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第39話 囮(おとり)作戦   (2580)

 アルビン隊長に率いられる事になったサラル討伐隊は増援部隊を加えて態勢を立て直し、サラル掃討作戦を再開した。この頃からサラルがユニコーン部隊に近づく事は無くなり、それどころか討伐隊の接近を察知すると早々と逃げ去る事が多くなり、サラルの群れを仕留める事は難しくなっていた。討伐隊は昼間のうちに偵察用ドローンを飛ばして探索してユニコーン型ロボを送り込み、夜間は平地に複数の陣地を設置しサラルの襲撃を防ぎつつ宿営するという戦術をとる事になった。


 今回の討伐隊の目的は、山岳地帯で出来る限り多くのサラルを退治し、ノードやカナクからサラルを遠ざけるという意図での進撃だった。しかし西の海から渡来し繁殖しているサラルの数は2万匹を超え、これまで討伐隊が仕留めたサラルの数は千匹に満たなかった。偵察ドローンの調査では、サラルの群れは島の中央部から西の山岳地帯に多く、サラルをこの島から追い払うためには、西の山岳地帯に乗り込みさらに多くのサラルを退治する必要があった。討伐隊はサラルの群れを求めて山岳地帯をさらに西へ進む事になった。


 2カ月後、進撃を続ける討伐隊は島の中央部に広がる大きな湖に到達し、その湖の周囲にサラルが群れているのを発見した。数キロ四方の湖には南方向に流れる幅二十メートル程の川があり、向う岸の崖下付近にサラルが群れているのをドローンが確認した。先頭部隊は川に簡易橋を架けて向う岸に渡る事になった。十数台のユニコーン型ロボットを先に向う岸に渡し、その後隊員を乗せたジープが橋を渡っていく。ジャック率いる小隊のジープも簡易橋を渡る事になった。

 その時、山蔭から黒い雲のように見える無数のサラルが現れ、隊員達の乗り込むジープの隊列に襲いかかった。ジャックのジープにもサラルが群がり金属棒を振り回した。隊員たちはジープの金網越しにサラルの群れに銃を発砲したが、ジープの周りに山のように取りつき金属棒で暴れ回るサラルの襲撃により、ジープは破損し隊員たちに多くの死傷者が出る事態となった。川の向う岸のユニコーン型ロボは隊員の居るジープに向けて機銃を発砲する事が出来ず、向う岸に取り残され操縦不能となった十数台のユニコーン型ロボットはサラルの格好の標的となり次々と破壊される事になった。すぐに先頭部隊の銃声に気付いた後続部隊が到着し、戦闘部隊のジープに群がるサラルに一斉射撃を浴びせた。サラルは後続部隊にも襲いかかってきたが、後続部隊はユニコーン型ロボと隊員の一体となった発砲で数多くのサラルを撃ち落とした。サラルの群れはジープの周りに百近い死体の山を残して去って行った。


 討伐隊はこの戦闘で死傷者37名という多くの犠牲者を出し、ユニコーン型ロボとジープも大きな被害を被った。先頭部隊の一員となっていたジャックはこの戦闘中にサラルの襲撃を受け重傷を負った。アルビン隊長はカナクに状況を無線連絡し増援部隊を要請した後、幹部隊員達と今後の作戦を協議した。

「ユニコーンを隊員達から離れた位置に動かしたのが誤りだった。今考えればユニコーン型ロボと操縦者の乗り込んだジープをセットにして渡らせるべきだった。私の責任だ」

「いやユニコーンを先に向う岸に渡らせるのは当然の作戦です。サラルがユニコーン型ロボと隊員の乗り込んだジープが離れたすきを狙ってくるというのは、誰も思いつかなかった。隊長の責任ではない」

「ユニコーン型ロボの配置を含めて今後の作戦について考える必要がある」

「それにしてもサラルには知恵がある。これ迄サラルの襲撃はユニコーンだったが、これからは操縦隊員の乗るジープが標的になるだろう」

 幾つかの意見が出たものの、これと言った対応策が見つからない中、マテオという若い隊員が、ジープにダミーの人形を乗せてサラルを集めまとめて退治するのはどうかという提案をした。

「なるほど(おとり)作戦という事か、考え付かなかったが、良いアイデアかも知れない」

 アルビン隊長はその案に賛成し実行を指示した。空調スーツの中に石を包んだぼろ布を入れ人型のダミーを作り数台のジープにそれぞれ3体を載せてフェイクジープ部隊を編成する事になった。

 この数日後、この作戦は早速実行され、ダミーの隊員を乗せた数台のジープの隊列が遠隔操作で湖の周辺をのんびりと走行した。そのジープの隊列めがけて殺到したサラルの群れに、待受けたユニコーン型ロボと隊員達が一斉射撃を行い、数十匹を仕留める戦果を挙げた。

 アルビン隊長は負傷したジャックと面会した。

「大変だったな、しかしジャック隊の奮戦はカナクの誇りだ、良くやってくれた!」

「勇敢な部下の隊員達がその賞賛に値する」

「で、そっちの傷はどうなっている?」

「サラルどもに右目と右手をやられた、しかし左目と左手があるから問題ない。すぐに復帰できる」


 しかし、警備隊の負傷者リストにしっかり入っていたジャックは、数日後に仲間に見送られてカナクへ後送され、その後ノードへ帰還する事となった。そしてこの機会に、ジャックの妻のオリビアやアルビンとヘンリーの妻たちも4年ぶりにノードへ帰還する事になった。多くの隊員達は三人の妻たちに感謝し、これからは給食が不味くなると残念に思いつつ見送った。

 討伐隊はその後も、様々な(おとり)作戦を使い、湖周辺を拠点としてサラルを仕留める作戦を続ける事になった。卑怯な作戦ではないかと言う意見もあったが、隊員の犠牲を少なくして効率的にサラルを仕留める方法としては致し方のない方法だった。

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