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138.時の輪を繋げ・幕間 思惑と共に

1.陽元ミコ、郷ノ川・W・仁、月影龍之介 in 現代


陽元ミコは、予知能力を持つ探偵である。

母親の家系において代々受け継がれている陽元家の不思議な能力を、彼女もまた自らのものとして仕事などに大いに活用している。自らが様々な「予感」や「直感」で感じた事は、それを自分の意志で行ったり相手に行わせる事で確実に実現させる、いわば未来を創生するほどの力を有する能力だ。あのデュークですら、自分の生まれた「未来」への影響から彼女に一目置いているほどである。

だが、それは裏を返すと彼女が一度自信をなくし、悲観した未来も実現してしまう可能性を大いにはらんでいるという事にもなる。ちょうど、深夜の町の道路で車を運転する今の状況のように。


「…引き返す?」

「なんかうち、嫌な予感がしてならないんじゃ…」


彼女の大親友である恵に、再び大変な事が起きたかもしれない。先程病気が一気に完治し、見事に悪の陰謀から生還を果たしたはずの彼女が、またもや夜の工場で騒動に巻き込まれている、そんな予感が彼女をよぎったのだ。とは言え、ただこのまま引き返すと言う訳にもいかない。狭い車内に乗り込んでいる二人の医者…郷ノ川院長と龍之介副院長という二人の動物病院のプロフェッショナルは、明日も早くから仕事を抱えている。彼らを一旦自宅を兼ねている病院へと送った後、改めて彼女は戻ろうと独り言のように呟いた。

しかし、郷ノ川医師の発言にミコは一瞬だけ怒りを覚えた。どうして仲間が危機的な状況なのかもしれない時に、わざと見放せと言うのだろうか。このまま帰れば、それこそ探偵局が…


「ミコちゃん、あれは探偵局の問題だ。俺たちが入ったら、それこそ滅茶苦茶になっちまう」

「いや、それもそうじゃけどのぉ…じゃけえうちらが行かんともっと…」


…お前が自信を持たずに、誰が探偵局を救えるのか。

その一言に、ミコははっとした。昔、同じような事を兄に言われた事がある。部活か何かの大会前日、自信が持てずに失敗してしまう事ばかり考えていた事がある。現にその日の練習はメンバーそろって本調子が出ず、本版が危ぶまれると言う事態寸前にまでなってしまった。そんな彼女に、兄はもっと自信を持てと告げた。当然持てるはずは無いと彼女はすぐ言い返したのだが、それなら絶対に明日は完敗する、と兄は冷静な口調でそれに答えたのだ。

今ここで自分が諦めてしまえば、それこそ未来もその方向へ傾いてしまう。予知能力と言うのは自分だけでは無い、仲間たちがどう動くかの未来も示す方位磁石。一度それが狂ってしまえば、運命と言う船は理想の目的地へとたどり着く事は出来ず、沈没してしまうかもしれない…。


そんな彼女の事を、まるで勝利の女神のようだ、と言ったのは龍之介であった。


「面白い事言うじゃねえか」

「何だかそういう気がしてきただ。ミコどんは、信じればそれが現実になる凄い力を持ってるべ。デュークはんでも敵わねえ、勿論オラたちもだ」


だから、彼らを信じてやってほしい。


…その一言に、ミコは彼らの言葉を受け入れる事にした。正直「女神」扱いされて舞いあがらない訳は無い。

信号が青に変わるや否や、舞いあがった彼女はアクセルを全開に入れ、高速で二人の医者を目的地へと送り届ける事にした。どうやら、女神は女神でも彼女は少々荒っぽい「戦いの女神」なのかもしれない…。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


2.『デューク・マルト』、アナザー丸斗恵 in 時空警察特別局


ただいまー、デューク!

「お疲れ様です、恵捜査官」


…やっぱり捜査官って言うのはなかなか慣れないわね…。ま、向こうの私よりも、こっちの方が偉いんだけど。

「それもそうですね…恵局長は探偵局、恵捜査官は時空警察ですし」

エリートよエリート。もっと尊敬しなさい?

「寝坊したり居眠りしたりしなければもっと尊敬されると思いますよ、僕は」

あれは仕事時間が早いのがいけないのよ…9時に起きれる訳ないじゃない…。

「だからってお昼に出勤するのは勘弁して下さい…」

分かったわよ、明日は11時に起きれるように頑張るから!

「…ま、まあ頑張って下さいとしか…」



…それにしても、あの二人がまさかデュークの生みの親だったなんてね…。

「他にも何名かいますが、今この場所で生き残っているのはあの二名だけでしょう。僕が観測した限りですが…」

クリス捜査官も悩んでたわよ、あの二名がどこにいるのか。まさか探偵局とドンパチやってるなんて思いもしないでしょうね。


「確か今、サンタクロースのレナがそちらに向かっているそうですね」

ええ、貴方が昔辿った道どおりに事は進んでるみたいよ。


なんか、昔と比べてデュークは随分計算高くなったんじゃないの?今回だって二人の秘密、教えてくれなかったじゃない。

「すいません…あまり語らない方が良いかなと思いまして」

でもねー、私ってドラマとか結末知らないとなんか落ち着かないのよ。本当にそれでいいのかとかハラハラし過ぎちゃって…。

「恵さんらしいですね。でも、今回は敢えて誰にも語らなかった事もあります。

 僕たちは、この後何が起こるのか結末を知っている立場です。もしこれからどうなるのかを知らない登場人物たちに、それを教えてしまったらどうなると思いますか?」

…ドラマの人物に…?…それってかなりまずくないかしら。ストーリーが滅茶苦茶に…


「そういう事です。時空警察において、過去への干渉を最低限にしている、必要な交流以上の事をした場合はその記録を全て抹消する。恵さんにも前に説明しましたが、覚えてますか?」

