第一話 日向との出会い
お友達とは、放課後どこかに遊びに行ったり、家で一緒にゲームをしたり、そんなことをする関係だ。
僕、影密日影は、そんな友達の存在に憧れ抱いていた。
僕には、一生友達ができないんじゃないかとか、友達を作るのは無理なんじゃないかとか。
話すのが苦手でそう思ってしまう自分がいた。
入学式の日、朝比奈さんと出会うまでは。
「今日も家行っていい?」
「うん、いいよ」
僕は朝比奈さんとお友達になってから、学校生活ひいては、いろんなことが楽しくなった。
そんな朝比奈さんとの出会いは、高校の入学式に遡る。
※※※
僕の名前は影密日影、勉強はダメダメで身長は157センチ、そして何より人と話すことが苦手で、今まで満足にお友達と呼べる存在がいたことがなかった。
僕は明日の学校の準備を終えると、ゲームをするためその場から立ち上がり、テレビゲームのスイッチをつける。
僕が今からするゲームは、イエローダンジョンという、キャラクターを操作してダンジョンを攻略するゲームだ
僕は早速そのゲームでいつも通りダンジョン攻略をしようとしていた。
すると、このゲーム内のチャットで一通のメッセージが来た。
(うさぎ) お久しぶりですねマスターさん!!
それは、プレイヤーネーム「うさぎ」さんからのメッセージだった。
うさぎさんは昔偶然知り合ったことからフレンドになりよく一緒にダンジョン攻略をした、いわゆるネッ友という存在である。
ちなみに僕のこのゲーム内の名前は「マスター」である。
なんでゲーム内の名前がマスターなのか、それはかっこいいからその一言に尽きる。
(マスター) こんにちは
(うさぎ) よかったら一緒にダンジョン攻略しませんか?
(マスター) 是非!! やりましょう
最近はうさぎさんとダンジョン攻略をあんまりしていなかったので、これが久しぶりのダンジョン攻略となる。
そして、僕とうさぎさんは共にダンジョン攻略をして、盛り上がった。
僕とうさぎさんがダンジョンを攻略し終わると、
うさぎさんから再度メッセージが来る。
(うさぎ) 今日はありがとうございました! 明日入学式があるのでもう寝ます
(マスター) 実は僕も明日入学式なんです!!
お互い、いい日になるといいですね!
(うさぎ) そうですね!!
うさぎさんも入学式なのか、ていうことは、僕と同じ学生さんなのかな?
そうだ、僕も明日から学校だからもう寝るか
僕は睡眠を取るためベットに横たわった。
明日は高校の入学式が待っている。
僕は昔から、人見知りでお友達が満足にできなかった。
だから友だちと一緒にゲームをしたり、どこかに遊びに行ったりすることに少しばかり憧れを抱いている。
仲のいいお友達ができるといいな。
僕はそう心の中で思い、眠りにつこうと瞼を優しく閉じた。
※※※
そして、次の日、入学式当日。
今、僕は高校の入学式に行くために通学路を歩いていた。
昨日は色々考えてあんまり寝れなかったな。
それと珍しくネッ友のうさぎさんと一緒にイエローダンジョンというゲームでダンジョン攻略をしたな。
うさぎさんとは僕のネット上の友達で長らく一緒にゲームをしていなかったのだが、昨日久しぶりに一緒にゲームをした。
僕は学校の校門をくぐり、生徒玄関へと足を進めた。
すると、学校のクラスの生徒玄関前にすごい人が集まっていた。
あれは、クラス表か、一応僕も見に行くか——。
「なぁ? お前、今の見たか?」
「ああ! 超可愛かったよな! 今の子!!」
すると、男子生徒が話しているのが聞こえてきた。
なんかえらく騒がしいな。
僕は男子生徒並びに女子生徒たちが注目の目線を送っている先を見た。
そこにはとても美しい顔をしていて、背中ら辺まで伸びている黒く美しい髪が目立っていてスタイルがとてもいい、モデルのような美少女が立っていた。
あの子すごい可愛いな。
「なぁ? あの子モデルみてぇー! ってか、実際やってるんじゃないの? モデル」
「お近づきになりてぇー!」
「なぁ、お前ちょっと話しかけてこいよ!」
「いや、さすがに」
男子生徒たちは早くもその子にくぎづけになっている様子だった。
僕はこの男子生徒女子生徒問わず1人の可愛い女の子にくぎつけになるこの光景をどこかで見た感じがした。
