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第37話 ユニコーン型ロボット (2579)

 カナクではドーム周辺に現れるサラルの群れが年々増加していた。投石を繰り返すサラルは隊員や警備ロボットが近づくと素早く逃げ去り、別の地点に現れては投石を始めるという状況が続いていた。カナクは明らかに警備隊員の数倍はいるサラルに取り囲まれる状況となっていた。ノード政府はサラル防衛の拠点としてのカナクの重要性を認識し、カナクへの警備隊の派遣を年々増強していた。その結果カナクの警備隊員は三百名を超えることになった。この間オットー隊長は70歳の定年を迎えノードに帰還し、アルビンがカナク警備隊の隊長に就任していた。


 ノード政府はサラルがノード周辺にも出現した事に危機感を持っていたが、この島で増殖を続けるサラルを退治する方策を持っていなかった。十年前の「サラル討伐隊」は攻撃用ドローンと新型ジープの効果によりサラルを西の海の向こうへ追い払い、島の西端にニューLAを建設した。しかしその後、再び西の海から現れたサラルの逆襲により大きな被害を受けて撤退する事になった。警備隊が、十年前の「サラル討伐隊」と同様の攻撃用ドローンと新型ジープの編成で山岳地帯のサラルに向かえば、再び同様の被害を受ける事は明らかだった。攻撃用ドローンは一匹のサラルの体当たりで撃墜され、その損害は攻撃用ドローンの生産にかかる労力に見合うものではない。サラルを撃退する実績のある警備ロボットはノードやカナクの周辺を守るだけで、山間部のサラルを討伐する事は出来ない。


 ノード政府がサラル討伐の手段を模索する中、カーソンという技術者が「NASFに保管されていた小型ロボットがサラル討伐に有効ではないか」という提案をした。カーソンは十数年前にNASFからノードに移住した技術者で、それ以降長年にわたり警備ロボットの製造・修理を担当してきた優秀なメンバーだった。サラル討伐の新たな手段を求めていたノード政府はカーソンの提案に興味を示し、代表団をNASFに派遣してその小型ロボットを含め、サラル討伐のための技術的協力を求める事になった。


 ノード政府から派遣されるカーソン達代表団は、島の東海岸のニューヨークから船に乗り込み、大西洋を南下していった。3日後、南の大陸の島に到着し、セントローレンス川を遡り、オンタリオ湖南岸から南の大陸に上陸し、暴風雨の中アパラチア山脈中腹のNASFに到着した。代表団は旧知のNASFの代表者達に迎えられ、施設内の武器貯蔵倉庫に案内された。倉庫内には、戦闘機から戦闘車両・各種重火器・弾薬など様々な武器が保管されており、NASFの技術者からそれらの武器の性能と特性についての説明を受けた。カーソンはその中に例の小型ロボットを発見した。NASFの説明によれば、その小型ロ

ボットは21世紀に開発された戦闘ロボットで、上部は(つの)のように見える機銃、下部はキャタピラーの四輪駆動の馬型という姿から「ユニコーン(一角獣)」と名付けられていた。NASFの技術者と検討を重ねたノードの技術者は、NASF政府の正式許可を得て、そのユニコーン型ロボットの実物一台とその他対サラルの戦闘に役立ちそうな武器類、製造修理用機材等をノードへ持ち帰る事になった。


 一月後、ノードに帰還した代表団はNASFから持ち帰った各種武器類をノード政府に提出し、特に山岳地帯のサラルを討伐するために有効なユニコーン型ロボットの採用を提言した。高さ3m重量2.4tの警備ロボットに対し、このユニコーン型ロボットは高さ1.7m重量0.3tで小型軽量で簡明な構造をしており、警備ロボットの十倍の速度で量産できるタイプだった。ユニコーン型ロボットの上部には頭部の2つの赤い目の中の赤外線センサーと連動した機銃が装備されている。下部に取り付けられた四輪駆動のキャタピラーは山岳地帯の高低差のある地形でも走行できる性能があった。バッテリー電力で作動し、その電力はバイオ燃料を使用する発電機から供給される。カナクでサラルとの戦闘が続く中、ノード政府は工場ドームでのユニコーン型ロボット製造の開始を決定し、100台の製造を全力で目指す事になった。それ以降、ノードの工場ドームでは昼夜を問わず24時間体制で働く多くの作業員の姿が見られるようになった。


 一年半の後、多くの作業員と技術者の努力によりユニコーン型ロボット100台の生産目標が達成された。報告を受けたノード政府はユニコーン型ロボットを装備した部隊をカナクに派遣し十四年ぶりの「第二次サラル討伐隊」としてカナクの南に続く山岳地帯に侵攻させる事を決定した。ユニコーン型ロボット製造のチーフとなったカーソンも、自らこの討伐隊の隊長として参加する事になった。ノードを出発した6艘の船は、ユニコーン型ロボ50台、新型ジープ50台と操縦要員を含めた150人の警備隊員を載せカナクの港に到着した。上陸した50台のユニコーン型ロボの行進に、カナクの警備員達も驚きの声を上げた。ユニコーン型ロボットの外見は「ターミネーター」という古い映画に出てくる殺人ロボットに似ていた。サラル討伐隊のカーソン隊長は、出迎えたカナク警備隊のアルビン隊長と固い握手を交わした。


「出迎えに感謝する。カナク警備隊のこれまでの奮闘には、ノード中の人々が感謝している。今後もサラル討伐のために力を貸してもらいたい」

「カナクへの着任に感謝する。聞いてはいたが、このロボット戦隊には驚いた」

「このロボット戦隊はNASFに保管されていたものを、ノードの工場ドームで総力を挙げて製造したものだ。山岳地帯を走り回りサラルを追い詰め撃滅するのに役立つと考えている」

「このロボット戦隊は、きっとサラル討伐の先頭に立って活躍してくれるに違いない。カナクの警備隊を代表して大歓迎する」


 その後カナクの警備隊員達は、カーソン隊長以下のノードの技術者からユニコーン型ロボットの操作法のレクチャーを受け、実戦を想定した訓練を開始した。カナクの警備隊員達はユニコーン型ロボの性能に驚嘆し、これでカナクの警備隊の人的被害が少なくなることを期待した。

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