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あなたのためのポピー
僕は、そんなに頼りないのだろうか。
天才には天才の苦悩があるのは、理解しているつもりだった。
つもりだった僕が、心底腹立たしい。
今はただ、祈ることしか僕にはできない。
僕が、不安そうな顔をしていたからだろうか。
ベッドに寝ていた大好きな人は、微かに笑った。
優しい、労る様な笑顔。
この人の人となりをよく表した笑顔。
「大丈夫だよ」
この人の口癖。大丈夫、大丈夫って。いつも。
大丈夫じゃないから、こんなことになってるんでしょう。
思ったことは、いつものように口に出せなくて、きっと言ったらこの人は余計に傷ついてしまうから。
「……一人で抱えないでください」
言えたのは、それだけで。でも、彼女にはきっと伝わっている。




