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スライム娘の恩返し~転生して錬金術師になった不遇外科医は尽くし系美少女と平和な生活を送りたい~  作者: 砂礫零
第3章 スライム娘の大受難

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第56話 バハムートを料理した

「よし、さっそく、研究棟を建て直すか…… アルバーロ教授。ここの設計図、あるか?」


「待っておれ…… たぶん、この辺じゃ!」


 アルバーロ教授が大ざっぱに指さしたあたりを、みんなで手分けして探す ―― ほどなく、設計図が見つかった。


「よし、じゃあ…… 《錬成陣》」


 俺は、ひとつひとつの要素を唱えながら、壊れた建物を中心に錬成陣を展開した。敷地いっぱいに六大魔族の紋章が広がっていく ――


「ほう…… これで建て直せるとは、のう」


 アルバーロ教授の目は、錬成陣の上を何度も行ったりきたりしている。さわりたくて仕方ないのを、がまんしてるみたいだ。


「錬金術とは、便利なものじゃな」


「まあ、そうだな…… 間取りのリクエスト、あるか?」


「ううむ。ガドちゃんを飼う、新しい部屋が欲しいのう。普通の飼育室より広めで、知的活動や運動をする場所もほしいのじゃ! いろいろ、研究せねばならんからのう。もちろん、窓はナシじゃ! 脱走できぬようにな」


「わかった…… これまでの部屋を(せば)める訳にもいかないな。3階も作るか?」


「なぬ? 3階ができるのかの!? なら図書室をもう1つ。それに、仮眠室と娯楽室を……」


 俺は研究棟の設計図に、教授の希望を書きこんでいく。せっかくだから、なるべく居心地のいい建物にしてあげたいものだ。

 ここまで大がかりなものを錬金術で造るのは初めてだが…… まあ、なんとかなるだろ。

(ちなみに 『ガドちゃん』 は、()センレガー公爵に教授がつけたニックネームだ)

 よし、図面が書けた…… もう一度よく確認して、構図と配置を頭のなかに叩きこむ。

 始めよう。


「《建築物》 ―― 研究棟、錬成開始 《超速 ―― あ…… ダメだ」


 《超速の時計》 は今日すでに、使用制限いっぱいだ…… 研究棟の錬成はもう始まってるが、できあがるまでに時間がかかってしまう。


「すまん教授、明日にならないと錬成の加速ができないんだ。今夜は、キャンプでいいか?」


「なぬ!? リンタロー、お主、面白い男じゃのう!」


「…… 意味わからん」


 俺はアイテムボックスから携帯用コテージと簡易キッチンを取り出した。


{キャンプ! ひさしぶり、なのです!}


 イリスから無数のグリッターが舞う…… そういえば、ここ数ヶ月ずっと、料理とかしてなかったな。


「よし、イリス。久々に、一緒に料理するか」


{わあい! では、ちょっと着替えるのです!}


 ぽっぴゅん!

 イリスが張り切ってビキニエプロン姿に変身した、ちょうどそのとき。


〈この網、ほどけやぁ! わいを、どうする気じゃ、おんどれぇ!〉


 威勢のいいどなり声が響いた。

 気絶していた鳥人が、目を覚ましたのだ…… 網はほどくわけないが、()のことは、あれこれ聞いておかなきゃな。


「あーあ…… せっかく、料理しようと思ってたのにな」


{あっ、良かったら、先に、あちらでいいですよ! わたし、お味噌を作るので!}


 ぽっぴゅん!

