第二話 ゲームがきっかけで朝比奈さんとお友達になった
「影密くーん!!」
僕の名前を呼んでる!?
しかもこちらに向けて走ってきてる。
これどう言う状況? とりあえず逃げた方が。
僕はこの状況が理解できずに走って逃げ出した。
「なんで! 逃げるの影密くん!!」
朝比奈さんは僕が校門に向かってダッシュしてもその後を諦めずに追いかけてくる。
何をやってるんだ僕は、はたから見ればこれは鬼ごっこをやっているようにしか見えないぞ。
それに朝比奈さんがせっかく話しかけてくれようとしてるのに……僕はなんで。
「待ってよ!!」
朝比奈さんは腹の底から声を出して僕に止まってと呼びかける。
僕はそれを聞いて逃げるのをやめて、その場で立ち止まった。
「どうして! 逃げるのよ!!」
「さっきは! 逃げてしまって誠にすいましぇん!」
噛んだ。
僕は不覚にも緊張で噛んでしまった。
「別に怒ってないわ! 大丈夫よ!」
よかった朝比奈さん怒ってないのか。
「あ……あの? それで、要件は何でござるか?」
「なぜ……武士語?」
なぜ武士語が飛び出したのか自分でもわからない。それほど緊張していたということだ。
「まあいいわ! 影密くん! イエローダンジョンっていうゲームやってるんでしょ!!」
朝比奈さんがなぜそれを?
って、僕が自己紹介で言ったからか。
「うん……やってるけど……」
「私もイエローダンジョンやってるの! だからお話ししてみたくて!!」
えっ? 朝比奈さんイエローダンジョンやってるの?
イエローダンジョンって知名度そんなにないのに、こんな可愛くて優しい天使の微笑みを持つ彼女が知ってるだけでなく、まさかゲームをプレイしているとは思わなかった。
「ふふふ! どうせなら近くの公園でちょっと話さない? 影密くん」
「え? うん、話そう」
それから僕たちは学校近くの公園に移動して、イエローダンジョンの話で盛り上がった。
「あっ! もうこんな時間じゃん! お話すごく盛り上がったね!!」
「うん、そうだね」
なんでだろう……彼女とアニマルダンジョンの話をしている時は自然と緊張しなかった……
今まで初対面の人と話す時はすごい緊張するのに……
それに彼女と話すととても楽しくて時間が経つのが早い。
「ねぇ! 影密くん!! よかったらイエローダンジョンのフレンドにならない!」
「……うん!! フレンドになろうか」
僕は彼女とフレンドになる為、ゲームでのプレイヤー名を言った。
「僕……プレイヤーネーム「マスター」って言います!!」
「私!! プレイヤーネーム「うさぎ」って言うの!!」
ほぼ2人同時にイエローダンジョン内のプレイヤーネームを言った。
僕は自分でマスターと自己紹介した傍ら、朝比奈さんのうさぎというプレイヤーネームを聴き逃さずちゃんと聞いていた。
「…………」
僕はそのプレイヤーネームを聞いて、その場で呆然と立ち尽くす。
だって、朝比奈さんが言ったプレイヤーネームは僕のネッ友と同じプレイヤーネームだったから。
「今? なんて、影密くん?」
「え? マスターって言った……」
朝比奈さんも同様に僕のプレイヤーネームがマスターだと言うことに驚きを隠せないようだった。
「ん?」
「え?」
「ええええええ!?!?」
僕と朝比奈さんはほぼ同時に声を上げた。
朝比奈さんも大声をあげて絶叫していると言うことは、朝比奈さん側にもマスターという名のフレンドがいるということ……。
つまり僕と朝比奈さんは……。
「影密くんさ……もしかして、フレンドにうさぎって名前のプレイヤーいない?」
「います……」
こんな偶然ってあるのだろうか。
それこそフィクションの世界みたいなことが、今ここで起こっている。
「これってさ……すごくない!? ねぇ影密くん」
朝比奈さんはぴょんぴょん飛んではしゃぎ始めた。
僕はそんな朝比奈さんを見つつ、今の状況に混乱していた。
「今日!! 一緒にダンジョン攻略行かない? マスターさん!!」
「え? はい!! 行きましょう……」
状況に混乱している中、朝比奈さんにダンジョン攻略を誘われ、快くそれに了承した。
「やった〜〜!! あ! もうこんな時間!! 影密くん! そろそろ帰ろうか!!」
「ま……待って!!」
状況を飲み込んだ僕は帰ろうとする朝比奈さんを引き止めた。
「どうしたの?」
「朝比奈さん!! 僕と友達になってください!」
僕は頭を深々と下げて、朝比奈さんに友達になってくださいと叫んだ。
これは昔から僕が夢見ていたお友達と言う関係。
不思議な感覚だけど、今、僕の高校生活最初のお友達ができる気がしたから。
「なに? いってるの? 影密くん」
やっぱりダメか。
僕が朝比奈さんにお友達になったくださいなんで図々しかったか。
「私たちもうずっと前から友達じゃん!!」
もうずっと前から友達?
そうか、朝比奈さんとはイエローダンジョンでフレンドになったあの時から、今までずっと友達だったんだ。
僕がその場でボーと立ち尽くしていると、朝比奈さんは僕に握手を求めてきた。
「これから改めてよろしくね!! 影密くん!!」
「うん! 朝比奈さん!!」
僕は朝比奈さんの手を握りお互い強く握手をした。
こうして僕は今日、ゲームがきっかけで朝比奈さんとお友達になった。
この物語は僕がゲームがきっかけで朝比奈さんとお友達になることから始まる物語。
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