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第34話 ルーシーとリッチの戦い   (2571)

 ノード政府はサラル対策として、カナクとノードとニューヨーク周辺を安全に保つ事を優先して考えていた。それらの地区に侵入して来るサラルを防御するのに最も有効な対策は警備ロボットの配備だった。そこでノードの工場ドームでは警備ロボットの増産が最優先されていた。この時点で、警備ロボットの各地区への配備はノードに50台、カナクに12台、ニューヨークに12台という状況だった。


 警備ロボットでの防衛の重要性を認識したノードの技術者は、警備ロボットの改良を試みた。警備ロボットの足回りの6台のキャタピラー、頭部の二つの赤い目と左右の腕の機銃発射装置に変化はないが、改良された警備ロボットは頭の後ろにもう一つ青い目と背中に取り付けた一つの腕にも機銃の発射装置を装備していた。これはこれ迄のサラルとの戦いから、サラルが後方から攻撃してくる事を想定し、警備ロボットの背面を守るため第三の目と機銃を取り付けたという事だ。人型ロボットの背中から第三の腕が伸びているのは異様だが、それだけ対サラルの戦闘に効果的だった。これを新型警備ロボットとして製造する事になり、「三つ目」という名称がつけられた。ノードやカナクやニューヨークの市民は、年々増強される三つ目の新型警備ロボットの姿を見る事になった。


 3年後、カナクでは70歳の退役年齢となったラルフ隊長が、ノード政府から帰還命令を受けノードに帰る事になった。後任は長年ラルフ隊長に従ってきたオットーという名前の実直な幹部隊員だった。リッチとルーシーはカナクの港でオットー隊長や大勢の隊員と共にラルフ元隊長を見送る事になった。ラルフ元隊長は最後まで「カナクに残る」とノード行きを拒否していたらしく、二人の警備隊員に促されて強制連行のような形でノード行きの船に乗り込んで行った。その姿を見て見送りの人達から「ラルフ隊長!ラルフ隊長!・・・」と大声援が上がり、その声援の中、ラルフ元隊長を乗せた船が出航していった。


 この時、リッチとルーシーの自慢の孫ジャックとヘンリーは2年前に任期を終了しノードに帰還していたが、新しくアリスの子エヴァの三男のアルビンが警備隊員としてカナクに着任していた。アルビンは40歳を過ぎ、ノードに妻と4人の子供がいる髭面の大男だったが、リッチとルーシーは「目に入れても痛くない」という言葉がぴったりの溺愛ぶりで、一人の大男に二人の老人が寄り添う様子は周りの人々の微笑みを誘った。

「これが孫のアルビンだ、どうだいこの腕っぷし、こんな立派な男はいないな!」

「アリスの子エヴァの三男のアルビンよ、皆よろしくね!」

アルビンはリッチとルーシーにくっ付かれて、内心かなり不快な思いをしていたが、二人の気持ちを考えると冷たく突き放すことも出来ず、苦笑いを浮かべ、密かに1年の任期が終わる事を待ち望んでいた。


 その頃、カナクでサラル数匹が現れる事件が起こった。5匹のやや小型の若いサラルが昼間にカナクのドーム近くに飛来した。配備された12台の警備ロボットのセンサーに発見された。警備ロボットはすぐには発砲せずに誘い込み、サラル達がドームに近づいたところで防御陣地の警備隊員が一斉に銃撃し3匹が撃ち落とされ、逃げ出した2匹も前方で待ち構えていた警備ロボットの正確な銃撃で撃ち落とされた。5匹のサラルすべてが撃ち落とされたのが確認された。サラル来襲を聞き、リッチとルーシーも銃を持ってドームを飛び出した。(他から見ればよろよろ歩いていると見えたが、当人的には飛び出した。)

しかしリッチとルーシーが現場に駆け付けるより早く、警備隊員達と警備ロボットがサラル退治を完了していた。リッチとルーシーはアルビン達の無事を確認し、再びドームによろよろと帰って行った。ラルフ隊長以下の警備隊は、その夜サラルが報復するために襲来するのではないかと警戒したが、その夜もそれ以降もサラルの襲来は確認されなかった。


 その後もカナクでは、数か月ごとに何度か少数のサラルの侵入事件があったが、警備隊員と警備ロボットは、侵入したサラルを誘い込み包囲して殲滅する作戦で一匹残らず打ち取り、逃げ延びたサラルは皆無だった。


 しかしある日、数十匹のサラルがカナク周辺に現れ、警備ロボットから離れた地点を飛び回っていたがドームに近づかずに去っていく事があった。そしてその夜、警備隊員達が警戒する中、数百匹のサラルがカナクに襲来した。ドーム周辺を守る警備ロボットは多数のサラルに応戦するため、サラルが射程距離に入った時点で早々と発砲を始めた。警備ロボットの正確な射撃で数十匹のサラルが撃ち落とされたが、残りのサラルの群れは警備ロボットの防衛線を通り抜け、警備隊員の待受ける防御陣地の上空に現れ、陣地内に突入し、金属棒を振り回し隊員達に襲い掛かった。

 その時リッチとルーシーは、アルビン達のいる防御陣地の後方に離れ陣地を造り二人だけで立て籠もっていたが、サラルの群れがアルビン達のいる防御陣地に襲い掛かるのを見て、サラルの群れに向けて猛然と機銃の発砲を開始した。たちまち十数匹のサラルを撃ち落とし、仲間を撃たれたサラル達は新しい敵リッチとルーシーの陣地に向かって殺到した。リッチとルーシーはサラルに倒されたが、そのサラル達に前方の陣地から警備隊員達が射撃を集中し数十匹のサラルを撃ち倒した。離れた前方にいた警備ロボットも後退してサラルの群れに接近し、青い一つ目を光らせて正確な銃撃を開始した。包囲され劣勢となったサラルの群れは百匹以上の死体を残し、警備ロボットの上空を飛び越え逃げ去って行った。


 この戦闘でルーシーとリッチを含む五人の隊員が亡くなった。ルーシーとリッチの墓は、アリスの墓の傍に、真ん中にリッチ両側にルーシーとアリスの並びで埋葬された。ルーシーとリッチに助けられた警備隊員達やカナクの人々は、勇敢に戦った二人の老人に最大の敬意を表し長い黙とうをささげた。アルビンはルーシーとリッチに付きまとわれて内心うるさく思っていた事を心から反省した。この戦い以降、防御陣地は横一列だけではなく、前方や後方にも離れ陣地が造られるようになり、サラルが一か所に向かえば、他の陣地から援護射撃ができる体制になった。そしてその防御態勢は、その後のサラルとの戦いで有用性を証明していった。

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