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蒲公英と「言わせたい」
聞き間違いかと思った。
「……え、」
「すみません引っぱたいてください」
「いや、叩かないけど……」
よくよく見ると蛙鳴の耳が赤い。
西日のせいだけではないだろう。
「……そう、なのか……」
「はい、あの、なので、」
「……両想いなんて、本当にあるんだね」
軽く吹き出しながら言うと、蛙鳴は、えっ、と素っ頓狂な声を上げて、俺の方を見た。
「……本当に?」
「俺も言った方がいいかい?」
死ぬのでいいです。
被せ気味にそういうと、口元を覆った。
顔が赤い。
「……君は、どうしたい?」
俺も随分と悪いやつだ。
わかっているはずだ。わかっているが。
言わせたい、なんて。
「……貴女の恋人になりたいです」
「うん、俺もだ」