第33話 カナクの防衛
ノード政府は、ラルフ隊長から討伐隊が西海岸から撤退したという報告を受け、対サラルの戦術の見直しについての協議を始めていた。
「数千匹あるいはそれ以上のサラルがこの島に再上陸した事を考えれば、何らかの対策をとる事が必要だ」
「攻撃用ドローンは夜間に多数のサラルに囲まれ、体当たりを受けて全滅したらしい」
「山間部の多数のサラルにどのように対処するか、考え直す必要がある」
「ラルフ隊長の報告によれば、見晴らしの良い平地に警備ロボットを配置する事は夜間に襲来するサラルを撃退するのに有効らしい」
「まずは、カナク周辺に、充分な数の警備ロボットを配備する事が急務だ」
「カナクには、早急に追加の警備ロボットを派遣する」
「ノードには、現在約30台の警備ロボットがあるが、ドラ山の発電所などを守るためにはこれを100台以上に増やす必要がある」
「将来的にはニューヨーク周辺も、警備ロボットで守る必要がある。警備ロボットは200台以上必要だろう」
「全力を挙げて、警備ロボットの増産を指示する」
このときノードでは40年前からの人口増加策により人口が1万9千人に増えていたが、そのうち子供・未成年が1万人、成人で働ける者は7千人程度だった。ノードの工場ドームでは、この働ける成人を総動員して警備ロボットの増産を図る事になった。
ラルフ隊がカナクに到着してから一週間後、ノードから3隻の大型船がカナクに到着した。3隻の大型船は前回と同様、それぞれ中心部に3メートルの高さの警備ロボットを積載しており、港に着岸すると側面から鋼鉄製の橋を下ろし岸壁の係留ビットに固定し、橋を通って警備ロボットが次々と上陸を開始した。3台を加え、計6台になった警備ロボットはショッピングドームの周りに五十メートル間隔で配備され、その間を約30台の新型ジープが補完し、内側の防衛陣地に2百人の警備隊が守備に就く態勢となった。将来的にノードからは更に6台が追加派遣され、計12台の警備ロボットでカナクを守るという計画だった。その場合、直径二百メートルの範囲のショッピングドーム・工業農業ドーム・住宅ドーム(旧成人学校ドーム)・漁業港湾地帯を守る事が出来る陣形が完成する予定だった。
3隻の大型船には交代要員としての2百名の警備隊員が乗船しており、3台の警備ロボットと共に隊列を組んで上陸した。ノードから交代要員が到着したが、ラルフ隊長はサラルとの戦闘の最前線となる可能性のあるカナクに残り、警備隊の指揮を執りたいと願い出ており、ノード政府はそれを許可していた。ラルフ隊長と数人の主要メンバーはカナクに残り、新しく派遣された警備隊2百名の指揮を執る事になった。これまでの戦いを共にした警備隊員の多くは交代要員と入れ替わりにノードへ帰還する事になり、同時に残留希望者以外のカナク住民もすべてノードに避難する事になった。それらの人々が乗る3隻の大型船は、ラルフ隊長以下の警備隊員とカナクの人々の見送りの中、ノードに向けて港を出港して行った。新しくカナクを守る事になった2百名の警備隊員達は、ラルフ隊長以下のメンバーから対サラル戦闘についてのレクチャーを受け、訓練に励むことになった。
新しく派遣された2百名の警備隊員のなかには、ノードに移住した五人娘の中のローラの子ジャックとマリーの子ヘンリーが入隊していた。訓練が一段落したある日、ジャックとヘンリーがリッチとルーシーを訪ねてきた。
リッチとルーシーは、自分達の孫が警備隊員として派遣されて来た事を聞いておらず、突然訪ねてきた二人の青年に「グランパ、グランマ、自分達はローラとマリーの子つまりあなた達の孫です」と言われて、心臓が飛び出すほど驚いた。
「ローラとマリーの子?オーマイゴッド!ほんとに写真で見た孫だ!」とルーシーはよろめきながら二人に抱きついた。
リッチは「そうか、ローラとマリーの子か!大きくなったな!というか初めてだよな。嬉しいよ生きているうちに、こんな立派な孫を見る事が出来て!」と二人の肩を叩いた。
「母たちからグランパとグランマの事はよく聞いています!」
「グランパはすごく優しい、グランマは不死身の英雄だって!」
「そう私が不死身のルーシーよ!サラルどもがお前たちに手出ししたら容赦しないよ!」
「私がすごく優しいリッチだ。オーマイゴッド!こんな立派な孫に合わせてくれて感謝します!」
「あんたがローラの子のジャック、あんたがマリーの子のヘンリー、オーマイゴッド!なんて立派な孫なんでしょう!」
ルーシーは二人の孫を、30人程しかいなくなったカナクの住民一人一人に紹介し、
「これが私の孫、ノードから来てくれた警備隊、立派でしょ!」と自慢し、その度に二人にキスをした。すぐに、ジャックとヘンリーのほっぺたはルーシーの口紅で真っ赤になってしまった。
立派な警備隊員となった孫二人を見て、リッチとルーシーはサラルを倒すという決意がみなぎり、ますます元気になって行ったが、その後、サラルはドーム周辺に全く姿をみせなくなり、カナクの平穏な日々が続いていく事になる。




