第2話scene1
翌朝の学校。
朝の教室。
ガラッ――
というより、ガゴンッという音とともに、省吾は教室へ入ってきた。
ドアノブが、ひしゃげている。
床のタイルに、細かいヒビ。
通りすがりの机の角が、なぜか欠けている。
中谷省吾は、何も気づかない。
「……おはようございます」
普通のテンションだ。
本人は、ただちょっと元気なだけのつもりだった。
そして――
省吾の視線が、自然と一点に吸い寄せられる。
水無月実花。
席に座っている彼女は、明らかに不機嫌だった。
というより――
「……中谷殺す……中谷殺す……中谷殺す……」
小声で、呪文のように繰り返している。
(……こわっ)
省吾は一瞬、足を止めた。
黒いオーラが見える気がする。
背中が、ひやりとした。
(……でも)
次の瞬間。
(返事、まだだし)
それだけで、全部どうでもよくなった。
省吾は一直線に、水無月の元へ向かう。
「水無月さん……」
その声に、水無月の肩がぴくりと動く。
「俺の告白の返事を――」
「近づくな」
低い声。
「変態破壊神!!」
「えっ」
次の瞬間、水無月の手に剣が現れた。
「ちょ、ちょっと――」
説明する間もなく、
剣は容赦なく振り下ろされる。
――ガンッ!!
しかし、刃は省吾に触れる前に、
粉々に砕け散った。
光の粒子が、ぱらぱらと床に消える。
「……っ!」
水無月は歯を食いしばる。
(また……!)
省吾は、きょとんとしたまま首をかしげた。
「……こ、告白の……?」
まだ続けようとしている。
(この人、心折れないの……?)
そのとき。
「水無月!!」
教室に、怒鳴り声が響いた。
担任教師――原澤銀次郎が、黒板の前から睨んでいる。
「授業中に剣を振り回すな!!」
「……?」
水無月は、一瞬きょとんとしたあと、
すぐに何事もなかった顔になる。
「なんのことですか?」
両手を広げて見せる。
「……何も持っていませんけど?」
確かに。
そこには、剣の欠片すら残っていない。
「……」
原澤は目を細め、省吾を見る。
「……中谷」
「はい!」
「……お前もだ。席に戻れ」
「はい!」
素直に戻る省吾。
水無月は、内心で小さく息を吐いた。
(……破壊されて、助かった……)
剣が残っていたら、言い逃れはできなかった。
だが――
ちらりと、省吾を見る。
何もしていないのに、
空気が、圧迫される感覚。
(……破壊神……)
(というか……)
(中谷君の、あの圧……)
想像以上に、恐ろしい。
一方その頃、省吾は自席で考えていた。
(……返事)
(今日こそ、聞けるよな……?)
教室には、
殺意と恋心と、
自覚ゼロの世界崩壊要因が、
仲良く同席していた。




