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41.ツインテールの逃亡者・1(番外編:お譲様とメイド)

朝の五時。今の時間はまだ太陽も昇っていない時間ですが、それでも目覚まし時計は待ってくれません。仲間たちと共に起床した後、私はいつものように寝巻からメイド服へと身にまとう物を変え、朝の食卓の準備へと向かいます。


お譲様に仕えるこの私が用意するからには、食事は栄養価が高いものでなければなりません。先日は鮭の切り身を中心とした和風メニューでしたので、本日はトーストやベーコンなどを中心にした洋風で行こうと考えております。要するに、あまり見栄を張らない事が大事と言う事です。ただ、私がお仕えしている場所が場所、料理を製作するのは一人では無理があります。私の仲間…そうですね、メイド仲間にそこら辺は任せてあります。さすがの私でも、お譲さまがあのような体質では体力が持たないですからね。


とは言いつつも、完成した料理を用意することくらいは私にも可能です。昨日からの計算から行くと、ちょうど2048人分。万が一の事も考え、理論値よりも多めの量を用意しておきます。先の事を考える、それが理想的なメイドのあり方ではないでしょうか。


今日の用意が終わったのは丁度9時頃。そろそろお譲様方を起こさないとなりません。何故それにメガホンが必要なのかと申しますと、お譲様がお寝坊という事も要因ですが、もう一つ理由があるのです。

やはり全員まだぐっすりと寝ています。お美しい顔や姿が台無しな寝像も見受けられますね…。しかし、もう少しでそのような醜態を見せびらかす時間は終わりです。ボタンを押して、体育館ほどの広さの寝室一面に目覚ましのアラームを鳴らすと同時に、私はお譲様方を一斉にメガホンを用いて起こします。


『お譲様方、朝ごはんの用意が出来ました!冷めないうちにお早めにお越しください!』


この二段重ねには、さすがのお譲様方も眠りの世界からこちらに帰還なさるようで。

もうお察しの方もおられるかもしれませんが、私がお仕えしているお譲様というのは皆様のような普通の方ではありません。一言で表すと…「増殖娘」というものでしょうか。いつ頃からこのような状態になったのかなどは今はお話しする事は出来ませんが、彼女はちょうど倍数、約24時間ごとに二倍の数に自らを増やす事が出来るという体質の持ち主であります。バクテリアや微生物を連想される方も多いと存じますが、お譲様はそのような生命体とは異なり、体細胞が老化する事なく、永遠に…そうですね、ちょうど高校生程の肉体を維持したまま増え続ける事が可能というものです。


ですから、今日も寝室を覆い尽くす二段ベッドの各地は混雑の模様です。しかし、さすがはお譲様。そのような事態でも慣れたように着替えを済ませ、食卓に向かっていきます。勿論礼儀正しいお譲様の事、自分同士ならず私にもしっかりと挨拶を済ませていきます。少し子供っぽいですが、年相応のその声を聞くだけで4時間もの長さの準備から来る疲れも取れると言うものです。


…ですが、ここからすぐに食事と言うわけにはいかないのが辛い所です。いえ、辛いのでしょうか…?


「ねえ、起こして…」


ドア近くでしょうか、一人のお譲様がまだ起きれない様子です。何をしたいのかはだいたい予想がつきますが、念のために催促をしますと、返って来た返事は案の定でした。


「駄目、キスしないと起きれないもん…」


いくら同じ遺伝子といえども、ちょっぴり我儘な方も混ざっているものです。もはや日課に近いものがありますが、お譲様のお美しいおでこに私の唇を一瞬だけ付けると、先程の不満はどこへやらの様子。このお譲様も無事に食卓へと行きました…が、ここからがまた大変なところ。私の計算上、本日のお譲様の数は先程も述べました通り2048人。このようなお譲様が一人だけとは勿論限らず、本日の朝に私の唇が触れたお譲様の数は計22人になってしまいました。

私は同性とのキスはあまり慣れていないのですが、それでもお譲様が喜ぶ姿を見るだけで、心の中から笑顔になります。もし私の性別が違っていても、きっと同じ事を考えるでしょう。


やはりそのような状態だからでしょうか、私が到着する頃には大半のお譲様方はご飯を食べてしまわれていました。遅いよ、とからかわれてしまいましたが、やはりその声も可愛いものです。この家でメイドをしている者としては、この声だけでお腹が癒されるものですが、やはり現物を食べないと始まりません。他のメイド達と共に、私も朝ごはんに加わりました。


