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67.MEGUMI VS MEGUMI〜その1:ある夜の再開〜

別の宇宙からの来訪者と聞くと、怪獣や宇宙人のように我々地球人とは掛け離れたような存在に思えるかもしれない。しかし、あらゆる可能性を秘めた宇宙には、全く同じような姿をした存在も当然ながら存在するだろう。それが人為的に作られたとしたらなおさらである。例えば、今回の事例のように……。


=====================


「今日も事件がニャかったニャー」

夜の住宅街の道を、一匹の黒猫が暇そうに歩いていた。独り言の内容から既に彼の事を皆様はご存知かもしれないが改めて紹介すると、彼の名前はブランチ。丸斗探偵局に勤務する喋る猫である。

基本的に依頼が滅多に来ない探偵局だが、慣れ親しんだメンバーに会いに彼は毎日朝からやって来ていた。今日もその例外に漏れず、局長の連続遅刻記録が助手の文句の数と共に更新され、新入りはツインテールをたなびかせて真面目に勉強をし、そして彼は縁側でグータラしていた。

夕方になって、皆は帰路につく事にした。一人暮らし中の新入り蛍は恵局長と共に買い物に向かい、助手デュークは皆を見送ってからテレポートで帰っていった。そしてブランチは、街の片隅でごろごろしながら寝るといういつもの日程を取る事にしたのである。

・・・そう、まだ平穏無事な状態が続いていた。いつもの一日を終えて新しいお天道様を待つばかりになるはずだった。

夜道の片隅に迷い込んだ、「恵」の姿を見るまでは。


明らかに怪しい。ブランチの第一印象であった。

こんな所にあんな面倒くさがりな恵局長がわざわざいるはずがないという経験測も一つの理由だが、もう一つはその服装だった。この小説のあらすじにもあるように、恵はその豊乳とは対照的にボーイッシュな服装やアクセサリーを好む。冬服は紫色のパーカーにジーンズ、夏は長袖の白いワイシャツに赤紫のネクタイをラフに結んでいる。普段はこのようなカジュアルな衣装に身を包み、助手とは対照的にスーツを身につける機会など無きに等しいはずなのだ。しかもスカートなど以っての外なのだが、電柱の影から見る「恵」はそれとはまるで正反対だった。薄い赤紫のOLスーツに身を包み、スカートからは滑らかな美脚が大胆に覗いている。あいにくブランチは猫なのでそこまでは感じなかったものの、世の男性陣なら「セクシー」という単語を当てはめているであろう。


ただ、彼の得意技である五感を使っても彼女が「恵」局長でないという判断はできなかった。視覚からは先程のような違う点が見つかっているものの、あのショートヘア髪型は局長と同じだ。顔の形状も全く違いが見つからない。その一方でネコの御自慢の器官であるヒゲからもブランチは異世界などの異物を感知する事が出来るのだが、こちらに関しては違和感が脳天に伝わっていた。ただ、一方でもう一つ彼が重要視している「鼻」に入る匂いは、我らが局長のものと全て共通していたのだ。

今までのニセデュークとの対峙などの際にもこのような事は無かった。恵や栄司のような増殖能力者以外、例えば分身したデュークや蛍はそれぞれの彼らで必ず匂いが違うのだ。しかし、彼女は…。


そして彼は決心した。物は試しだという度胸を持って、話しかけるという行動を取る事を。


「どうしニャしたか?」


結論から言うと、今回のブランチの行動は失敗に終わった。目の前の恵が驚きの目線で彼を見つめ、「猫」が喋ったと口にしたからである。

やはり偽物の恵局長なのか?しかし匂いまで一緒などありえない。


「えええ、あニャた恵さんニャんですか?」

「なんで猫君私の名前知ってるの!?」


双方とも混乱が極地に達しかけた時、遅ればせながら救世主が虚空から駆け付けた。間違いない、このふわりとした心地良い香りの持ち主はデューク・マルトだ。

しばらくの静かな時間が過ぎる間、デュークの顔は唖然としていた。


「ど、どうして・・・」


何故ここにいるのか。そう続けようとした彼の言葉は、恵(?)の抱擁によって遮られた。


「デューーークーーーーーーーー!会いたかったよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


嬉しさを隠さず夜の通りに溢れさせる恵(?)、困惑するデューク。しかし、一番混乱していたのはブランチなのは言うまでもない。


『事情は次回説明する。悪いけど、二人だけにしてくれないか?』


助手のテレパシーに頷きで返した黒猫は、困惑を胸に一夜を過ごす事になった…。


ちなみに念のために補足しておくが、丸斗探偵局局長丸斗恵はその夜、布団を蹴飛ばしつつ大の字になってぐっすり寝ていたと言う。翌日の驚きを知らないまま…。

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