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スライム娘の恩返し~転生して錬金術師になった不遇外科医は尽くし系美少女と平和な生活を送りたい~  作者: 砂礫零
第5章 スライム娘の大変身

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第68話 スライムさんはなんにでもなれた

 グロア女皇の症状は、言うなれば、死にそうなほどひどい不整脈だ。

 ペースメーカーを用いたデバイス治療を行なわないといけないが、この治療は副作用で感染症が起こる心配もあるし、ペースメーカーの電池の残量も確認しないといけないしで、定期的な診察が必要となる…… もし、これがただの病気であれば、だが。

 病気ではないとすれば、ほかに考えられることは、もうひとつ ――


「治療の同意と、原因の確認のためにも、侍従を呼びたいんだが……」


 俺が言っても、グロア女皇は首を横に振るだけだ。


「だ、れ、に、も…… し、ら、れ、て、は……」


「リンタロー。グロア女皇には、なにか事情があるのかもしれませんわ」 と、ソフィア公女。

 身近な者にも不調を知らせられない…… 同じ統治者の立場としては、理解できる状況なのだろうか。

 そう言われて俺が想像できるのは、あまり穏やかでない事態ばかりなのだが。


「しかたないな」


 俺は覚悟を決めた。

 術後のためにも、せめて侍従には知らせたかった…… とはいえ、最優先は治療だ。

 とりあえず本人の同意さえとれば、なんとかなる。


「では今から、手術の説明をざっくりするから…… 同意してもらえるなら、こんなときに悪いが同意書にサインしてくれ…… 《神生の大渦》」


 俺はチート能力で同意書を作成し、グロア女皇に治療の説明を始めた。状況が状況だけに、必要な部分だけ、手短に……

 手短に説明しすぎたのか、それとも、デバイス治療がこの世界の人には理解しがたかったのか。

 グロア女皇は、ひきつって聞き返してきた。


「つ、ま、り…… オー、トマ、タ(機械生命)、を、から、だ、に……!?」


「うん」


「かん、せん…… か、も? で、ん、ち……?」


「まあ、そうなるが」


「ちょ、考え、させ……」


 こわがる気持ちはわかる。

 心臓に機械(ペースメーカー)を埋め込む ―― この世界ではおそらく、前代未聞の治療法だもんな。

 ポーションである程度の体力維持が可能なせいか、この世界の医療は本当に、ないも同然なんだ…… 

 グロア女皇はまだ、俺の説明を理解してくれてるほうかもしれない。


「まあ、原因がなんであれ、その不整脈は早めに治療したほうがいい。決意ができたら、いつでも言ってくれ」


「そんな…… うっ……」


 グロア女皇がまた、胸を抑えて顔をゆがめ、息を吸う。


「私、どう、したら、いいので、しょう……?」


{{だっ、大丈夫です!}}


 ふいに、俺の手のなかの分身イリス 《メスの姿》 と、本体のイリスが同時にしゃべった。


{{あの、あの、機械生命(オートマタ)じゃなくて、わたしが入るのです!}}


「「「は!?!?!?」」」


 俺、ソフィア公女、グロア女皇の声が重なった。


「イリス…… きみ、なに言ってるか、わかってるか?」


{はいです! わたし、その機械生命(オートマタ)()()()と、思うのです!}


「「え!?!?」」 と、またしてもかぶるソフィア公女とグロア女皇。

 だが、まあ……


「言われてみれば、たしかに」


 イリス、進化して錬金釜と武器以外のものにも、変身できるようになったもんな……

 おかげでマシンガンから麻袋まで、なんにでもなれる。

 ―― イリスは、握りこぶしで主張した。


{スライムは、必要なくなれば、普通に排出されるのです! しかも、風邪(かぜ)ひかないのです!}


「まあ、そうだよな」


 これまで深く考えたことなかったが、スライムボディーには強力な抗菌作用がある…… ということは、感染症リスクも機械より、減る…… そのうえ、イリスの意思で動くし、状況をイリス 《本体》 と共有できるから、異常があればすぐにわかる。

 電池がなくなることも誤作動を起こすことも、ない。


「あり寄りの、ありだな……」


{ですよね、リンタローさま!}


「よし、ちょっとペースメーカーになってみるか、イリス…… 《神生の大渦》」


「ちょっと、リンタロー!?」


「…………?」


 ソフィア公女が叫び、グロア女皇が苦しさのなかにも不安を漂わせた表情を見せるが…… あくまで、最優先は治療だ。

 俺はチート能力でリードレス・(ワイヤレス式の)ペースメーカーを取り出した。前世で俺が知ってた最新技術によるもので、心房用と心室用の2種類がある。


「まずは、ペースメーカーの仕組みを説明する。

 人間の心臓には4つの部屋があり、上の部屋を心房、下の部屋を心室といって……」


 俺は同意書の裏に心臓の図を描き、ペースメーカーについての説明を始めた。あわせて手術の流れについても、きちんと話しておく。

 さっき、グロア女皇への説明が簡単すぎたからな。今回は焦らず、詳しく説明しよう…… イリスがペースメーカーになるためだけじゃなく、グロア女皇とソフィア公女に納得してもらうためにも、必要なことだ。

 

「―― で、心房と心室のそれぞれにペースメーカーを1つずつ留置して、動きを合わせる…… つまり、イリスには2つのペースメーカーになってもらわないといけないんだが…… できるか?」


{やってみるのです!}


 ぷっぴょん!