さて、朝ごはんが終わりますと、お譲様たちは賑やかに身支度の時間となります。私の方は仲間たちが食器類などを洗っていますので、その間に他の場所のお掃除となります。お譲様をしっかりと守る者として、しっかりと、念入りに綺麗にするのは当然のことですが、さすがに2000人以上のベッドを綺麗にするときは、仲間たちと協力する必要がありますね。


「着替え終わったよー!」


そうこうしている間に、お譲様たちがやってきました。いつも通りはきはきとした明るい声です。少し煌びやかな、フリル付きの衣装がよくお似合いです。私たちはいつも通りこの衣装ですが、近くの仲間はよそいきの衣装をしております。丁度見た目的にはOL服というものでしょうか。それもそうでしょう、この格好で外に出たらオタクと思われてしまいますからね。私たちのイメージを崩す不浄な存在と一緒にされては困ります。


その後は、基本的に私たちはお譲様の面倒をみる事になります。お譲様方はこの家の大事な宝、私たちがしっかりと見守る必要があります。


「ねえこの本のこれってなんて読むの?」

「これですか、ここのページをご覧になれば…」


勉強はどうするのか、そう突っ込まれる方も多いかもしれないですがそこはご心配なく。私たちのお譲様は非常に真面目で、普段はお庭などで元気に遊んでいたり部屋の中で運動をしていたりしますが、一日一時間はしっかりと勉学などに励んでおります。特に教養などはせず、身の回りの本などで知識を得てもらうという形ですね。私は基本的に、お譲様が気になる時に手助けをする、という形です。

お昼御飯の後にお昼寝を取られるお譲様も多いです。そのたびごとに、またキスを求められるのは嬉しいやら恥ずかしいやら、どちらでしょうか…。


さて、先程よそいきの服を着ている仲間の話が出てきましたが、彼女たちが向かっているのは基本的に少々高級な食品が売っております所です。皆様で言う…そうですね、買いだし班と言ったところでしょうか。何せ私たちの家は富豪、お金はなるべく多く使い、天下の回りものにしなければなりません。


「ねえねえ、今日のおやつ何かな?」

「そうですね…今日はチーズケーキのようですね。お譲様もお好きでしょう?」

「ほんと!?皆に伝えてくる!」

「行ってらっしゃいませ、お譲様」


お譲様同士本当に仲がよろしいようで。私としてはとてもうれしいです。

今日はチーズケーキですが、日によってはメロンであったりイチゴケーキであったりクッキーであったり、毎日飽きないようにご用意しております。お譲様の健康と美しさのため、調理できるものは全て私たちメイド班でしっかりと作った後にお譲様に出すようにしております。毎日の料理で、厨房は深夜以外は基本的に稼働状態を保っておりますが、私たちは疲れなどありません。ご安心ください。


さて、その後お譲様たちと適度に運動をした後に夕食となります。美しさのためなら、しっかりと運動をする事は欠かせないでしょう。武術や剣道、柔道、弓道など、皆様がされている事はほぼすべて…どこか変でしょうか?

ともかく、その間に仲間たちは夕食の準備です。基本的に私やメイド仲間の当番はローテーションになっており、何でもできるという感じで覚えて頂ければ結構です。お譲様と今のような関係になる前からこの家に私たちはいましたので、このような事は朝飯前でございます。ちなみに、今日の夕飯は豪勢にステーキでした。少々お譲様の食べ方が意地汚い部分もありましたが、そこはご愛嬌。真面目すぎてもいけませんので、少しぐらいとほほ、と思う所がある所が女性の身だしなみではないかと私は思います。


「ごちそうさまでした!」

声を揃えて挨拶が終わった後は、皆様揃ってお風呂の時間。私たちメイドも、全員とは言いませんが一緒に入らせて頂きます。勿論ただ入らせて頂くだけではなく、背中を流したり髪を洗ったり、私たちの仕事の一環でございます。


「いいなー…」

「どうなさいました、お譲様たち」

「だって、その…」


…時々困りますのは、お譲様たちが度々私たちの…その…お乳を気持ちよさそうに…触られるという事でございます…。あまりにも俗物的すぎてさすがに注意しますが…時々は許してあげます。現に私たちも同じようにお譲様たちに触り返して、結局はお風呂ではしゃぐ事になりますからね。ただ、そうなったときは仲間たちから注意されてしまうのですが。


