謝します。

どうやら次の出番は、この僕のようです。


 あの時「僕」の身体に空いた穴は、相当体に響いてしまいました。蛍とか言うあの探偵局の新入りにオリジナルが与えた力はやはり凄まじいものがありました。以前聞いた話ですと、確か1秒間に1万発のパンチが加えられると言いますからね…。ただ僕が幸運だったのは、無事にここ…皆様がご覧になっているこの小説ですと「犯罪組織」と書かれているようですが、その本部に戻れた事かもしれません。

それにしても、何故あの「僕」は帰って来るなり逃げ出したのでしょうか。今は追跡を頼んだ「僕」もろとも時空改変の力を失って警察に捕まってしまったので聞く必要もなさそうですが。


僕の方は無事に再構成されてちゃんとした「デューク」に戻る事が出来ました。体はボロボロでしたが回路は支障が無かったのが幸いしたようです。あ、再構成と言うのは一人の僕の体を一度分子レベルで分解した後にそれぞれから新しい僕を作るという工程です。ちょうど皆様が扱っているファクシミリや未来技術のテレポーテーション装置を応用した技法なのですが、未来の法律上はこのような方法新しい命を創りだす事は制限されているそうです。ただ僕たちには関係のない事なのは皆様も御承知の通りかもしれません。今回の場合ですと、僕も含めてだいたい2ダースくらいの「デューク」が一人から一度に製造されたはずですね。あ、ちなみに今回僕が選ばれたわけですが、他は前に製造された僕…そうですね、あのフロアですと2000ダースくらいと一緒に待機状態にいますので、予備に関してはご心配なく。


 それにしても、僕の出番が決まった時に別の僕たちがみんな言っていましたが、なんだか今回の一件、昔オリジナルとやったあの一件を思い出します。

 確かあれは…サンタクロースのプレゼント配達を猛吹雪で妨害しようとして失敗して…それから少し経ったあたりでしたね。まだあれはオリジナルと僕と…あとは「彼女」、この組織も構成員がたった三人だった頃です。今は数千数万にも増えていますが、それは別の話で。

さて、何処かは忘れましたが、僕と平行した未来の植民惑星でロボットに反乱を煽って、雇い主と言いますか、その星の有機生命体を根絶やしにした時です。確か鉄鉱石がよく取れる普通の開拓惑星で、労働力のロボットの中枢をスーパーコンピュータが担っていたようですが、ちょっと時空改変を使って過去のプログラム作成時に細工を入れてみました。ただ、その結果意志に芽生えたところで所詮は赤ん坊にも満たない判断能力。オリジナルは手際良くコンピュータに都合の悪い事実のみを植え付けていました。

 ちょうど遥か昔の言葉に枯れ木のみを見て山の美しさに気づかないというものがありましたが、まさにその言葉通りでした。人間は森を枯らし、動物たちを滅ぼす。地球を滅茶苦茶にし、自分たちは楽をしようとしている。一度人間に憎しみを抱いた後はまさに僕たちの思い通りに動いてくれましたよ、自分を修理してくれるはずの人たちも次々に犠牲にしていったんですからね。ついでに何やら考えが突拍子もない方向に行ってしまって、植林した木や空気中のバクテリアまで殲滅させたのは、予想はしていましたが意外でしたね。それにしても後の事を考えない、まさしく目先しか見ていません。あのコンピュータの動力部のとある部品を直すプログラムを僕たちがわざと消却したから、その星の技術者の皆様しか修復出来ない事に最後まで気づかずじまいだったようです。

まあ、正直それ以後の自滅していく様子も見てみたかったのですがオリジナルは手っ取り早い方法を取りました。反乱に成功したロボットやコンピュータの前で惑星の死火山を一斉に復活させた後の彼らの慌てようと言ったら、まさに滑稽でした。当然でしょう、たかがコンピュータが自然活動に勝てるはずがありませんからね。熱々のマグマが大量に溢れる中であっけなく溶けて行くロボットの鉄の体やコンピュータのチップ。惑星が赤く染まっていく様子は、皆様で言う「美しい」という言葉にぴったりの光景でした。


…え、そうは言わない?僕たちが惑星の未来を奪った?…テンプレートというのでしょうか、そう言う決まったような内容の批判というのは。

よくオリジナルがいる時代だと未来を夢見る事やその後の現実を悲観する事がよくあるようですが、僕はその意味が分かりません。瞬間を楽しめれば、僕はそれでいい。楽しむというものもよく掴めないですが、多分僕の脳内に快楽を感じるというものがそうなのでしょう。ですので、どうしてそんな事をするのかと言われても、僕たちは何も言えません。

楽しい事が大好きならそれで良い。でも、やはり何か僕には足りないものがあります。オリジナルのデュークでは無いからでしょうか。


 そういえば、あの時せっかく惑星を綺麗にしたのにオリジナルは笑っていませんでした。僕には…いえ、僕たちには理由が分かりません。何で彼はあれほど共に行動していた「自分」や仲間を裏切ったのでしょうか…。


 寂しいという感情はこうやって生まれるのかもしれないですね。

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