第2話scene3
休み時間が終わり、授業が再開された。
教室は、表向きはいつも通りだ。
教師の声。
ノートを取る音。
椅子を引く小さな物音。
だが、水無月実花の中では、警報が鳴りっぱなしだった。
(……まずい)
席に戻りながら、周囲を警戒する。
(このままじゃ……)
破壊神――中谷省吾。
勇者十傑。
そして、その一人が、すでに破壊神側についているという現実。
(……十傑が揃うまで、私が持たない)
身体的な意味でも。
精神的な意味でも。
(そもそも……)
ちらりと、省吾を見る。
何もしていないのに、
空気が、歪んでいる。
(破壊活動……)
(告白の返事攻撃……)
どちらも、致命的だ。
(学校も……)
(私の身も……)
このままでは、確実に壊れる。
水無月は、静かに結論を出した。
(……逃げよう)
正面から向き合うには、準備が足りない。
勇者十傑を集める時間が、どうしても必要だった。
(ごめん……)
誰にともなく、心の中で呟く。
水無月は、そっと手を挙げた。
「先生……体調が悪いので、早退します」
教師は心配そうに頷く。
「無理するな。気をつけて帰れ」
「はい」
鞄を持ち、
何事もなかったように教室を出ていく。
省吾は、その背中を見ていた。
声をかけることもできず、
席を立つこともできず。
ただ――
「……」
水無月の席が、空いている。
それだけで、胸の奥が、少しだけ冷えた。
(……返事)
まだ、聞けていない。
省吾は、寂しそうに、
彼女の席を見つめ続けていた。
教室には、
破壊神の力も、
勇者の覚悟も、
今は静かに沈んでいる。
だが、その沈黙は、
嵐の前触れに過ぎなかった。