 さっきまでメスになっていたイリスの髪の一部が、こんどは2種類のリードレス・ペースメーカーに変わる。

 見た目は、俺がチート能力で取り出した前世のペースメーカーとそっくり…… ぎりぎり指先に乗せられる程度の、小さな金属の(つつ)だ。

 大きめのビタミン剤カプセル程度のサイズのほうが心房用、それよりも少しだけ長いのが心室用。

 本体とあわせ、3人(?)のイリスが同時にしゃべった。


{{{どうですか、リンタローさま??}}}


「うん、見た目はオッケーだな。実際に動けば、問題なしだ」


{{{がんばるのです!}}}


「…… ということだそうだが、どうだ、グロア女皇? 手術、受けてくれるか?」


「な、お、る……?」


「その可能性を高められるよう、努力すると約束する」


 グロア女皇は、なんとか同意書にサインしてくれた。

 ―― さて。

 さっそく、とりかかるか…… 偶然にもメンバーは、以前、西エペルナ学院の山猫のじゃ幼女、アルバーロ教授を手術したときと同じだ。心強い。


「イリス、ソフィア公女。また、助手を頼めるか?」


「もちろんでしてよ!」


{はいなのです!}


「ありがとう…… 《神生の大渦》」


 チート能力で必要なものを一式出したら、まずは着替えと消毒だ。

 次に採血してアレルギー検査…… もしグロア女皇がスライムアレルギーなら、残念だがイリス変身のペースメーカーは使えないもんな。


「よし、アレルギーは大丈夫だ…… じゃ、始めるか」


 イリス 《本体》 とソフィア公女が真剣な眼差しでうなずいた。

 ―― リードレス・ペースメーカーの埋め込み手術は、ふとももの付け根にある静脈から(カテーテル)を通して行う…… 当然ながら、グロア女皇の服を脱がさないことには、手術にならない。

 そういうわけで先ほどの説明の際に、俺はイリスとソフィア公女に術前の準備をお願いしておいたのだ。

 準備とは、すなわち。

 グロア女皇のスカートと下着を脱がせ、(カテーテル)を通す鼠径部(そけいぶ)とその周辺を消毒し、邪魔な毛を切り、施術部以外を手術用ドレープ(穴あきカバー)で覆う作業 ――

 イリスもソフィア公女も手慣れているとは言いがたい。が、こうした手術が初めての女性の心境を考えると…… 俺が行うのはどうしても気がひける。

 手伝えなくて悪いが、ひたすら後ろを向いて待機だ。


「きゃっ……」 {あっ、ごめんなさいなのです……!} など、ときどき心配な悲鳴が上がっているが…… イリスとソフィアなら、きっと大丈夫だろう。信頼して待つだけだ……


「はあ、はあ、はあ…… やっと、できましたわ…… グロアさま、これで、恥ずかしい部分は完全に隠れていますわ!」


{消毒も、ばっちりなのです!}


「…………」


 グロア女皇がうなずく気配。

 続いて、ソフィア公女とイリスが俺を呼ぶ。


「リンタロー、もうよろしくてよ!」 


{リンタローさま! 手術なのです!}


「よし、始めよう」


 俺は手術台の横に立つ。

 局部麻酔を行い、超音波装置で血管の画像を確認しつつ、慎重に針を挿入。

 ―― カテーテル手術は、前世の日本では珍しくない手術だった。切開する部分が小さく、そのぶん、時間も短くて済む。

 施術後には、その日のうちに歩けるようになる…… が、だからといって。

 簡単にできると思ったら、大間違いだ。

 最初は、わずか1cm程度の血管に、0.9ミリにも満たない細い針金(ガイドワイヤー)を通していく、繊細な技が要求される作業から ―― 少しでも手元が狂えば、血管を傷つける。

 ちょっとした不注意が、合併症のリスクを高めてしまう。

 ―― 得意とは、言えないな。

 何回やっても、崖っぷちで綱渡りする程度には、ドキドキする。 

 ふううう……

 マスクの奥で深呼吸をひとつ。

 いよいよ、作業開始だ。

 俺は挿入した針にガイドワイヤーを通す。

 指を使い、ワイヤーをわずかずつ進めていく……

 少しでも違和感があれば、止まって確認。

 数cm進めるだけでも、緊張で汗がにじんでくる。

 俺の(ひたい)に浮いた汗を、イリスがそっと押さえてくれた。

 ―― そうだ。どれだけ恐怖を感じていても…… いや、こわければ、こわいほど。手元は、あくまで冷静に。

 指先に神経を、集中する……!

手術の結果は、果たして……!? 次回の更新は1月15日(木)12時20分です。

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※ネオページでのタイトルは『転生したらなんでもできるスライム娘が押し掛けてきた』です
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頑張れリンタロー……!!
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