覚えてたけど、そう言われると確かに危険すぎるわね…。

『今』のデュークの立場って結構楽かなって思ってたけど、案外動けないものなのね…。


「ええ、特に現在は犯罪組織が活発に動いている時期です。彼らの被害を食い止めなければならないという使命もありますが、それと同時に歴史を変えてはならないと言う事もありまして…」


なるほど、直接的に動けないのはそう言う事があったのね…。


…ねえ、もしかしてこの特別局って、デュークたちを閉じ込めるために作ったんじゃ…


「その質問は、お預けさせて頂きます」


なーんだ、ケチ。

「時間の流れと言うのはケチなものですから。もしここで僕が言ったとしても、その記録は恵さんからすぐに消す事になりますので」


…まあ、とりあえず私の次の出番っていつになりそう?


「そうですね…あともう少しでしょう。『犯罪組織』が本格的に行動を起こすはずです」


…デュークはどうするの?


「僕は、何も出来ません。この件に関しては、恵さんに一任するつもりです。この未来がどうなるのかは、皆さんにかかっていますから」

なんだか随分出来たシナリオじゃないの、デューク?

「未来から過去を眺めると、時々そういう考えになる事が僕もよくあるんです」


…分かった、その時になったらまたこの話を聞かせて。

大丈夫、デュークやこの未来は、私が絶対に守ってみせるわ。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


3.「デューク・マルト」、? in 犯罪組織


オリジナルとの久しぶりの遭遇から、随分な時間が経過したようです。ようやく彼らも、僕たちの事について触れる機会を得たようですね。

さすがオリジナル、あれだけ難しい内容を探偵局や他の皆様にしっかりと語っている。さすが、僕たちの生みの親ですね。

だからこそ、この場所に戻ってほしい。今は「犯罪組織」呼ばわりしているようですが、それでも自分の故郷に戻って来るのが彼の運命でしょう。いや、そうでなくとも、僕たちがその運命を創りあげると言う使命があります。


そうですよね?


「ええ。私たちも随分待たされたものよね…」


全くもって、同感です。

正義の心ですか…よく分からないものに目覚めて、僕と戦って、どこかへ逃亡して…。ようやく居場所が分かったと思ったら、探偵局の皆さんと共に帰還を拒み続け、そして挙句の果てに連絡すらつかなくなる。本当に困った人ですよ、オリジナルは。


「でもさー、どっちにしろ『貴方』なんでしょ?」


…まあ、それを言われてしまってはあれですけどね。ただ、いくら仲間とはいえ我慢の限界と言う物はある、ですよね?


「全くよ…勝手に逃げ出したりなんかして、『デューク』はずっと私の仲間。あの研究所からの運命。あ、もちろん貴方も他の貴方も全員含めてよ」


ありがとうございます。


聞いたか、皆?「ええ、僕たちも全員、皆さんの事を仲間だと思っていますよ」「当然、僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」「僕もです」…


…僕が言うのもあれですが、改めてみると随分壮観な眺めですね。昔はたった一人だった僕が、気付けばこんな数になるなんて思いもしませんでした。もう万単位ですから。


「それに、地下工場もじゃんじゃん作ってるんでしょ?数千万くらい」


ええ、前より少しだけスピードを上げてみたんです。「オリジナルのおもてなしのために、ね」「僕たちも嬉しいですから、きっとオリジナルも」「それに仲間たちも」「嬉しがるでしょう」「全くですね」「全くですね」「同感です」「ふふ…」「全くですね」「全くですね」「ふふ…」「同感です」「全くですね」「全くですね」「全くですね」「ふふ…」「全くですね」「同感です」「同感です」「ふふ…」「全くですね」「全くですね」「ふふ…」「同感です」「全くですね」「全くですね」「同感です」「ふふ…」「全くですね」「全くですね」「ふふ…」「同感です」「全くですね」「全くですね」「全くですね」「ふふ…」「全くですね」「同感です」「同感です」「ふふ…」「全くですね」「全くですね」「ふふ…」「同感です」「全くですね」「全くですね」「同感です」「ふふ…」「全くですね」「全くですね」「ふふ…」「同感です」「全くですね」「全くですね」「全くですね」「ふふ…」「全くですね」「同感です」「同感です」「ふふ…」「全くですね」「全くですね」「ふふ…」「同感です」「全くですね」「全くですね」…


「で、いつ向かうつもりなんだい?」「早速行く?」「僕たちの準備は出来てるよ?」「僕もだよ?」「僕もだよ?」「僕もだよ?」「僕もだよ?」「僕もだよ?」「僕もだよ?」「僕もだよ?」「僕もだよ?」「僕もだよ?」「僕もだよ?」「僕もだよ?」「僕もだよ?」「僕もだよ?」「僕もだよ?」「僕もだよ?」「僕もだよ?」「僕もだよ?」「僕もだよ?」「僕もだよ?」「僕もだよ?」「僕もだよ?」「僕もだよ?」「僕もだよ?」「僕もだよ?」…

まあ落ち着いてくれ、あまり焦っても良い事は起きないし、過去へはいつでも向かう事が出来る。それに…ですよね?


「そうよ、私の準備がまだなのに先に行かれても…」

「そうでしたね…これは失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」「失礼しました」…


確か、探偵局の局長とずっと会ってみたかったようですね…。でも、僕もその気持ちは分かります。


「ありがとう、デューク。


彼女の名前は『マルト・メグミ』。会わない訳にはいかないでしょ?」


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