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54.番外編:俺と姉の思い出2

俺だ。有田栄司だ。


…早速だが愚痴を聞いてほしい。全く恵の奴はなんなんだ…今日も探偵局に来るのを遅刻しやがって。ここ数日ずっとこれだ、何が春眠暁を覚えずだよ…。仕事を他の俺と分担して暇つぶししている俺が言う立場じゃないかもしれないが、正直姉さんを見習えって言いたい。誰かと誰かを比べちゃ駄目だって姉さん本人はよく言ってたが、つい比べたくなってしまう…。ここだけの話、恵の奴はどことなく俺の姉さんそっくりなんだ。能力にしろ顔つきにしろ、あの髪の色まではいかないがな…。ただ、確かなのは、教養は確実に姉さんの方が上だったと言う事だ。


…ふう、ようやく本題に入れる。


俺の姉さんは、前も言ったと思うが「増殖能力」があった。自分をたくさん増やせる能力だ。言っておくが、ただの分身と一緒にしないでほしいぜ。忍者とかがやってるらしいあれは単に自分と同じ姿のコピーを増やすだけ、こちとら素粒子レベルまで同一だからな。そんなこれを活かしたからか、姉さんはかなり頭が良かった。知識レベルも勿論で、確か大学の成績でもトップ10に入っていたらしい。それに、応用力も相当あった。それが回転の良さの表れかもしれんな…。


で、俺が勉強で悩んでいる時、よく姉さんは家庭教師代わりに色々教えてくれたんだ。例えば…


「うーん…」

「どうしたの?」


中学や高校になると宿題は結構難しくなる。今は楽勝で解けるようになったが、当時のひよっこ時代の俺には難問ばかりだった。そんな時に、姉さんがよく部屋にやって来て勉強を見てくれた。


「へえ、結構難しいんだね」

「先生厳しすぎだからな…しかも明日俺がこれを黒板に書かなきゃならないんだぜ…」

「あはは、栄ちゃんドンマイだなー」


教えてくれと頼み込む俺に、いつも鼻息一つ荒く鳴らし、姉さんは一緒に問題を解いてくれた。…まあ、ここだけ見れば普通の姉弟だろう。


問題はここからだ。


「そうか、こういう方法が…」

「うん、この公式使うと結構楽だよ」

「サンキュ、姉さん」

「あ、そうだ。それにね…」


「こういう方法もあるんだよ?」

「!?」


…毎回心臓に悪かった覚えがある。今となっては当たり前すぎてどうもないんだが、右側で話していた人と全く同じ人が左側に現れたら驚くだろうな、お前らは。


「へえ、そうかこういうのも…」

「「そうそう、こっちの方が応用は効くかもね」」


左右でユニゾンしながら姉さんの声が俺の耳に響く。…ただ毎回左右にでっかい胸があるのは色々思春期の俺には大変だったが。いや、これだけならまだいい方かもしれなかったな…。


「他にもー」「こういう方法とか」「これとかもいいんじゃない?」「あ、こっちの方が楽かも!」


「ね…姉さん…」


「「「「「「「「「「「「「「「なあに、栄ちゃん?」」」」」」」」」」」」」」


…数学や現代文の問題はいつもこれだ。回答や計算方法がいくつもあると、その数の分だけ姉さんが増えてしまう。しかも姉さんは結構…その…ほらあれだ、胸がでかいから余計にあれだ…。さらにそれが全部俺に向かって来てるんだぜ?嬉しいよりもこっちは大変だったぜ…。羨ましいって言った奴は…無理だろうな、こんな気分味わえったって。


============


いつも見慣れているはずのこういう増殖能力なんだが、相手が相手、厨坊時代の男の子が綺麗な女性のスタイル見て戸惑わないはずが無いと俺は信じたい。しかもそれが何人も何人も増える訳だ、頭の中に強烈にインパクトが残っちまう…。


お陰で変な夢まで見る時もあったな…。


どこから始まったのか覚えてないが…気付いた時には、なんか教室の椅子に座って伏せていた記憶があるな。いつも授業を受けてる時の俺だ。…うるせえ、居眠りぐらい一度は誰だってするだろ。あのアホの局長は学生の頃は毎日やってそうだがな。


