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184.分身探偵・丸斗蛍 丸斗探偵局の一日③

 「「「「『いただきまーす!』」」」」


 ちー君が美味しいお弁当をたくさん買ってきてくれた所で、丸斗探偵局はお昼ご飯の時間。恵局長の頃からだけど、私たちはいつもこうやって皆で一緒にご飯を食べるようにしている。こうやって皆で楽しく食べると、あまり食べ過ぎる事もなくなるし、何より程良いコミュニケーションを得る事が出来る、ってテレビでも言ってたからね。でも、色々理屈をつけても、一番は皆と話せるのが理由かな。

 さすがに何人も私がいると食費もかかってしまうので、こういう時は元の一人に戻る。そうすれば他の私にも美味しく食べたご飯がフィードバックされるからね。デューク先輩から貰った力、本当に色々応用出来て頭が上がらないなぁ……。


「いただきー♪」

「あー、僕のから揚げ!ようし、こっちも!」

「おいヴィオ!僕のコロッケ返せ!」

「お前だってさっき食べたじゃないか!」


 ……相変わらずヴィオとスペードは喧嘩ばっかりなんだから、もう。ちー君とコウちゃんが慌てて止めてるけど、正直この二人は喧嘩事態を楽しんでるようにも聞こえちゃうからな。こうやって探偵局の一員になる前からずっとこの調子だったようだし、でもやっぱり大声で言い争いされると気になるんだよね、局長としては。

 そんな事を考えながら、私はコウちゃんの元にもしっかりご飯を食べさせている。少し前の話で言ったかもしれないけど、このコウちゃんは丸斗探偵局の情報収集やこの建物の管理を担っている未来のスーパーコンピュータ。でも、どれだけ凄まじい計算能力があっても、こうやって一緒にご飯を食べる事が出来ないのは寂しかったんだって。ずっと私やヴィオ、スペードが食べているカレーとかおにぎりとか、カップラーメンとか。いくら高性能でも、万能じゃないっていう事だね。ただ、大事な仲間が悲しんでいるのを聞くとやっぱり私たちは放置しておけない。ちょうど龍之介さんが探偵局を訪れた時に何か良いアイデアが無いかって相談した時に、凄い良いアドバイスを貰ったんだ。

 

『おいしいですワン、千尋さん♪』

「どうもっす、前コウさんが気になっていたっていうから……」


 テレビでも挙げられていたから、品薄が心配だったけど無事に買えた、ってちー君が嬉しそうに言ってる。

 そんなちー君の隣に、テレビのリモコンサイズの引き出し付きの黒い箱がある。この中には未来の技術で作られた高性能のエネルギー変換装置が入っていて、中に入れた食べ物を電気エネルギーに変える事が出来るんだって。どんな物でも内部には様々な力を秘めている、それを引き出すきっかけがあれば可能じゃないか。龍之介さんの助言を参考に、メックさんやミコさんの協力を得て、コウちゃん専用のお腹を皆で作った、っていう感じかな。

 これが出来てから、ますますコウちゃんと私たちの仲も深まった感じがする。ご飯を食べるコンピュータ、って何だか変な感じだけど、でも「ご飯」って単に食べるだけじゃないって言うのを私たちも、勿論コウちゃんも、この一件を通じてよく分かった感じ。


「「「「『ごちそうさま!』」」」」


====================================


 午後になっても、相変わらず私たちの所に依頼は来ない。一応丸斗探偵局は色々な場所にネックを持っているから、そう簡単に倒産の危機、なんて言う事にはならないけどね。朝はこういう暇な時間こそ大事だって格好つけちゃったけど、のんびりしているだけって言うのはなんだか落ち着かない。口を開けてぐっすりと寝ているヴィオとスペード、文字通りスリープ状態になって電気を節約しているコウちゃんは、多分私の考えとは少し違うかもしれないけど、スマートフォンをいじっているちー君辺りは同じ考えかもしれないな……。


 ……そんなのんびりした時間が流れようとした時。



「ホータルーーー!遊ビニキタヨーーー!」



「「「!???」」」

 突然の大声に三人が飛び起きるのも、恒例行事になった感じかもしれない。

 呼び鈴も鳴らさずに、何の予告もなく、サイカちゃんはいつも探偵局にやって来る。今日も普段通り元気いっぱいにドアを開いて駆けこんできた。背中には愛用のギターケースを背負っているけど、そんなに動いて中身は大丈夫なのかな……。

