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失恋と晴天の屋上

作者: 犍陀多

あんなに強い雨が降っていたのに、いつの間にか晴れていた。

天気予報の嘘つき・・・・。

今日は一日中雨だと信じ切っていた私は、あまりに呆気なく晴天へと変わった天気が気に入らなかった。


雨の陰鬱な雰囲気の中、今のこの気分に同情してもらって一緒に泣こうと考えていたのに、これでは意味がない。

しかし、上がってしまった雨はどうすることも出来るはずがないので仕方なく晴天を見上げながら、私は気分を落ちつかせる為に屋上で授業をサボる事に決めた。



一緒に泣いてもらおうと言うのは、他でもない。

私は失恋をしてしまった。だから、思いっきり泣いて綺麗さっぱり忘れてしまおうとしてこの屋上まで来たのだ。

なのに、どうした事か青い空に白い雲がフワフワと何とも気持ちの良い天気になってしまっていた。


そんな天気を眺めながら、急に今の自分が可笑しく思えて少し笑ってしまった。

すると、給水塔の上から声が降って来た。

「どうしたの?」

まさか、人が居るなんて思いもよらない状況に私は声がした方を向いて、固まってしまっていた。

そこには同じクラスの藤村君が私を見下ろしていた。

「別に、何でも無いよ」

私は、咄嗟に何もない振りをした。

「さっきから、ずっと空眺めてたから何かあったのかと思って」

全部見られていたのか、初めから声を掛けてくれたらよかったのに・・・。

「ほんとに何でも無いんだ。授業サボりたかっただけ。藤村君もサボり?」

「うーん。俺もそんなとこかな」

何だか、歯切れの悪い答えが返ってきた。人の事は言えないのだけれど。

藤村君とはあまり話をした事はなかったけれど、こんな時は誰かと会話をして気を紛らわしてみたくなっていた。


「あの、藤村君は泣きたい時なんてある?」

「泣きたい時?時々はあるかな・・・。もしかして泣きたい程の事があったのか?」

こんな質問するんじゃなかったと激しく後悔していた。

しかし、黙っている訳にもいかず私は観念した。

「・・・まあね。まさかバレるなんて・・・」

「俺、勘がいいからね。まぁ、とにかく泣きたい時はどうするかって事だったよな。そん時は思いっきり泣くんだよ。泣きたいだけ。スッキリするぜ」

「思いっきり泣く・・・」

「そう。但し泣いている間に、自分が泣いている原因や理由なりをちゃんと忘れるってのが条件」

「原因を忘れる?」

「まぁ、記憶から消去なんて事は難しいだろうから、泣く事で自分に力をつけるんだよ。そうすれば、少し強くなった自分で居られると思わない?」

理屈は滅茶苦茶ではあるけれど、その通りかもしれないと思った。

「もしかして、経験あり?」

「多分ね」

また、あやふやな答えを返してきた。だけど私はその言葉で少し元気が出てきていた。

「ありがとう。相談に乗ってもらっちゃって」

「どういたしまして。んで、強くなる為にこの屋上を選んだ訳か。じゃ、邪魔者は消えるとするよ。思いっきりどうぞ」

そう言って、藤村君は屋上から去って行った。



そして私は一人、屋上に残された。心の中で藤村君のアドバイス通りにしてみようと決めていた。




青空の下。


屋上。


私は泣いた。


強くなった私である為に。

失恋した時は思いっきり泣きましょう。そしてまた新しい恋を探すのです。

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