この光景とは、これはラブコメの冒頭である。
おそらくこのあと、主人公がヒロインと出会うんだろうな。
僕はそんなことをふと考えていると。
その女の子は生徒玄関の方へゆっくり歩いて行ってしまった。
その後、僕はクラス表を見て、自分のクラスを確認すると、そのままクラスへと向かった。
さっきの子、何クラスなんだろう。
僕はついついあの子の事を考えてしまった。
こんないままで異性に関心などなかった僕でさえこんなことを考えてしまうほどにあの子を一目見た瞬間のインパクトは絶大だった。
しばらく歩いて、教室に入ると僕はまず自分の席を探した。
しばらく探した後、席を見つけるとその席に座る。
僕の席は一番教室の窓から近い列のの一番後ろか。
いわゆる主人公席か。
席について周りを見渡すと、僕の列の一番前にあの子。
さっきの可愛い子が座っていて、クラスメイトの女の子2人ともう仲良さそうにお話ししていた。
「ねえ! 最近駅前にできたあのケーキ屋さん今度みんなで行こうよ!!」
「いいね! 賛成ー!! わたしあそこのケーキ屋さん! ずーと気になっていたんだ……」
どうやら童顔の女の子の一人がさっきの可愛い人ともう一人の王子様のような容姿の女の子にケーキ屋さんに行こうと誘っているようだった。
「日向ももちろん行くでしょ?」
「うん!! 私みんなとケーキ屋さん行くの楽しみ!」
どうやらあのさっきの可愛い人は日向という名前らしい。
すごいな……あの人もうクラスメイトと仲良くなってる。
僕もあの人みたいにクラスメイトと仲良くなれるかな?
それから時間が経ち、先生がやってきて高校生最初のホームルーム……自己紹介の時間がやってきた。
「これからどうぞよろしくお願いします!!」
「はーい! 加江田さん? で合ってるかしら? 自己紹介ありがとう!! それじゃあお次は——そう! 影水日影くんよろしく!」
加江田さんという人の自己紹介が終わり出席番号順で次に僕の番がやってきた。
前の教卓に立っている、とても可愛い先生は僕の名前を間違えたけど、そんなことは今どうでもよくて。
今とても緊張をしていたけど、頑張って勇気を振り絞ってみんなの前に立った。
「みなさんこんにちは、僕は影密日陰と言います……僕はその、今イエローダンジョンというゲームにハマっています。その、もし知ってる人がいたらぜひ一緒にできたりしたら嬉しいです……人見知りなので話しかけてくれると嬉しいです——よろしくお願いします」
僕がそう挨拶をすると、クラスからは拍手が巻き起こった。
「はーい、ありがとう影美玖くん! その、イエローダンジョンっていう黄色のゲームが好きなのね〜! よろしく〜!!」
自己紹介は我ながらうまく行ったと思うけど。
イエローダンジョンの名前を出した時、こいつ何言ってんだっていう顔をクラス中がするものだから、はっきり言ってあのゲームの名前を出すのは控えた方が良かったかもしれない。
あのゲームはそれこそ存在自体が都市伝説扱いだからな。
ていうか、今先生は僕の名前また間違えたよね? それにイエローダンジョンは別に黄色のゲームじゃないんだけどな。
ていうか黄色のゲームってなんだ?
そういえば自己紹介でもっとパープルカートとか、レットクエストとかそこらへんの誰もが知っている超有名ゲームの名前を出しとけばよかったと僕は今更ながら後悔する。
クラスがそんな顔をする中、そういえば可愛い人ええと、確か名前は朝比奈さんって言ったっけ?
その人が目をガンガンに光らせて僕の方をじーと見てきたものだから何だか不思議に思ってる。
あの朝比奈さんって人すごいな、なんかもうクラスのムードメーカー的な感じの存在にになってるし。
※※※
僕は、今日の学校が終了したため、そんなことを考えながら足早に教室を後にして家に向かって歩いていた。
「影密くん!!」
すると、僕はある一人の女子生徒に話しかけられる。
その子は朝比奈日向——。
僕と同じクラスで朝見たあの可愛い子だ。
その子は僕の名前を呼んで、こちらに走ってきた。
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