 私たちと出会った頃のサイカちゃんは凄い内気で無口で恥ずかしがり屋、ずっとパパと一緒に静かに暮らしていた。でも、私たちと会った頃から少しづつ変わり始めたかもしれない。度々メールを送信してくれるようになったし、あの大騒動の時も、勇気を振り絞って『犯罪組織』に立ち向かっていた。もしかしたら、それでサイカちゃんの何かが吹っ切れたのかもしれない。今の明るく賑やかな様子を見ても、昔の性格を思い起こす事が出来る人は少ないんじゃないかな……ちー君に前に話した時も、いまいち信じきれてない様子だったし。

 今は栄司さんの支援もあって、立派な地球の学校に通って勉強している。いつも宿題や勉強の事で悩んでいるけど、そう言う時は私たちが力になってあげている。でも、それ以外はむしろサイカちゃんの方から積極的にいろいろ挑戦している感じ。背中に背負っているギターも、バンドのメンバーの一員として音楽に……ってあれ?


「サイカちゃん、練習は……」「しなくていいの?」

「ンー、今日ハ休ミナンダッテ。自主連ニシヨーッテ」

「じゃ、じゃあなおさら練習した方がいいじゃないっすか……」

「イイノイイノ、私上手イモーン♪」


 うーん……昔の恥ずかしがり屋でさびしがり屋から、元気で明るい性格になったのは私は嬉しいんだけど、その代償なのかな、ヴィオやスペードに似てねぼすけの怠け者になっちゃってる。まぁ、本当にピンチになった時は全力で頑張るっていうのは私も何度も見てるから分かるけど、いつも努力を続けて欲しい、っていうのが私の意見かな……まぁ、私はお母さんじゃないし、いつもサイカちゃんはお父さんから言われているみたいだけどね。

 とは言え、本当に探偵局は色んな人たちと繋がりがある。我がままでやりたい放題だけど本当は優しい栄司さん、お調子者でいつも明るいミコさんに、本当にいっぱい。それどころか、ドンさんエルさん夫婦みたいに「人」ですらない人たちも、私たちに喜んで協力をしてくれる。でも、それらの大半はまだ恵さんからの繋がりで協力してくれている皆様たち。それだけ私たちが信頼されているという証かもしれないけど、いつまでも頼ってばかりはいられないよね。サイカちゃんとか、コウちゃんにちー君……うん、もっと頑張らないと、ね。


====================================


 そんな感じで、サイカちゃんも交えてお喋りをしていたら、気付けばもう夕暮れ。そろそろ探偵局もお開き、みんな家に帰る時間になった。

 先に帰ろうと彼女がドアを開けた途端、そこから懐かしい顔が探偵局の部屋の中に入って来た。本当に久しぶり、私の先輩で探偵局の名誉顧問のブランチ先輩だ。


「ブランチさん!」「久しぶりー!」

「「ブランチ先輩!」」

「蛍にみんなー!遊びにきたニャー!」


 ……そうか、サイカちゃんの性格、誰かに似ていると思ったらブランチ先輩だ。


 私たちに探偵局を託した後、ブランチ先輩は元の街の動物たちの親分の地位に戻った。やっぱり動物たちの間で色々と次のリーダーは誰になるか、そもそもリーダーなんて要らないのではないかみたいな感じで揉めていたみたいだけど、先輩が帰って来てからはやっぱり皆を一つに出来るのはブランチ先輩しかいない、っていう結論に至ったんだって。自慢げに語っていたから多分誇張はあると思うけど、まだまだ私は敵わないなぁ……。

 そんな感じで、普段は美紀さんのネコ屋敷を中心にのんびりと暮していたりもめ事を解決しているみたいで、こうやって来るのは本当に久しぶり。一体どうしてやって来たのか、聞いてみた私は凄いびっくりした。


「え、え!?それって本当ですか!?」「ぶらんちサン、嘘ジャナイヨネ!?」

「当たり前ニャ。だいたい蛍に嘘ついたら後が怖いニャー」

「そうだよねー」「納得っす」


「ちょっと皆さん……」

 

 私を何だと思ってるんだろう、もう……。

 でも、本当に今の私の心は飛び跳ねそうな感じだ。てっきりブランチ先輩は連絡が行っているものだと思ってずっと言わなかったみたいだけど、それもあの人らしい所かな……。


 そんなに嬉しいのか、って私にちー君とコウちゃんが尋ねてきた。


 当然だよ、って私は返した。だって、恵さんとデューク先輩……一番尊敬する二人が、数日後に私たちの探偵局を訪れる事が決まったんだから! 

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