…何かおかしかった。周りにもやっぽいのがかかってたんだ。授業中だったのは分かるが、周りは女子学生ばかりだったはずだ。それで、確か姉さんの名前が何故か呼ばれて…


「「「「「「「「「「「「「「「「「「はーい!」」」」」」」」」」」」」」」


…全員姉さんだった。右も左も前も後ろも、全部全く同じ俺の姉さん。衣装も覚えてるぞ、全員お揃いのセーラー服だ。エロすぎる気がするが、思春期の夢だから許せ。


「じゃあ次は栄ちゃんだよー」


いきなり俺に答えが飛んできた。黒板にあるのはさっぱり分からない数列の大群。答えられる訳が無くてそのまま呆然と立ってると…


「栄ちゃん答えないの?」「栄ちゃん?」「栄ちゃん?」「栄ちゃん?」「栄ちゃん?」「栄ちゃん?」「栄ちゃん?」「栄ちゃん?」「栄ちゃん?」「栄ちゃん?」「栄ちゃん?」「栄ちゃん?」「栄ちゃん?」「栄ちゃん?」「栄ちゃん?」「栄ちゃん?」「栄ちゃん?」「栄ちゃん?」「栄ちゃん?」「栄ちゃん?」「栄ちゃん?」「栄ちゃん?」「栄ちゃん?」「栄ちゃん?」「栄ちゃん?」


周り中の姉さんが一斉に俺の方に向かって来たんだ。しかも教室の中じゃねえ、廊下見たらそこはぎっしり姉さんで一杯になってて、しかもグランドも…


「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」「栄ちゃん♪」


「のああああああああああああああああ!!!!!」


…夢か…って唖然となって、息を整えようとした時、目の前に…


「「「「「「「「「「「大丈夫、栄ちゃん?」」」」」」」」」」」

「!!??????」


あの夢のラストの後にこれだぜ…今までこんな酷い目覚めはなかった…。ぱっちりと目は覚めたがな。



============


ぶっちゃけた話、今の俺のこの能力のスタンスは完全に姉さんを受け継いでいる。恵の奴は基本的に一人だけの状態を維持しているようだが、俺たちは完全に逆だ。前の話でも言った通りだが、あくまであいつは探偵局を守り通す使命があるからあれを維持し続けているのかもしれない。…寝坊したり遅刻ばかりしてる様子からみると俺でも信じられんが。


一方の姉さんは…おっとすまん、変な事考えちまった。そうだよな、もう姉さんはいないんだった。今更俺が守れなかったなんて悔やんでも遅い。姉さんみたいに罪もない人から幸せ奪うような奴をボコボコにして反省させるためなら、いくらでも悪になってやるのが俺のスタンスだ。今の増殖能力もそのために活かしている節も多い。…ぶっちゃけ、姉さんによく困らされたのもあるかもしれないが。


「栄ちゃーん」


人気のない道を歩いていると、たまに聞こえてくるのが姉さんの声。どこからやってくるのか最後まで俺は分からなかった。ただ、そっちの方向へ向かおうとすると…


「栄ちゃーん♪」

「ね、姉さん…?」


その方向と別の場所からまた声が聞こえてくる訳だ。で、そっちへ向かおうとすると…


「栄ちゃーん♪」


ま た だ 。 

今のように姉さんと同じ立場にいると、ついこうやりたくなってしまう気分は分かる気がする。ただ、正直やられる側は相当混乱する訳だ。だってそうだろ、同じ声が四方八方から聞こえてくるなんて…。


「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」「栄ちゃーん♪」



「ちょ、待ってくれ!!訳が分からなくなってきた…」



「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「えへへへ、ごめんごめん♪』」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


もうこうなるとため息ばかりが出る訳だ。辺りを数十人の姉さんに囲まれちゃな…。


…そう考えると、ある意味恵にも似た所はあるかもしれんな。あいつも妙なところで押しが強いし、結構リーダーシップはあるようだし…あいつ、一体何者なんだ?デューク曰く関係はないと言う事なんだが…まああいつに逆らうと恐ろしいから信じざるを得ないところはあるが…。

ま、秘密にしてるんならいつかばれるだろうな、俺とあいつの関係。

生き別れの妹とかはごめんだからな、言っておくが。


…それにしても恵の奴、なんで蛍に「ケイちゃん」なんて渾名つけたんだ…。

それは俺の姉さんの名前と被るって言ったはずなんだがな…あいつ絶対忘れてる…。

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