表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スライム娘の恩返し~転生して錬金術師になった不遇外科医は尽くし系美少女と平和な生活を送りたい~  作者: 砂礫零
第5章 スライム娘の大変身

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/70

第65話 かわいいしかなかった

 ―― もにゅっ

 仮眠室のなかに1歩、入ったとたんに。

 なにかが、俺にぶつかってきた…… コフェドラシル(動くコーヒー苗)の赤ちゃんだ。もう、はいはいできるのか。

 まるっこい小さなからだが俺の足もとで、むくむくと動いている。


「だぁ……!」


 赤ちゃんが、俺の顔を見上げてニコッと笑う。

 …… いや。

 かわいいんだが!?


「あぶぅ……」


{ばーあ! いいこいいこ、なのです}


 イリスが赤ちゃんを抱っこして、顔面をとろけさせる。平和な光景だな…… 

  部屋を見回すと、コフェドラシルの赤ちゃんは全員、起きてしまっているみたいだ。

 みんな、むっちりと丸っこくて小さい。

 うごうごと無目的にはいまわっているのが、ひとり。

 ベッドの枠につかまって立とうとぷるぷるしているのが、ひとり。

 部屋のすみでボールをつかまえようとしているのが、ひとり ―― ボールが大きくて、うまくつかめず逃げていくのを、不思議そうな表情で追いかけている。


「ここ、全人類を尊死させる空間かな?」


{かわいいのです! いつか、わたしたちも、こんな…… って、はうううう! もうもう、わたしったら!}


 コフェドラシル(コーヒーエルフ)の赤ちゃんたちに、すっかり癒された俺たちだった ―― が。

 そんななか、ただひとり、鬼の形相をしているのがオースティン先生だ。

 世界樹とコーヒーノキをドッキングするという頭おかしい偉業を成しとげた植物学者の先生でも、赤ちゃんの寝かしつけは至難の技であるらしい。

 ギャン泣きしている赤ちゃんを抱っこし、なにかをぶつぶつとつぶやきながら、うろうろと歩き回っている……


「オースティン先生、大丈夫か?」


「いえ、全然! なんで寝てくれないんでしょう……!?」


「うーん。寝すぎ、かな?」

 

 オースティン先生は必死の表情で訴えかける。


「まだ成育環境も整っていないので、せめて、芽が出るまでは寝ていてほしいのですが……」


「なら、さっそく成育環境を整えよう。コフェドラシルの家、建ててしまえば、起きてても問題ないよな?」


「えっ…… 家を!? いいんですか!?」


「もとから、そのつもりだからな」


「よかったでちゅねえ! コフェリカちゃん!」


 オースティン先生が腕のなかの赤ちゃんを 『たかいたかい』 する。ますます泣きだしたぞ、コフェリカちゃん。


「もう、てっきり、ここで育てなきゃならないのかと」


「工場で? それはないわ…… で。なにか、希望はあるか?」


「そうですね、やはり、コフェーア(コーヒーノキ)の生育環境を考えますと……」


 オースティン先生が赤ちゃんをあやしながら、きれぎれにコメントしてくれたところをまとめると……

 必要なのは 『温かく、強すぎも弱すぎもしない適度な日当たりがあり、湿気がたまりにくい家』 であるらしい。

 この辺はまあ、温室のつもりで作ってサンシェードと窓と換気扇をつければ、問題ないだろう。

 だが、オースティン先生が言うには。

 

「いちばんの問題は清潔な水…… おそらくコフェドラシルの成育には、世界樹の雫がたっぷり必要です」

 

「たしかに、これ難しいな。貯蔵と補充か…… シャワーなんかは浄化装置をつけて使い回すとしても」


「飲み水だけでも、大変ですよね」


 世界樹の雫については先に、鳥人たちが運んでくれると約束してくれてはいる…… が、それだけを頼りしていては、鳥人たちの負担が大きすぎる。

 さっきバトルしたォロティア義勇軍(マフィア)の刺客みたいに、転送系の魔法が使えるといいんだが…… 通常、ああいうのは、アシュタロテ公爵 ―― つまりは領主クラスの超強力な魔族しか使えないんだよな…… あれ?

 いま、なにかが引っ掛かったような。


「イリス、転送魔法、使えるか?」


{まさか、なのです! ……んん? でも…… そういえば}


 イリスがしげしげと自分の爪を見た。

 光にあてると色が青く変わる ―― ちょっと前にルンルモ姫(コモレビ姫の姉)が、 『エルフみんなを助けたお礼』 として俺とイリスに埋めこんでくれた 《世界樹の琥珀》 の影響だ。

 この希少な宝石の効果は、魔力(MP)の増幅に、同じ琥珀(いし)を体内に持つエルフの姫たちの転移……


「転移か」 {ですです!}


 俺とイリスは、同時に顔を見合わせていた。

 ちなみに、俺やイリスでは、自力で転移を決めるにはまだまだ魔力(MP)が足りない。エルフの姫たちが俺たちのもとに転移するか、または俺たちを転移させるかだ。

 だが…… もし、エルフの姫たちが協力してくれるならば。 《世界樹の琥珀》 の仕組みを利用し、世界樹の雫をエルフの森(イールフォ)からここピトロ高地まで一瞬で送ることが、可能にならないだろうか……?


