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第32話 サラルの逆襲

 ニューLAに異変が起きたのは、警備隊の交代まであと1カ月となった十月の晴れた日だった。その日の夕刻、ピラミッド状の見張り台で、珍しく穏やかな西の海を監視していた隊員は、夕日の沈む海の上に横長の雲のようなものを発見した。隊員達がその雲のようなものをスコープで拡大すると、その正体は沈む太陽を背にして西の海の上空を飛んで近づいて来る無数のサラルだった。知らせを受けた警備隊は直ちに戦闘態勢に入り、機銃を備えた40台の新型ジープを円型に並べ、コンクリートで囲った掩体壕から約二百名の警備隊員が銃を構えた。


 数分後、数千匹と推定されるサラルの群れが防御陣地の前方三百メートルまで接近して来た。警備隊は50台の攻撃用ドローンを発信させ、夕日を背に近づいて来るサラルの群れの上空から銃撃を加えた。さらに接近して来たサラルの群れに向かって、40台の新型ジープと防御陣地の警備隊員の銃が一斉に発砲を開始したが、空を埋め尽くすサラルの群れすべてを撃ち落とす事ができない中、数千匹のサラルの大部分は次々と防御陣地を飛び越え、東の山岳地帯に飛び去って行く。攻撃用ドローンが追撃するが、サラルの大群はドローンを振り切り山岳地帯に消えて行った。隊員達はサラルの数の多さに驚愕していた。

「五千匹はいるぞ!」

「いや一万を越している」

「東の山方面に行ったが、きっと今夜襲ってくるぞ」

「山に向けて防御態勢を手直しすべきだ、急げ!」


 そして隊員達の予想通り、夕日が沈み辺りが暗闇に包まれた頃、警備隊の防御陣地を見下ろす高台に無数のサラルの群れが出現し、大量の投石を始めた。警備隊は50台の攻撃用ドローンを発進させ、サラルの群れに対する銃撃を開始した。しかし、そのドローンめがけて、山岳地帯から続々と現れるサラルが体当たり攻撃を始めた。サラルの体当たりで破損したドローンは次々と墜落して行き、壊滅状態となった。そして上空を埋め尽くしたサラルの群れが防御陣地に突入し隊員達に襲い掛かった。サラル達は陣地内で金属棒を振り回して隊員達に襲いかかり、車両などの機材を破壊した。陣地内での発砲は同士討ちの可能性があり、警備隊員達の発砲は制限される事になった。思い通りに発砲できない警備隊に死傷者が続出した。押し寄せるサラルの群れとそれを防ごうとする警備隊との戦いは一晩中続いた。


 空が白み始める夜明け前になると、サラル達は東の山岳地帯へと引き上げていった。サラル達は、戦闘で死傷した多くの仲間をそれぞれ数匹のサラルが抱えて連れ去っていた。警備隊員の死傷者は60人を超え、数名が行方不明となった。攻撃用ドローンはほぼ全滅し、新型ジープの破損も多かった。

 ラルフ隊長は「ここに残留すると今夜も同様の攻撃を受け、数日で全滅する恐れがある」

と、直ちにニューLAからの全面撤退を指示した。警備隊は死傷者を輸送用モービルに収容し、被害を免れた30台の新型ジープを先頭と後方に配置し、北極海の沿岸部を目指して北方向に出発した。警備隊の車列を見たサラル達がすぐに追いかけてきたが、新型ジープからの銃撃を受け、昼間は不利だと悟ったのかそれ以上追って来ることはなかった。警備隊の車列は停止することなく走行を続け、北極海沿岸に達した後、さらに東のカナクを目指す事になった。