そんなこんなで、風呂上がりは読書や身支度の後、お譲様方は就寝となります。


「それでは、お譲様方おやすみなさいませ」

「うん…おやすみー…」

「また明日、お会いしましょう」


そう言うと、いつもお譲様たちは皆一斉に私たちに笑顔を見せてくれます。純情な、美しく、そして清い顔でございます。

さて、私たちはまだまだ寝る訳にはいきません。本日の仕事の反省や、お譲様たちの動き、明日の料理をどうするかの相談、他にもまだまだたくさん考える事がありますし、頭を働かせる必要があります。ちなみに、本日はお譲様の身の回りの世話を担当していた私ですが、明日は少々大変な係に任命されました。お譲様を乗せて、遠くの場所へ遠足に行く係でございます。要するにバスのドライバーと言えばいいでしょうが、これが結構大変と言いますか、何と言いますか…。


――――――――――――――


ともかく、次の日がやってきました。勿論バスの定員から全員が行く訳ではありません。


「えー、私たちは駄目なの?」

「申し訳ありません、また次の機会を」


お譲様方は余り外の世界と言うのをご覧になられないので、少々残念がっている様子ですが、申し訳ありませんと謝る事しか私は出来ません。定員というのがありますからね。

ともかく、他所行きのファッションをしたお譲様たち…勿論皆さまお揃いですが、それを二階建てのバス、ちょうど10台分に乗せる形で遠足に行く形になります。荷物やお弁当は、私たちがしっかりと用意しておりますので心配はいりません。


「ねーねー、どこへ行くの?」

「それは、内緒でございます」


そう言うと、お譲様方はワクワクしたように皆で賑やかに話しだします。当然でしょう、どこへ行くか私たちはまだ一言も言っておりません。皆思い思いに語り始めます。海か山か、それとも街か。だいたい1,2時間くらいでしょうか、それくらい経つとお譲様たちの声が次第に聞こえなくなります。ちょうど皆様はしゃぎ過ぎて眠りに就いた頃でしょう。


いい頃合い、と言う事で私たちはカーテンを閉め、お譲様が見たであろう最後の日差しを遮り、別のスイッチを入れます。ちょうどこのバスは運転室と客室が仕切れるようになっておりまして、そこから出ます睡眠ガスはこちらへ流れ込まないようにしています。念のためですが、私たちもこの時はガスマスクを装備し、これらをうっかり吸わないようにしっかり注意している事を付け加えておきます。


何故このような事をしているのか、という質問があるようですが、それは当然でしょう。この遠足は、「片道」だけですから。




―これで、何人かしら?

―そうね…今日送っていったのは丁度610人。誤差も無し、正常よ。

―分かった。そのうちの300人が…工場でいい?

―うーん…前よりポイントが高いわね…この前のクッキーやステーキが効いたのかしら。

―ふふ、そうかもしれないわ。栄養価も随分高いし、いいんじゃない?

―ちゃんと運動した子もいるし、脂肪分のバランスも丁度いいわね。

―でも全然勉強してなかった子が多いと言う事にもなるわね。

―大丈夫よ、いちいち外で肉を購入する必要が無くなったんだもん。

―そうね、昨日のステーキ、牛肉よりも美味しかったわ。勿論お譲様にはちゃんと牛肉よね?

―大丈夫、そこらへんの分別は出来てる。自分を食べてもねぇ、つまらないわよね?

―うん、自分を活かすならもっと…ね♪

―それは後にして、今回の供給は310人か…。

―やっぱりマフィア系の需要が多いようね、新型の麻薬の試験用とか…

―そういえばどっかの偉い国の人もこっそり買ってたわよね?あれってもしかして…

―エロジジイたちよ、多分。あの後皆記憶を消したからやりたい放題できるだろうけど嫌よね…

―まあまあそう言わない。いい需要元なんだからさ。それに見て、これ。

―凄い…宝石だ!

―しかも結構貴重なのよこれ、こんなのはたいてまで買うんだから、いい顧客よ。

―そうね。

―それにしても、私たちのオリジナルは本当に愚かね…こんな使い方があるとも知らずに、私たちをこき使ったりして。

―本当よね…今頃後悔してるんじゃない?

―まさか、そんな事考える脳みそすらないわよきっと。

―ねー♪

―オリジナルからたっぷり作った複製を育てて売りさばく…

―私たち、ある意味牧場主じゃない?

―いいねそれ、人間牧場?

―うわ、それっぽい…てかまんま!

―ま、そうでもしないとあの「お譲様」毎日二倍に増えるでしょ?

―ある意味私たちは「お譲様」を助けてるってわけか!あはは!


―あはははは!―あはははは!―あはははは!―あはははは!―あはははは!―あはははは!―あはははは!―あはははは!―あはははは!―あはははは!―あはははは!―あはははは!―あはははは!―あはははは!―あはははは!―あはははは!―あはははは!―あはははは!―あはははは!―あはははは!―あはははは!―あはははは!―あはははは!―あはははは!

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