「コモレビ姫、ちょっと来てくれ」


「はい…… あ…… みんな…… 起きてたんですね…… かわいい…… です」


 俺たちの背後から、部屋をのぞきこんだコモレビ姫が目をなごませる。


「うん。なかなか寝てくれそうにないから、すぐに家を作ろうって話になってるんだが。問題は、水なんだ」


{それで、エルフさんたちのお力を借りられたら、って言ってたんです}


 俺とイリスがコモレビ姫に事情を説明すると、コモレビ姫は、しばらく考えこんだあと宙に図面を描きはじめた。

 コモレビ姫の指の軌跡が、そのまま銀色に光って浮いている…… エルフ、こんなこともできるのか。


「世界樹の琥珀をはめた…… 貯水のための…… 大きい容器を…… こう…… こことイールフォ(世界樹の森)の両方において…… 自分と、姉様で…… 転送…… 交換、すれば……」


{あっ、なるほど、なのです!}


「けど、これ…… コモレビ姫かルンルモ姫が、ここに常駐してなきゃ、難しいんじゃないか? いや、できないとは言わないが」


「心配、いりません……」


 コモレビ姫は、動きまわるコフェドラシルの赤ちゃんを目で追いかけながら、きっぱりと言った。


「自分も…… ここで…… この子たちを…… お世話します」


「えええっ!?」 と、オースティン先生が声をあげる。

 とたんにオースティン先生の腕のなかの赤ちゃんがまた、泣き出した。やっと静かになったところだったのにな。

 膝から崩れそうになるのを、かろうじて踏みとどまるオースティン先生。


「おー、よしよしよし…… あの、コモレビさん。それ、本当ですか!?」


「はい…… 自分…… 小さい、きょうだいを…… この子たちを、放っておけませんから…… ご迷惑は、なるべく、かけませんので…… よろしく、お願いします」


「はっ! いえいえ、こちらこそ! いやはや、ボクが、こんなキレイなかたと、どうせい…… いえ違います違います! おーよしよしよしよし!」


 オースティン先生が、植物以外のことでうろたえている…… まあ、それはともかく。


「じゃ、ルンルモ姫にも話を通さなきゃな」


「はい…… 自分、姉様に…… ちょっと、言ってきますね……」


 コモレビ姫の姿が、ゆらっと揺らぎ、空気に溶け込むように消えた。イールフォ(エルフの森)に転移したらしい。


「よし。俺は、ちょっと家、建ててくるよ」


「すみません! ボクはちょっと…… とっても気には、なるんですけど」


「わかってるよ、オースティン先生。赤ちゃん優先だよな」


「は、はい…… 目を離して、ウッカリ外に出たら」


 まあ、当然の心配だよな。


「ちゃんとした家を建てるから、心配するな、オースティン先生…… イリス、赤ちゃんのお世話を、手伝ってあげてくれないか?」


{もちろん、お世話するのです!}


 ぷっぴゅん!

 イリスがスライムの姿になって、ぷるぷる揺れる。

 つるっとしたゼリー状のボディーの上で、たくさんの光がはじけ、色とりどりのグリッターが立ちのぼる…… と。

 オースティン先生の腕のなかの赤ちゃんが泣きやみ、イリスのほうに手をのばした。


「……? もしかして、さわりたいんですか?」


 オースティン先生が赤ちゃんをそっと床に降ろす。

 赤ちゃんはイリスのほうに猛然と()()()()を開始し、グリッターとたわむれはじめた。

 きゃっきゃっと、ごきげんな笑い声があがる。

 ほかの赤ちゃんも、イリスのほうに寄ってきてるな。

 オースティン先生が、ほっとしたようすで息を吐いた。


「す、すごいですね、イリスさんは……」


「そうだろ」


 俺はつい、自分のこと以上にドヤってしまったのだった。


 ―― そのあと結局、ソフィア公女、ゼファー、鳥人の長老たちも、工場に残ってコフェドラシルの赤ちゃんを見ていてくれることになり……

 俺はひとり、工場の外に出た。


 さて、さっそく ――

 俺は赤茶けた大地全体に、錬成陣を展開する。中央には俺の可視化アイテムボックスを置いて、と。


「《建築物》 ―― 住居、錬成開始 《超速 ―― 1000倍》」


 大地とアイテムボックスから、煉瓦や強化ガラス、合金サッシ、塗料、内装用の木材や布など…… 必要な資材が次々と錬成され、目の回るような速さで組み立てられていく ―― 俺の、イメージどおりに。

 コフェドラシルの赤ちゃんはもちろん、オースティン先生にもコモレビ姫にも、過ごしやすい家を ――


「よし! 完成だ」


 ほんの2、30分ほどで、なかなか立派な邸宅ができあがった。

 念のために部屋数を増やしたり、中庭を広くしてプールまで入れてみたりして…… ちょっとした城みたいに、なったな。

 いろいろと欲張りすぎた感はあるが…… ま、いいか。

 そのうちコフェドラシルの赤ちゃんが増えたら、これくらいの広さは要るだろうし。

 ともかくも ――

 まずは、お披露目の前に、邸内のチェックだよな。

次回は史上初!?コフェドラシルの家、大公開! 更新は12月25日(木)12時20分です。

続きが気になったら、広告下の《リンクボタン》をクリック! 『ネオページ』にて10話以上先行配信中です。

応援☆やスタンプ、感想いただけると嬉しいです! 読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ネオページ』で先行公開中!『スライム娘の恩返し』の続きはこちらです!

※ネオページでのタイトルは『転生したらなんでもできるスライム娘が押し掛けてきた』です
― 新着の感想 ―
>俺はつい、自分のこと以上にドヤってしまったのだった。 後方彼氏面( ˘ω˘ )
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