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第40話 サラルの槍     (2581)

 討伐隊のダミーの人形を乗せたジープを(おとり)に使う作戦は一定の戦果を上げた。しかし、サラル達はすぐに学習し、何度もその手に乗る事はなかった。やがて囮のジープを走行させても、サラル達が討伐隊に近づくことは無くなった。


 囮作戦を評価されたマテオ隊員は次に、捕らえたサラルを囮にする作戦を提案した。討伐隊の銃撃で負傷し飛べなくなったサラルを捕獲し、檻に入れて仲間のサラルを呼び寄せようという作戦だった。しかしその作戦を実施してみると、捕獲されたサラルがギャーギャーと騒ぐだけで、サラル達は遠くから見ている様子はあるが、近づいて捕らわれている仲間を助けようとはしない事が判明した。

 そこで討伐隊は子供のサラルを捕まえて囮にするという作戦に出た。子供を囮にするのはいかがなものかと言う意見も出たが、これは効果があり、サラル達は捕らわれた子供のサラルを助けようと押し寄せ、待受ける討伐隊のユニコーン型ロボと隊員が銃撃を浴びせ、多数が仕留められた。サラル達は救出が何度失敗してもなかなか諦めようとはせず、遠くから様子を伺い投石攻撃をしたり、隙をついて何度も討伐隊に襲い掛かってきた。

「しかしサラルも子供のためなら命を惜しまないと見える」

「サラルも自分達の子供はかわいいと思うわけだ」

「しかし放っておけばサラルは増え続け、やがてカナクやノードに押し寄せるだろう」

「おれ達も自分の子供を守るためだ。容赦する事はない」


 サラルをおびき寄せる作戦が成功していたある日、一匹のサラルが金属棒を槍の様に投げてくる事があった。その一匹のサラルが投げた金属棒は高く放物線を描いてジープの金網に命中し突き刺さった。それを見た他のサラルも同じように金属棒を投げ始めた。この金属棒の多くは、旧大陸やこの島の廃墟からコンクリートが崩れた後に露出した鉄筋などを集めたものだった。これまでサラルは金属棒を振り回す事で隊員に被害を与えてきたが、その金属棒を投げるサラルが現れ、その他のサラルも金属棒を隊員達やユニコーンやジープに投げ始めたのだ。幸いに隊員達の被害はなかったが、ユニコーン・ジープの多くが損傷した。その日以降、金属棒を槍の様に投げるサラルは日に日に増加し、討伐隊は常に槍が降って来る危険にさらされる状況となった。


 守勢に立たされる事になった討伐隊は、サラルの槍攻撃の対策としてユニコーン型ロボやジープに金属の防御版を取り付ける対策をとった。これでサラルの槍が突き抜ける事はなくなり多少は被害を防げたが、いつどこから降って来るかしれないサラルの槍の脅威でユニコーン型ロボの出撃も大幅に制限され、討伐隊の進撃のペースは大幅にダウンする事になった。

「サラルどもが槍を投げるようになったとは驚きだ」

「これもサラルの子供を囮にした報いかもしれない」

「いや、どのみちサラルは金属棒を槍として使っただろうう」

「サラルがはげ猿より賢いのは確かだ。そのうち進化して弓矢を使う事になるかもしれない」


 カナクからの補給部隊は、定期的に山岳地帯のサラル討伐隊に交代要員や食料弾薬などの物資を届けていたが、ある時サラルの群れがその補給部隊を襲撃する事件が起きた。サラルは補給部隊の進路に待ち伏せ槍を投げつけ、ジープのタイヤを破損させ走行不能にした。補給部隊はサラルの群れに包囲される事態となった。救援が到着したのは補給部隊が全滅した後だった。この補給部隊の遭難という事態を受け、その後の討伐隊はこれ迄のカナクの南百キロ離れた湖周辺から撤退し、カナクから数十キロの地点にまで移動してカナクからの補給を部隊自身で行う事になった。ノード政府はサラル討伐隊のカナクへの撤退も提案したが、討伐隊はサラルから逃げる姿勢を見せると、サラルがカナクやノードに襲来する事になりかねないと危惧し、山岳地帯でのサラル討伐を続けるという意見で一致していた。


 このころ、カナクから東へ二百キロの距離にあるノードでは、サラルの飛来は見られず、一般市民はサラルの生息する南の山岳地帯に立ち入る事が禁止された以外は以前と同様の生活を続けていた。しかし、サラル討伐隊の奮闘にも拘わらずドローンによる調査では、山岳地帯のサラルは新たに西の海から渡来する群れも加え3万匹を超え、今後も増加していく事が予想された。これに対しノードの人口は政府の人口増加策にもかかわらず、2万人を超えた数字で停滞していた。これには人工授精の連続による技術的問題と、若い男女に子供を持つ意欲が薄れる現象が続いているのは、サラルの存在が心理的要因ではないかと論じる者もいた。


 ノードからはカナクのサラル討伐隊支援のため、毎月のように警備隊の交代要員や機材・食料・バイオ燃料などの救援物資を満載した船がカナクへ向けて出港していった。そしてカナクから帰還する船には、任期を終えた隊員やサラルとの戦闘で死傷した隊員が乗船していた。カナクの警備隊員として長年勤務したジャックと三人の妻たちも家族友人の出迎えのなかノードに帰還した。ノード政府は、カナクからの帰還者を歓迎式典式で迎え、特にサラルとの戦いで右手と右目を負傷したジャックはノード名誉市民として表彰される事になった。


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