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131.取調室にて

「…どうだ、天丼の美味さは」


「…カツ丼じゃないんですね」


「テレビの見過ぎだ。それとも、お前が天丼を欲しがってたからじゃないのか?『時空改変』でな」


「いえ、それは…」


「お前は何でも出来て羨ましい…手錠をかける意味もないからな。

 時空改変で逃げ出そうと思えば、すぐに俺から記憶を奪って逃げだす事も出来る。ついでに、そもそもお前が犯罪者でない、殺してなんかいないと思えばいい。

 それなのに、お前は何故この部屋に入った?」


「犯罪者、ですから」


「だろうな…。お前はどこまでも、いい面でも悪い面でも正直だ。

 …偽者が言っていた。俺が不意打ちを食らったって、あの飲み会の時に恵の奴が言ってたよな」


「突然動きが弱まって、その隙にあの出来損ないに…」


「奴が言ってた。姉さんの顔が、とても綺麗だった、ってな」


「…」


「鼻で笑ってやがった。ぶちのめしたかった。だが、そんな力はもう無かった」


「…」


「いいぜ、黙秘権はある。だが、俺の言葉を聞かない権利はお前には無い」


「強引ですね…」


「当然だ、そうやって俺は生きてきた。姉さんが死んだ後、親戚とか言う奴からの金の工面も止まりやがった。生きていくために色んな事を必死でやったからな…ゴマすりにおだて、嫌な連中の顔を死ぬほど見て来た」


「それで…」


「お陰で今となっては、どの業界に行っても必ず一人俺がいる。金の亡者、権力の亡者となっている俺がな。ま、悪いのはあいつらだ。反動だよ」


「…」


「…今の俺を作らせた理由も聞きたい。しかし、それよりももっと聞きたい事がある。

 恵、あいつは一体何なんだ?」


「!」


「顔色が変わったな…。どうして時空改変を使わない?」


「どうせ分かると…」


「そればっかだなお前。

 だが、俺には分からない。何故恵はあれほど俺の「姉さん」に似てるんだ?

 名前も、顔も…む、胸も…」


「それは…」


「他人の空似か?まあいい、似た人は三人くらいいるからな。

 …力使ってでも誤魔化そうとするなら、俺は深く言わない。社会的に抹殺出来ても、お前らは能力が凄まじいからな」


「…」


「…」


「…どうしたんです…か?」


「…お前は仲間だ…俺に様々な情報を与えてくれた仲間だ。

 だから、今までどうしても出来なかった。だがな、この事を知った以上、我慢は出来ない…」


「…」







「…」


「…俺の姉さんは、今のような痛みすら感じないまま死んだ。『メモリーツリー』に刻まれた過去に、お前のような嘘は無いらしいからな」


「怒らない…んですか」


「お前…なんで抵抗しないんだよ…」


「…」


「認めたってことなのか…」


「」


「何とか言えよ…」


「すいません…」


「なんで抵抗しないんだよ…」


「それは…」


「なんで俺の姉さんみたいな事しやがるんだよ!」


「…」


「ふざけるんじゃねえ!俺の姉さんは何にも出来ないまま死んだんだ!

 お前が殺したから…お前が…お前が…

 姉さんを…恵姉さんを返せ!!」


「うぅ…うっ…!」


「返せ!今すぐ返しやがれ!」

「おいよせ、もう止めろ!」

「うるせえ!お前も俺なんなら!」

「だからだ!こんな見苦しい真似、自分の前で見せるな!出ろ!」



「…大丈夫か…?」


「す、すいません…」


「頑丈な眼鏡だな、あいつ8発もお前の顔面蹴ってたのに、なんにも傷一つ…当然か」


「…貴方は…怒らないんですか…?」


「お前じゃなかったら、今頃有田栄司は、殺人犯を社会的に殺してる頃だ。

 命を奪うような奴と一緒の事はしたくないからな」


「どうして…」


「卑怯だぜ、お前。いくらやっても絶対に消せないんだもんな…。それに、『仲間』だ。

 どうやっても、お前を敵に回す事が出来ない…。


  …だから、もう一度教えろ。俺の姉さんは、何故殺された?」



「…完全人間プロジェクトって、ご存知ですか…?」

「?」

「…分からないですよね…あの場に、栄司さんは誰もいませんでしたから。

 …教えましょう、僕の過去を」

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