169.最終章 恵とデューク
……あ。
「……!」
……
「……」
随分と分厚い壁だったわね。私の手、結構腫れて痛いんだけど。
「……!……!!」
あれ、デューク。ずっと耳抑えてるの?
駄目よそれじゃ、それだと外の音がもっと響くって、テレビで見なかったの?
「……」
耳を押さえてた方が、私の声響くと思わない?
あ、思わないか。
「……」
それにしても、結構豪華な牢屋ねー。てっきりもっと汚い犬小屋みたいな場所かと思ってたわ。
お邪魔してもいい?
「……」
何よ、無反応なら勝手に入るわよ、っと。
へー、床は結構硬いのねー。あんまり今のカーペットと変わらないじゃない。
「……」
……やれやれ。
聞いたわよ、本当に色んな所に迷惑かけてきたみたいね、デューク・マルト。
「……」
ヴィオにスペードに、メック……時空警察に行った、あなたのコピーたちが言ってたわ。
貴方が消えた後、あんなにコピーのデュークが自分を増やし続けたのって、寂しかったからなんだって?
「……」
ごめんね、ちょっと笑っちゃった。だって、よりによって貴方を増やしたのよ?なんか面白いなーって。
……なによ、局長だってそうじゃないですかーって突っ込み……。
「……」
……なんだ、しないのね。
……でもねデューク、あれから貴方がやろうとしてた事って、一番効果的だけど、私が一番嫌いななやり方ね。
「……?」
貴方、全てに蓋をしようとして、逃げ出そうとしてなかった?
「……」
中途半端に閉じておいた蓋って、いつか取れてしまうものなのよ。特に……ね、何が言いたいかは分かるでしょ。
「……!」
そうやって逃げようとしても、もう駄目。
「……!!」
デューク……私の目を見て。
「……!!」
見なさい!見てって言ってるでしょ、もう我がまま!
「……!!」
………!!!
「!!!!」
…コホン、これは局長命令よ、私の目を見て。
「……」
「……!!」
デュークのバカ!!!!
「……きょ……」
デュークのドジ!デュークのマヌケ!デュークのポンカン!
「きょく……ちょ……」
どれだけ私に甘えてばかり……!!
「局……ちょ……う……」
このバカバカバカ!!!!
デュークの弱虫!!
デュークのアホー!!!
「局長……」
デューク!!!
どうして私を……もっと美人に作ってくれなかったのよ!
「………え………?」
私の創造主でしょ!?もっと後の事考えて作ってよ!!!
「……な、な……にを……?」
…ぷっ……あはははははははははは!!
いやー、久しぶりにデュークをからかうとスッキリするわねー!
「ど……どうしたん……です……か?」
どうしたもこうしたも、当然じゃない!
デューク、ずっと悩んでたんでしょ?きっと私が普通の人間と違う事を、自分のように悩んでいたんじゃないかーって。
だけど一つ言っておくわね。私は、貴方の思い通りにはぜーったい動かない人間なんだからね。
「……局長……?」
当たり前よ。私は、今ここにいて、こうやって局長やって皆に威張れてやりたい放題できる事が凄い嬉しく思ってる。
だってそうじゃない?ブランチとか蛍……ケイちゃんとかにも出会えたし、栄司にミコは五月蠅いけど、郷ノ川先生たちや狐や狸、ムジナにカワウソ。生まれなかったら、こんな仲間と巡り合えなかったかもしれないのよ、私。
…そ、れ、に!!!
「………ふぇぇっ!?」
こんーな無敵で無茶苦茶な助手までいるんだもん、こんな幸せ、金輪際無いわよ?
「きょ、局長……
ふ、ふふ、はは……
あははははは……う……う……
うわああああああああああああああああああああんんんん!!!」
…ふう、やれやれ。
「うああああああああああああああああああああああごめんなさああああああああああああいいいいいい!!!!
うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!!!!
きょくちょおおおおおおおおおおおおおごめんなさあああああいいいいいい!!!!!
うわああああああああ!!」
……何が全知全能よ。全く、どこまでも甘えん坊で泣き虫なんだから、デュークは。
いいのよ、思いっきり泣いて。この局長に、全部出しちゃいなさい……。
「うわあああああああああああんんん!!!!