 ラルフ隊長は移動中の車中から、ノード政府に警備隊の被害状況と部隊がカナクに撤退しつつある状況を報告した。

 報告を聞いたノード政府は「二百名の交代要員が50台の新型ジープと数十台の攻撃用ドローンを装備して、ニューLAに向けて出発準備が出来ている」と返答した。ラルフ隊長は「その部隊のニューLAへの出発は中止してもらいたい。サラルの数は数千と推定される。山間部で多数のサラルに対した場合、サラルはドローンを体当たり攻撃で破壊し、夜間の闇に紛れて四方から防衛陣地に突入して来る。隊員に多数の死傷者が出た。部隊が展開するのは、山間部ではなく見晴らしの良い開けた地形が望まれる。さらに、夜間の戦闘に備えるため、赤外線スコープの装備された警備ロボットの配備が必要だ。本隊は隊員達の安全確保のため、開けた地形で警備ロボットの支援があるカナクへ撤退する」と連絡した。ノード政府は、ラルフ隊のカナクへの撤退を了承し、カナクへ二百名の交代要員と警備ロボットを追加派遣すると答えた。


 ラルフ隊は北極海の沿岸部を東に向かって走行を続け、3日後カナクに到着した。連絡を受けていたカナクの警備隊はラルフ隊を迎え入れ、協力してサラルの来襲に備え防御態勢をとる事になった。カナクの住人の中で子供や老人など避難が必要な者をノード行きの船に乗せ、残留した約70人の住民をショッピングドームに収容した。3台の警備ロボットと30台の新型ジープをショッピングドームの周りに配置し、その後方に上空からの侵入に備える掩体壕で防御陣地を構築し、警備隊員約二百名が立て籠もる事になった。


 ラルフ隊がカナクに到着して数日が過ぎ防衛陣地造りが一段落し、隊員達はノードから派遣されてくる予定の二百名の警備隊員と追加配備される警備ロボットを乗せた船の到着を待っていた。ラルフ隊長は、カナク警備隊のリッチ、ルーシーと約一年ぶりに防御陣地の一角で話す機会を得た。

「今回は、このカナクの地でサラルを防衛する事になった。いろいろと迷惑をかける」

「昨年初めてサラルが出た時、カナクを防衛できたのは、ノードから救援に来て頂いたラルフ隊長以下の警備隊員達のお蔭、もしノードからの救援がなかったとしたら、カナクは一年前サラルによって全滅していただろう。カナクのみんなは心から感謝している。我々は年を取ったとはいえ、一匹でも多くのサラルを退治するために一命を捧げる覚悟はできている。何でも命令していただきたい」

「有難い。しかし、我々の父ビリーとクレイの兄弟が少年時代に西の海に調査旅行し、そこで黄色い顔をした老人からサラルの事を聞いてから八十年は経った。我々の父ビリーとクレイは今の事を聞いたら何と言うのかな」

「やはり驚くしかないだろう。現実にサラルがこの島にやって来る日が来るとは」

「これからはこの島の人類が一致団結してサラルの侵攻に対決していくしかない」

「警備ロボットがサラルの夜間攻撃を撃退するのに有効なことは、昨年のカナクでの戦闘で証明された。ノード政府も警備ロボットの追加派遣を全力でやってくれている。数日後にまず3台の警備ロボットが追加で到着するはずだ」

「しかしサラルは手ごわい。西の大陸つまりユーラシア大陸の北方地域を占拠しているらしい。今後はこの島の南のアメリカ大陸にも侵入していくだろう」

「この島に侵入したサラルは数千或いは数万に増えている可能性がある」

「この島の人類を守るためには、ノードの人口増加政策で増えつつある子供や若者たちを守る事だ。いまノードの人口は2万人に近づきつつある。ノードの子供や若者たちを守るためには、このカナクの地でサラルの侵入を撃退する事だ。ぜひ協力して貰いたい」


 ルーシーが「まかせて!私達の子や孫たちも大勢ノードに暮らしているのよ。20人もかわいい孫がいるんだよ!このグランマがサラルを一匹残らずやっつけてみせる!」と言う。

リッチが「不死身のルーシーがこう言うから、もう大丈夫だ!サラルは全滅だ!」とおびえた顔をつくって冗談を言う。

ふだん軽口を言わないラルフも「ルーシーさんに付いて行きます!」とひょうきんに答え、三人は笑顔でがっちりと握手した。


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