 イリスが錬成釜の姿になった。アルバーロ教授が()センレガー公爵 ―― 爆睡しているガドちゃんを抱っこしたまま、山猫みたいな目を丸くする。


「ほお! スライムとは、ここまでするのかの!?」


「ああ、まあな」


 イリスだけだと言うのは、やめとこう。バレたら、 『研究させるのじゃ!』 とねだられそうな気しかしない。

 イリスが、ぷるっと震えた。


{あのあの、リンタローさま! しっかり奥のほうに入れて、かきまわしてください、なのです}


「材料だな、OK」


 そういえば、イリスが育てていた麹も、アイテムボックスに入れていたんだったな。

 俺は味噌の材料 ―― 大豆、麹、塩を出してイリス 《錬金釜の姿》 の底のほうに用心深く入れ、かきまぜる。錬成はイリスがしてくれるんだが、しっかりまぜたほうが、味に深みが出るんだよな。


{では 『天地返しでじっくり育てた名人の味噌』 の錬成を開始します…… 錬成度0%……}


「ああ教授、これ、1時間ほどかかるぞ」


「なんと!? なら(それがし)、ガドちゃんとお散歩に行くのじゃ! 新鮮な魚でも、買ってくるかのう」


「ガドちゃん…… 置いていったら、どうだ?」


「心配ないのじゃ! このまま、だっこしていくからの…… ほれ、もう眠っておるじゃろ? ()いのお」


()でられるの、サイズだけだろ」


 結局アルバーロ教授は、ガドちゃんを抱っこしたまま出かけてしまった。外見だけなら完全に、変わった人形がお気に入りの変わったお嬢ちゃんだ。

 まあ、それはさておき。教授がそのつもりなら、こっちも、のんびり行くか……


「じゃ、鳥人くん。ちょっと、つきあってもらおうか ―― 《縮小化》」


〈ぅおおおお!? おんどりゃ、なにさらしてけつかんねん! いてこましたるぞ、われぇ!〉


「心配するな。少し、質問に答えてもらいたいだけだ…… 済んだら、元のサイズに戻してやるから」


〈えぐいやっちゃの、われぇ! 血も涙も、あらへんやないか!〉


 ちょうちょサイズにしてみると、さしもの超人部隊(ジェットマン)も、かわいらしい。サイズって、重要だな。


「まずは、確認だが…… ここの機材を壊したのは、ガドちゃ、じゃなくて、()センレガー公爵の命令だな?」


〈おんどりゃ、なめんとんのか!? なんで、わいが自白(ゲロ)らな、あかんねん〉


「質問に答えなければ、一生そのままだな。アイテムボックスでの移動は楽しい…… かな?」


〈くっそボケェェェエ!〉

 

 ―― といったやりとりを延々と経て、1時間後。

 俺とイリスはそれぞれ、聞き取り調査と味噌の錬成を終えて、料理に取りかかっていた。

 鳥人は約束どおり、網から出して元のサイズに戻し、自動給餌機能付きの鳥かごに入れている。


{お味噌汁はコカトリスの()()()にするのです! それからリンタローさま、()()()と白米、お願いするのです}


「ん? ごはんなら、すぐ出せるが?」


{とんでもないのです! レトルトとかいうのと、かまどでは、味が、全然違うのです!}


「そっか、了解…… 《神生の大渦》!」


 味噌の錬成を終えたイリスは、ビキニエプロンの姿に戻り、料理を始めている。かなりな張り切りようだ。

 俺も、イリスの隣で鍋の火加減をみる。今夜のメニューはコカトリスの肉と数種のマンドラゴラ、それにチート能力で出したコンニャクを使った、筑前煮だ。

 そこへ、アルバーロ教授が戻ってきた。

 左手に、ぐっすり眠っているガドちゃん。右手に抱えた買い物袋を抱えている。


「リンタロー! イリス! ただいまなのじゃ!」


「おかえり、教授」 {おかえりなさいです!}


「バハムートの切身が、安かったのじゃ! 蒲焼きを作って(しん)ぜようぞ」


「蒲焼き……? よく知ってるな」


「100年ほど前に、ここを訪れた異世界人が、教えてくれたのじゃ! リンタロー、お主、ショーユとミリンは出せるかの!?」


「《神生の大渦》…… はい、醤油と味醂(みりん)


