ニゲラの花束
煙草を吸っていると、米田が、走ってやってきた。
最近何かと走り回っている。
俺を見つけて近づいてきたものの、咳き込んでいたので、その原因が煙草にあるときづいて、すぐに火を消し消臭した。
「ごめんね、どうしたの?」
「いえ、」
「あー!!!居た!!サメさん!!!」
米田の後ろから、如月も駆け寄ってきた。
よく見ると出演者がみんな居る。
スタッフも。
なぜか関係者が全員、集まっていた。
蛙鳴が、花束を持っている。
ニゲラと、スイートピーの花束。
「……あまり、思いつめないでくださいね。」
本当に珍しい、蛙鳴の笑顔。
ニゲラが、Love in mistの英語名を持つからだろう。
彼らしい、美しい選花だ。
「ありがとう」
不屈の精神、未来、夢を抱く、本当の私。
全てニゲラの花言葉。
全て、彼ら、彼女らからのエールとして受け取っておこう。
今後、俺は脚本を辞めるかもしれない。
それを、わかった上での花束なのだろう。
小説の仕事が、軌道に乗り始めた。だから、俺はあまり身が入っていないのかもしれない。
せめて今回は。
今回の舞台が最後で、今後二度と、彼女ら役者と関わることがなかろうと、
成功させなければ。
最後まで、脚本家でいること。
佐沼千雨でいること。
期待に応える必要がある。
俺には、俺のできることを。




