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檸檬
得体の知れない不吉な塊。
俺には、ずっと其れが纏わりついている。
あの父親の呪縛かもしれないし、俺の中の、俺に対する気持ちの暗然さかもしれない。
その正体は、俺でさえ知らない。
ただ、どうしても、俺から離れない。
なんなんだろうか。
この息苦しさは。
なんとも生きづらい。
自分にも認識できない、不吉な塊を抱えつつ、生きることが、これだけやりづらいとは。
何故こんなにも、俺だけが。
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「……」
喧嘩をした帰り。
自宅について、玄関口に妹の靴があったので、こっそりリビングを覗くと、普段は仕事部屋に籠りっきりの妹が、テーブルに突っ伏していた。
これは、いつものやつだ。
妹には、大きな気分の波がある。
特に、執筆後は大きく揺れる。私でさえ、妹の「落ちて」いる時は手に負えない。
でも、執筆後でもないのに、なぜこのタイミングで?
でも、わたしにできることは、一つだけ。
それが、妹の望むことでなかったとしても。