「ほおおお…… やはり、いつか、お(ぬし)を研究させて 「ところで、アルバーロ教授。さっき心核薬(ドゥケルノ)不仲草(ハルバタル)の大量発生の件を、そこの鳥人から聞いてみたんだが……」


 俺たちは料理しながら、()をめぐる一連のできごとについて話し合った。

 ―― ()の製法や原料など、だいたいのことは分析結果から予想したとおりで、目新しいものは、ほぼない。

 ただ、その辺のことは、ォロティア義勇軍(マフィア)にとっては企業秘密であるらしく…… 情報漏れを防ぐため、超人部隊(ジェットマン)の鳥人や()センレガー公爵が現れたのだ。


{んー?} と、イリスが首をひねる。


{でも、いくら隠しても…… 魔獣大暴走(スタンピード)が何度も起きるのに、誰も怪しまないなんて、ないですよね?}


「それな」


「それが、そうでもないのじゃろうて…… ほれ、魔獣大暴走(スタンピード)の主な原因は、今日まで、火山活動と思われておったじゃろ」


「あ、そうか」


(それがし)あたりが公式に発表せぬ限り…… 一般の認識は、まだ、そっちじゃな」


「なるほど…… だから、魔獣の心核石(コロケルノ)狩りが失敗した時点で、こっちに手を回したわけか。分析装置を壊すだけじゃなく、教授の口をふさぐのも目的だったんだな」


「そうじゃのお」


 ォロティア義勇軍のなかにも、頭のまわるやつがいたもんだ。別に誉めるわけじゃないが……

 先手をとられている感があるのが、もどかしい。

 次にやつらが、どう動くか ―― もし、効率的に()を生産し続けつつ、その製法は隠したいとしたら……


「エルフが、いまよりももっと、危ないかもな」


{コモレビさんたちがですか、リンタローさま!?}


「落ち着くのじゃ、イリスよ。腹が減っても疲れても、戦はできぬ。まずは、食べるのじゃ!

 …… ほい、できたぞ」


 アルバーロ教授がバハムートの蒲焼きを皿に盛った。

 とろりとした飴色と、こうばしいにおい。美味そうだな。

 それに、つみれ汁と筑前煮と炊きたてのごはん。だしのかおりの湯気が立ちのぼり、白いごはんは粒がひとつひとつ立って、つやつやと優しく光っている。

「尊い……」 {はい! いただきますのです!} 「100年ぶりの味じゃのう……!」


 俺たちはお互いに料理をほめあい、しばし食事を楽しむ。解決していないことが山積みだが、こういう時こそ切り替えが大切なのだ。

 ちなみにバハムートの蒲焼きは、ウナギとハモの中間みたいな味だった。

 食後のデザートは、チート能力で出したハーゲン○ッツ。イリスのは相変わらずデスソースがけで、試食したアルバーロ教授が、あまりのからさに涙目で絶叫した。

 こうして ――


「うまかったのじゃ! ゴチソーサマ!」 「ごちそうさま、うまかった」 {ゴチソーサマなのです!}


 和やかなひとときを過ごし片付けも終えたころには、もう真夜中も近くなっていた。


「さて、あとは、寝るだけだな」


{はい…… じゃあ、着替えるのです}


 ぽっぴゅん

 イリスがやや透け感のあるネグリジェ姿に変身したとき。

 ふいに、コテージの扉が、激しく叩かれた。


〈リンタローはん! イリスはん! あけて! 大変なんや……!〉


 鳥人の少女、ゼファーの声。

 息が切れているのは、イールフォの森から飛んできたからだ……

 まさか。

 ォロティア義勇軍がもう、動き出したのか……?

エルフの森、どうなってる!?

次回の更新は10月23日(木)12時20分更新です。

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いつも応援☆やスタンプ、感想をどうもありがとうございますm(_ _)m

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※ネオページでのタイトルは『転生したらなんでもできるスライム娘が押し掛けてきた』です
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お腹空いてきた( ˘ω˘ )
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