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第31話 討伐隊の勝利    (2566)

 討伐隊はノードから遠く離れた山間部でサラル探索を続け、さらに西へ西へと進撃していった。その間、サラルの群れは幾つも発見されサラルの総数は五百~千匹はいると推定された。討伐隊のドローンがサラルの群れを捉えると、サラルは素早く逃げ去るあるいは岩山や洞窟などに隠れてドローンの攻撃をやり過ごし、夜に反撃に出てくる。サラル達は低空のドローンめがけて石を投げつけ、攻撃用ドローンが撃墜される事も度々あった。隊員達の操縦するドローンは高度を上げ、サラルの投石が届かない高度から発砲するようになった。当然ドローンからの銃撃の命中率は低くなり、サラルが悠々と移動して行くのを許す事も多くなった。それでも討伐隊のドローンは一つの山一つの谷とサラルの群れを取り囲むようにして西へ追いやりつつ進撃を続けた。そしてノードを出発して4か月後、ようやくサラル討伐隊は西の海が見える地点まで到達した。


 到着した海沿いの高台からは、海岸でサラル約百匹の群れがギャーギャーと騒ぎ立てているのが見える。サラル達は討伐隊を見ると、海岸の石を集めて投石を始めた。しかし、討伐隊が一斉に攻撃用ドローンを発進させると、サラル達は意を決した様に海上に飛び上がり、西の海に向かって逃げ去って行った。

「とうとう、サラルを追い払ったぞ!」

「サラルなど恐れる事はない!」

「早速、ノードやカナクに連絡しよう!みんな喜んでくれるだろう!」

400名の討伐隊は、一人の死傷者もなくサラル討伐をやり遂げた喜びに沸き、西の海を見下ろす高台でコバルトブルーの海を眺めながら祝宴を張った。


 サラルを追い払った討伐隊はこの地の高台に防衛陣地を築き、兵舎としての簡易ドームと風力・太陽光発電施設を造り始めた。討伐隊はこの地を、アメリカ合衆国西海岸の大都市だったロサンゼルス(LA)にちなんで「二ューLA」と命名し、コンクリート製の銘板を造り、2566年3月29日と記し高台の岩の上に設置した。ラルフ隊長とメイソン隊長はノード政府と交渉し、隊員400名のうち半数の約200名をノードに帰還させる事になった。

「サラルが再び西の海から飛来する事があればどうするのか?もっと残留部隊を強化すべきだ」という意見もあったが、帰還を希望する隊員達が多く、ノード政府もそれを許す他なかった。残留に同意した約200名も、6か月後にノードから交代要員が到着しノードに帰還できるという条件で、残留を受け入れるものも多かった。


 1週間後メイソン隊長が率いる帰還組の約200名の警備隊員が、残留する警備隊員が見送るなか、4百キロ東のノードに向けて出発して行った。二ューLAを離れる帰還組の隊列は40台の新型ジープを先頭に山岳地帯の南を走行して行く。山岳地帯の南は熱波の中、草木のない荒れ地が続いている。帰還組の走行はサラルの群れの探索も兼ねており、部隊は偵察用ドローンを周辺に飛ばしサラルの群れを探索する。しかし山岳地帯にも荒れ地にもサラルどころかはげ猿もおらず、ネズミより大きな生物は探知できなかった。サラル討伐隊は要所でドローンを飛ばして調査を続けながら、ノードに向けての走行を続けた。


 2週間後、メイソン隊長に率いられた200名のサラル討伐隊は約半年ぶりにノードに帰還した。メイソン隊長はノード政府にサラルをこの島から完全に駆逐したことを報告し、サラル討伐隊の隊員達は英雄としてノード市民から大歓迎を受けた。凱旋パレードが行われる事になり、中央ドームのメインストリートの両側に立ち並ぶ大勢の市民の中を、200名のサラル討伐隊隊員が隊列を組んで行進する。ビルの窓からは紙吹雪ではなく、トウモロコシの葉を乾燥させた葉吹雪が舞い、ここはノードの大通りなのだが、なぜか「New York, New York」の曲が流れ、市民からの大歓声が上がった。

「サラル討伐隊がよくやってくれた!」

「ドローンで数百匹のサラルをやっつけたらしい」

「サラルなど、はげ猿と一緒だ!恐れる事はない!」

「サラルどもはみんな西の海の向うへ逃げて行ったらしいぞ」

「ありがとう!これでこの島は安全だ!」

中央ドームのメインストリートの沿道に並ぶ人々は笑顔と拍手で隊員たちを称え、すべての隊員達に抱きつきキスをしようとするお婆さんが人々の笑いを誘った。


 一方、ニューLAに残留したラルフ隊長以下約200名の警備隊員は、サラルの来襲に備えて防御陣地整備の任務に就いていたが、次第に緊張感が薄れ、ノードからの交代要員が来る12月までの日数を数える日々か続いていた。ラルフ隊長は、そんな隊員達にやる気を起こさせようと、声をかけ続けた。

「気を抜くなよ!いつサラルが戻って来るかわからんぞ!」

「西の海の向こうに逃げたサラルは、何時かこの島に必ず戻って来る!」

「サラルの来襲を見張り、このニューLAを守り抜く事が我々の使命だ!」

「このニューLAは、この島の人々を守る大切な防衛拠点だ」

「ノードからの連絡では早ければ11月中旬には交代要員が到着するそうだ。交代要員が来るまで、みんなでこのニューLAを守り抜こう!」


 隊員達は、二ューLAの銘板のある岩を起点にコンクリート製の見張り台を造り始めた。これは周辺の石を集めコンクリートで固める事で、サラルが再上陸した際に投げる石を無くしておこうという発想だった。隊員達は毎日海岸や高台の周辺に出かけ、リヤカーでサラルが投げそうな石を集め、見張り台に持ち帰ってはコンクリートで固めていった。ピラミッド状の見張り台は高さを増し、やがて10メートルを超えるものとなった。隊員達は互いに声を掛け合って、気合を入れて見張り台建設に励んだ。


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